土地の売買、災害発生時の復興もスムーズに…「地籍調査」を実施するメリットを専門家が解説

杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

8月4日(日)の放送テーマは、「実は進化しています! 地籍調査」。国土交通省 地籍整備室長の久保雅寛(くぼ・まさひろ)さんをゲストにお迎えして、地籍調査のメリットや今年7月に新設された制度について伺いました。


(左から)杉浦太陽、久保雅寛さん、村上佳菜子



◆地籍の約4割は150年前のもの!?

「地籍調査」とは、主に市区町村が主体となって、一つひとつの土地の所有者、地番(土地を特定するために付けられた番号)、地目(土地の用途)、境界及び面積などの測量を目的とする調査です。調査結果をもとに、地籍簿と地籍図が作成されます。

戸籍は、生まれや婚姻関係などの身分関係を登録していますが、それと同じように、地籍は法務局が管理する登記簿に記載されており、その情報は行政のさまざまな場面で活用されています。

しかしながら、法務局が管理している土地の位置であったり、形状を示す地図や図面の約4割は150年ほど前の明治時代に作成されたもので、それを現代に当てはめても正確性に欠けます。登記簿を修正するためには、最新の測量技術で正確に測量する地籍調査が必要不可欠です。

◆地籍調査で得られるメリット

地籍調査がおこなわれることは、私たちにとっても大きなメリットになります。そこで久保さんが、その主な理由を解説します。

地籍調査のメリット①「土地の取引」

相続した土地や所有している山林を売却する場合、売りたい土地を測量する必要がありますが、これは義務ではありません。

しかし、地籍調査がおこなわれていない土地の場合、法務局で管理している地図が正確性に欠けるので、買い手がつかなかったり、土地の境界をめぐって近隣とのトラブルに発展するリスクがあります。また、正確な大きさや形が分からないまま土地を購入しても、土地の面積が想定よりも小さかったり、予定していた建物が建てられなかったりする可能性も考えられます。

例えば、土地を売るとき、そうしたトラブルを避けるために所有者自らが測量をおこないますが、土地家屋調査士などの専門業者に依頼することになるので、大きな費用がかかります。しかし、その土地が地籍調査済みであれば、事前に正確な測量がおこなわれ、近隣との話し合いも完了しているため、スムーズに土地の取引がおこなえます。

地籍調査のメリット②「災害発生時の迅速な復旧・復興に貢献」

大きな自然災害が発生した場合、道路や上下水道などの復旧、住宅の再建などが急務になります。

地震などの災害で本来の土地の位置や形状が分からなくなっても、地籍調査が実施済みであれば、調査情報を基に正確な位置や所有者を割り出すことが可能になるため、復旧・復興作業に迅速に取り掛かることができます。実際、東日本大震災のときに地籍調査をおこなっている場所とおこなっていない場所とでは、復旧までの期間に数ヵ月~1年近くもの差がでてしまいました。

地籍調査のメリット③「土地の整備・再開発の円滑化」

道路の整備や市街地の再開発事業に着手する際も、地籍調査をおこなっていればスムーズに進めることができます。また、土地の利用や管理の基礎データの整備につながるため、所有者が分からない土地などの発生を抑制することもできます。

地籍調査のメリット④「よりよい森林の管理」

森林はCO2を吸収したり、土砂くずれの防止、ダムや浄水器の役割を果たしたりと、さまざまな機能をもっています。しかし、そうした機能を十分に発揮させるためには、間伐をおこなうなど適切な管理が必要です。地籍調査済みの森林であれば、そうした作業を円滑に進められます。

以上のように、地籍調査は土地を持っている方だけではなく、多くの人にメリットがあります。

◆地籍調査を円滑におこなうための制度がスタート

地籍調査は1951年から実施され今年で73年が経ちましたが、国土の半分ほどしか進んでいないのが現状です。その背景にはさまざまな要因が考えられています。

・地籍調査の必要性やメリットが人々に周知されていない
・地籍調査の対象になった地域の住民の機運が高まらず、協力を得にくい
・境界に接する土地所有者双方の立会いが必要であるなどのルールにより、調査に多くの労力と時間がかかる

地籍調査は、土地を所有している方の協力なくしておこなうことができません。具体的な地籍調査の流れは以下の通りです。

1:市区町村等が、調査に先立ち住民説明会を実施
2:土地所有者の立会いにより境界を確認し、測量を実施
3:2をもとに正確な地図を作り、面積を測定
4:作成した地籍簿と地籍図の案を土地所有者が確認

こうしてできあがった地籍簿と地籍図は法務局に送付され、備え付けられることになります。

対象地域に所有者がわからない土地があったり、住民から現地調査の協力が得られないと、調査が停滞する要因となります。そうした現状を受け、政府は法律を改正するなどして、地籍調査の円滑化、迅速化を図っています。

久保さんは「例えば、2020年から所有者が所在不明であっても、確認を得ずに現地調査を進められるようになりました。また、土地の所有者が、遠方にお住まいの場合や山林など険しい土地にいる場合は、現地で立ち会っていただかなくても、図面や写真などの資料を用いて境界を確認していただき、調査を進めることができるようになりました」と説明。

そして、2024年7月からは新たに「土地境界のみなし確認制度」が開始されました。これは、土地の所有者が明らかでも、説明会や立会いなどの通知に反応がない人がいるとき、今回の制度によって、土地の所有者へ筆界案(※)を送付することができ、20日間の期限までに意見の申出がなければ、その土地の境界を確認したものとみなして調査を進めることができます。
※筆界案…所有している土地に関する情報を総合的に考慮して、土地の位置と推定される位置を図面などに表示したもの

地籍調査は土地の売買だけでなく、災害復旧をスムーズにするメリットなど、多くの効果を期待できるものです。最後に久保さんは「地籍調査は市区町村が実施するため、費用の負担は一切ありません。地籍調査に関する通知が届いたら、ぜひご協力をよろしくお願いします」と呼びかけました。なお、自分が所有している土地が地籍調査済みかどうかは、国土交通省 地籍調査Webサイトで確認することができます。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「地籍調査」について、特に注目したことをピックアップして発表していきます。村上は“地籍調査に協力しようね”と書き、「みんなで協力していかないと(地籍調査が)進んでいかないなと思いました」とコメント。一方、杉浦は“土地境界のみなし確認制度が新たにスタートしてるよ~!”を注目ポイントとして挙げていました。


(左から)村上佳菜子、杉浦太陽



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8月4日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年8月12日(月)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/

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