野田秀樹・永山瑛太・長澤まさみも認める松本潤の“センター感” NODA・MAP新作『正三角関係』インタビュー

野田秀樹が作・演出を手がける「NODA・MAP」の新作『正三角関係』は、ドストエフスキーの名作『カラマーゾフの兄弟』の設定を入口にした花火師一家の物語。花火師の長男を松本潤が、物理学者の次男を永山瑛太が、聖職者の三男を長澤まさみが演じる。中でも松本は、昨年の大河ドラマ『どうする家康』で徳川家康役として主演を務め、舞台への出演は13年ぶり。本格的な稽古スタートを前に、松本、長澤、永山、野田の4人に、作品にかける想いを語り合ってもらった。

モチーフは『カラマーゾフの兄弟』。松本・永山・長澤が三兄弟に

――新作『正三角関係』は、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』をモチーフにされているそうですね。

野田 キャストのことを考えながら読み返していたら、非常にハマるなと思ったんです。まず殺される父親役として、竹中直人さんの顔が浮かんだ。殺され顔というか(笑)。あと松本(潤)とやるなら、バタ臭い役がいいなと以前から思っていて(笑)。で、無神論者でインテリ男の次男は(永山)瑛太。さらに最も心のきれいな人として描かれる三男と、性格的にも真反対な“女”のふた役を、(長澤)まさみちゃんにやってもらおうと。その一家を花火師の話にすることで、いろんなことが融合していくと思ったんです。

――松本さんは初、永山さんは『MIWA』(13年)、『逆鱗』(16年)以来3度目、長澤さんは『THE BEE』(21年)以来2度目のNODA・MAPへの参加となります。野田さんが作られる作品の魅力とは?

松本 ひとつのテーマではなく、いくつかの要素が交錯していくというのが、近年のNODA・MAPの顕著な作り方だと思うんです。ただそれは野田作品の数ある特徴のひとつであって。なんといっても「劇団 夢の遊眠社」時代から続く、身体表現や疾走感のある台詞まわし、そういったものにエネルギーが凝縮されているように感じます。だから観に行く時はその言葉をシャワーのように浴びたいと思いますし、自分もその世界に入りたいと思う。だから今回のお話をいただいた時は、ふたつ返事で「ぜひチャレンジさせてください」とお引き受けしました。

永山 演じる時も観させてもらう時も、通知表で言う5段階評価のオール5でもいいし、オール1でもいい。そんな気持ちでいられるのが、野田さんの作品だと思います。ものすごく知的な人が深読みしながら観ても楽しめますし、僕みたいに体育だけ5だったみたいな人間でも十分楽しめる。つまり野田さんの作品には、なにか本能に語りかけてくるものがあると思います。

長澤 観る側としてはいろいろな楽しさがありますよね。人間の躍動感とか、舞台美術で使われる布や紙が、普段とは全然違う見え方をする驚きとか。内容的にはなかなか難解ではありますが、台詞を聞いているだけでも楽しくて。演じる側として参加した『THE BEE』は、野田さんの中でもちょっとタイプの違う作品。だから今回のような大規模な作品に参加出来ることが、改めてとても楽しみだなと思いました。

――松本さんはNODA・MAP初参加ですが、おふたりが知り合われたきっかけは?

野田 もともとは(故十八世中村)勘三郎ですね。

松本 そうですね。僕が(中村)七之助くんと同級生で、お父さんである勘三郎さんにもかわいがってもらっていたんです。それである日みんなでご飯屋さんに行った時、そこに野田さんもいらっしゃって。

野田 それと同じころだよね? 松本が出ていた、『白夜の女騎士』(06年、野田秀樹作/蜷川幸雄演出)を観に行ったのは。で、『あゝ、荒野』(11年)の時にはさっきの話をしていたと思いますよ。「お前は絶対“バタ臭い”のがいい」って(笑)。

松本 それはなんとも言えないですけど(笑)、「イメージ出来た」みたいなことを言ってくださったのはよく覚えていますね。

――これまでご一緒されてきて、永山さん、長澤さんの役者としての魅力とは?

野田 やっぱり瑛太がいいのは、正直な言葉として聞こえてくるところですよね。瑛太自身が正直者かどうかはわからないですけど(笑)。僕の数少ない能力として、一度仕事をするとその人の声とかが残る作家で。だから『逆鱗』の時には、当て書きに近いものがあったんじゃないかなと。『THE BEE』のまさみちゃんに関しても、最初の役が凛々しい警官で、次の役がストリッパー。今回のふた役もそれに重ねたわけではないですけど、やっぱり台本を書く時に、自分の中で音とか立ち姿が残っているところがあるんでしょうね。

野田のワークショップでも滲み出てしまう、松本の“センター感”

――すでにワークショップを実施されたそうですが、その感触や手応えはいかがでしたか?

