【市川團十郎】 新橋演舞場1月公演 「忠臣蔵」で日本人にエールを! 同級生・菊之助にも寄り添いたい
歌舞伎俳優の市川團十郎白猿さんが、2024年1月新橋演舞場公演「双仮名手本三升(ならべがきまねてみます) 裏表忠臣蔵」の取材会に登壇しました。
市川團十郎白猿さんは、2014年からは毎年、新橋演舞場の1月公演に出演し、今回で15回目の新橋お正月公演出演。
外題となっている「裏表忠臣蔵」は、七世團十郎が「仮名手本忠臣蔵」の全十一段を「表」とし、一段一段それぞれに創作場面をつけ「裏」として、全二十二幕で天保4年(1833年)に初演した作品で、その後八世團十郎、九世團十郎へと代々受け継がれてきました。今回は「仮名手本忠臣蔵」を表、現代に合う新たな形で練り上げられる場面を裏として、忠臣蔵の世界にさまざまな方向から光をあて、現代の観客に古典歌舞伎の名作をより楽しんでもらえるよう、新たな「裏表忠臣蔵」を作りあげます。
團十郎さんは「忠臣蔵」への想いについて“私が子どものころの歌舞伎界の「忠臣蔵」は最も重たい、通し狂言と言っても過言ではなく、そして「忠臣蔵」は、どんな時でも、お客さんが入るっていうのが歌舞伎の中での暗黙の了解だったんですけども、近年「忠臣蔵」をやっても、お客さんが入らない月が出ている。なぜかと思ったら、歌舞伎の問題や役者の問題もあるんですけど、「忠臣蔵」は基本的に仇討ちで、(歌舞伎では)名前は全部変わってますけど、大星由良之助(大石内蔵助)の塩冶判官(赤穂藩主 浅野内匠頭の仮託)に対する、主君を思う気持ちを一貫として貫く人間、日本人の魂みたいなものの理解度というものが、薄れてきているんじゃないのかなと、またその気持ちを古典で丁寧に表現することの重要性も大事なんですけど、私も改めて見てると、私ですら「難しいな。理解しづらいだろうなぁ。今の人には」って思うことが何個か出てくるんです。そういうところも、ちょっとなんとかしたいなっていう気持ちとか、そういう思いが強い。そういう意味で一つ、こういう提案もあるではないかという気持ちで挑みたい”と、意気込みを語りました。
さらに“基本的には「表」っていうのは「仮名手本忠臣蔵」ですよ。「裏」というのは外伝、今でいうスピンオフですね。そのスピンオフを本作に入れることを、裏表という認識だと思うので、そういう意味では斧定九郎という、本作の中では一言で終わってしまう人間にもフォーカスを当て活躍しますし、加古川本蔵と由良之助のやり取りも追加し、また、おかると勘平の部分も裏表という形で、ここは娘のぼたんと、せがれの新之助にやってもらおうかなと思います”と語りました。
大星由良之助、早野勘平、斧定九郎、高師直の4役を務める團十郎さんは、どのように演じたいか問われると“歌舞伎とは別の感覚で普通にしゃべると、ただのパワハラですよね、単純に。全体的に権力を持ったおじちゃんがパワハラしてるだけの話じゃないですか。言い方悪いか(笑)。それを現代の方々にも、もうちょっとわかりやすく「そりゃそうなるわな」というところから、日常生活の中で慢心している人間が、そういうことを起こしてしまい、大きなことになっていくということの中でのストーリー性をやっぱり重要にしたい。高師直に関しては、そういう傲慢な周りのことが見えてない…、今もいるじゃないですか?資本主義の上の方にいるおじいちゃんたちみたいな…、ああいうような人物像を歌舞伎として表現していきたいと思います”と意気込みました。
さらに大星由良之助については「貫く男。でも、そういう人間でありながらも遊んでる部分もある。この遊んでる部分は何なのかっていうことも、ちょっと写実にリアリティを持って表現したい。内蔵助は日本人を代表する人物。勤勉だし、真面目だし、忠義だし、今の我々は真面目に働き、時間通りに来て、仕事もきちんとやる。でも、なぜか報われないような部分が多かったりしますよね。こういう昨今の日本の中で、報われる忠実な男を作り上げたい。日本の今の忠実な男、誠実な男をやっぱり報われる男にしていきたいっていうのが、僕の由良之助のビジョンです“と語りました。
また、今公演が松竹創業130周年ということで、来年のビジョンについて聞かれると“来年はもう菊之助さんの襲名にできる限りそばにいたいなと思っています。それはもう同級生ですし、やっぱり困ったときに呼ばれたらば、参加できるような、同期…友達というかね、やっぱり生まれたときから、ずっと一緒なんだよね”と八代目尾上菊五郎の襲名披露興行を控える菊之助さんを思い“彼も大変な時期に入っていくわけですから、僕も支えてもらった2年間がみんなにあるので、そういうものを恩返しできるような方には、しっかり恩返しをする男でありたい”と語り、お声が掛かればいつでも出る気持ちがあると伝えつつ “(菊之助さんから)電話来てますよ、出て欲しいとね。2人で話すんですけど、ほら「130年」っていう…何か人たちがいるじゃないですか。その人たちが決めることだから、やっぱり僕と彼とで決めて、「いいよわかった」言っても、130年の歴史が何か…”と周囲を見渡し、いたずらっぽい笑顔で答えていました。
松竹創業百三十周年「双仮名手本三升 裏表忠臣蔵」は、来年1月3日から26日まで新橋演舞場で上演されます。
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11/21 14:58
TBS NEWS DIG