窪塚愛流が選んだ1冊は?「自分の命に代えても守りたいモノは何だろう。当時、本当に繰り返し考えました」

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年10月号からの転載です。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、窪塚愛流さん。

(取材・文=松井美緒 写真=TOWA)

 窪塚さんがこの本と出会ったのは高校3年生の頃。読後は自分の部屋で長い時間、茫然自失してしまったという。世界からモノを一つ消せば1日命が延びる。悪魔と取引する主人公の選択の重さに、窪塚さんは共感したのだ。

「僕は猫好きですし、犬も飼っていました。小さい頃からペットというより、弟・妹のような存在でした。だからそれを消すことを迫られた主人公の苦しみは痛いほどわかります。世の中のどんなモノも、誰かにとってはかけがえのない存在なのだと思います。消えていいモノなんて多分一つもない。そう強く感じました」

 主人公が選択の末にたどり着くのは、母と父との過去。家族の物語が本書の重要なテーマの一つだ。

「その頃、妹がまだ1歳になるくらいで、彼女が大きくなったときに、僕は彼女にとってどんな存在なのだろうか。僕は彼女をずっと大切にしてあげられるだろうかとすごく考えてしまいました」

 20歳になった現在も、本書は大事な一冊だ。

「自分の命に代えても守りたいモノは何だろう。当時繰り返し考えていたことを、今でもよく覚えています」

 窪塚さんの初舞台『ボクの穴、彼の穴。W』が間もなく幕を開ける。

「脚本を読ませていただき、とても面白いなと思いました。ただ、舞台が怖くて出演には戸惑いました。でもノゾエ征爾さんとお話して、やらないと決めてしまうのは格好悪いと思いました」

 窪塚さんが演じるのは“ボクA”。ある戦場の穴の中で息をひそめている。もう一つの穴には、同じように“ボクB”がひそんでいた。

「戦争です」――窪塚さんはこの第一声を発するのを心待ちにしている。

「観客の皆さんの心をつかめればと思います。『荒野には…、コンビニがない』というセリフがあって、最初に脚本を読んだときに、一番印象に残りました。この作品の戦争は僕たちの現実と地続きで、“ボクA”も“ボクB”も僕自身なのだと思いました。遠い世界のことではない、僕たち自身の物語なんです」

 本作は、井之脇海さん×上川周作さん、窪塚愛流さん×篠原悠伸さんのダブルキャストで上演されることも話題を呼んでいる。

「稽古では不思議なほど他チームは気になりませんでした。自分のことに一生懸命すぎて(笑)。井之脇さんと上川さんのお芝居を拝見する時がとても楽しみです」

ヘアメイク:大和田一美(APREA) スタイリング:上野健太郎 衣装協力:ニットベスト2万8600円、シャツ3万800円、パンツ3万1900円(AMOMENT)、ネックレス4万7300円(リーフェ ジュエリー/TEL03-6820-0889)

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