松本 瑛太くんは身体表現も発想も、すごく自由だなと思いました。その場を楽しんでいるのがこちらにも伝わってくる感じがして。

野田 やけくそなんだよね(笑)。

永山 (笑)。やっぱり一度解放しないと舞台って、特にNODA・MAPさんは出来ないんですよね。

松本 まさみちゃんはすでにふたつの人格がまったく違っていて、見ていてすごく面白かったです。

長澤 潤くんはステージ演出などもされているので、表現に対する知識がすごく豊富なイメージがあります。やっぱり頼りがいがありますし、ついて行きたくなるというか。

松本 いやいや、僕、舞台13年ぶりですよ。もう初めてみたいなものですから(笑)。

長澤・永山 いやいやいやいや(笑)。

長澤 瑛太くんは「とにかく楽しいことしようぜ!」っていう、みんなを巻き込むイメージがあります。潤くんもみんなを乗せてくれるところがあるので、このふたりとなら楽しく稽古が進められそうです。

永山 松潤とは20代前半からドラマで共演したりしていますが、その芯の強さと太さが、僕とは全然違うんですよね。だからどこかで甘えてしまうというか、委ねてしまうところがあって。こないだのワークショップの時も、松潤が動いて発するだけで、ものすごく説得力がある。そこに存在していることの大きさがやっぱり違うっていうか。

野田 いわゆる“センター感”があるんだよね。

松本 いや、ないですよ。

野田 あるんだよ。

松本 ないですよ(笑)。

野田 あるんだよ!(笑)

永山 戦隊もので言ったら、松潤はやっぱり赤レンジャーですよね。僕は青でもない、緑くらいなので(笑)。

松本 緑もいいよ!

永山 (笑)。まさみちゃんとも20代前半からいろいろな作品をやらせてもらっていますが、すごく頼れる、同志みたいな存在です。そのワークショップの時も、早回しの動きをするという課題でまさみちゃんに「あれ出来る?」って聞いたら、「出来るじゃないよ。やるんだよ」って。

松本 なんてカッコいいんだ!

長澤 ……(苦笑)。

永山 もうなにも言えなくて、結果、ついやり過ぎちゃったんですけど(笑)。

野田 わかる、わかる、演劇的には「松たか子のひと声」ですね(笑)。

永山 それ言われたらやるしかない、ですよね。

松本 それ、稽古場に書いて貼っておこう!

一同 (笑)。

野田 ワークショップの時に改めて思いましたけど、この3人だけでなく、やっぱり役者がとてもいいんですよね。

松本 アンサンブルの方たちのクオリティもものすごく高いですよね。

野田 高いね。やっぱり長くやってきて、これだけいい役者といいスタッフと仕事が出来て、自分は本当に幸福な人間だなって。それはいつも観に来てくれるお客さんも含めて。

松本 いい話過ぎて、ちょっと嘘くさいですけど(笑)。

野田 俺はなに言っても嘘くさいんだよ(笑)。

一同 (笑)。

野田 だけどそれは本当のことなんですよね。心では感謝してるんです。

取材・文:野上瑠美子 撮影:You Ishii

<公演情報>
NODA・MAP 第27回公演『正三角関係』

作・演出:野田秀樹

出演:
松本潤 ⻑澤まさみ 永山瑛太
村岡希美 池谷のぶえ 小松和重
野田秀樹 竹中直人

秋山遊楽 石川詩織 兼光ほのか 菊沢将憲 久保田武人 後東ようこ
近藤彩香 白倉裕二 代田正彦 八条院蔵人 引間文佳 間瀬奈都美
的場祐太 水口早香 森田真和 吉田朋弘 李そじん

【東京公演】
《6/23(日)チケット一般発売》
2024年7月11日(木)~8月25日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス

【北九州公演】
《6/23(日)チケット一般発売》
2024年9月5日(木)~9月11日(日)
会場:J:COM北九州芸術劇場 大ホール

【大阪公演】
《9/1(日)チケット一般発売》
2024月9月19日(木)~10月10日(日)
会場:SkyシアターMBS 

【ロンドン公演】
10月31日(木)~11月2日(土)
会場:サドラーズ・ウェルズ劇場

『正三角関係』公式サイト
https://www.nodamap.com/seisankaku/

NODA・MAP公式Instagram
@nodamap_official

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/seisankaku/

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