映画『若き見知らぬ者たち』で総合格闘家を熱演した福山翔大と「UFC世界王者に最も近い日本人」の対談が実現!

映画『若き見知らぬ者たち』で総合格闘家役を演じた俳優、福山翔大(左)と、UFC世界ランカーの平良達郎


映画『若き見知らぬ者たち』で総合格闘家役を演じた俳優、福山翔大(左)と、UFC世界ランカーの平良達郎

何が彼を殺したのか――。

センセーショナルなキャッチコピーが胸に響く映画『若き見知らぬ者たち』が10月11日から全国公開される。

【写真】『若き見知らぬ者たち』のリアルすぎる試合シーン

亡くなった父が残した借金を返済するために、長男の風間彩人(磯村勇斗)は難病を患う母の看病をしながら、昼夜を問わず働く。弟の風間壮平(福山翔大)も借金返済と介護をしながら、父の夢を引き継ぐかのようにMMA(総合格闘技)で明日のチャンピオンを目指す。

どんよりとした空気が漂う日々の生活の中で彩人は恋人、日向(岸井ゆきの)とのささやかな幸せを夢見ていた。しかし親友、大和(染谷将大)の結婚を祝うささやかな宴の夜、彼らの日常は思いもよらぬ暴力によって引き裂かれてしまう──。

観る者の胸にズシリと重いものを落とす、あまりに不条理で、過酷な運命。しかしそれに抗い、歯を食いしばって生きる若者たちの姿を描くことで、本作はポジティブなメッセージを発している。

その象徴が、福山翔大演じる壮平の試合シーンで、格闘技ファンも唸るであろう、迫真のファイトは目を見張るものがある。福山は2017年、『おんな城主 直虎』(NHK)で大河ドラマ初出演。2019年公開の『JK☆ROCK』で映画初出演を果たすなど、着実にキャリアを積む期待の俳優だ。

奇しくもロードショー公開の翌日、アメリカでは〝最もUFC世界王座に近い日本人ファイター〟として注目を集める平良達郎(THE BLACK BELT JAPAN)がUFC7戦目を迎える。2018年8月3日のプロデビュー以来、連戦連勝。2021年7月4日には世界のMMAで最も長い歴史を持つ修斗の世界フライ級王座を奪取した。

2022年5月からは活動の拠点を世界最大のMMAプロモーションUFCに移し、無敗の快進撃を続けている。今回の対戦相手、ブランドン・ロイバルは世界ランキング1位で王座挑戦経験もある強豪だが、勝てばベルトに一歩近づく。

その平良と、風間壮平役を通して総合格闘技の奥深さを知った福山の豪華対談が実現した!(全3回の1回目)

* * *

──福山さんはこの映画の収録1年前から総合格闘家・風間壮平を演じるために体を作り、10kgも増量したとお聞きしました。

福山 はい。始める前は60kgくらいでしたが、監督や就いてくれたトレーナーさんとお話をする中で、「コナー・マクレガー(UFC史上3人目の世界2階級制覇王者)の肉体をベースに体を作っていこう」という話になりました。「1年でマクレガーにならないといけないのか」と思いました(笑)。それまで自分の体は単純に薄かったので、一度72~73kgまで増量して、そこからまた絞っていくというスタイルをとりました。

平良 増量したという話を最初に聞いたときにはヤバいと思いましたね。「自分だったら無理」とゾッとしました。

福山 いやいや、そんな(恐縮)。

平良 自分は逆に減量するほうなので。普段は65kgで、だいたいUFCフライ級のリミット(56.7kg)に合わせていく。65kgより増えることはないので、逆に70kgまで増やせといわれたほうがキツいですね。

福山 僕にも70kgの壁があって、もうひたすら規定量を超えたプロテインを喉に流し込んでいました。やっぱり固形物だけ口にしていたら、キツいじゃないですか。最後はサプリメントで整えていきました。

──そこまでしてMMAファイターになりきろうとしていたんですね。

福山 台本を読んだ時点で、そのくらい人生をかけたい作品だと思いました。内山拓也監督の熱い思い、魂をなんとか具現化することが自分の使命だと。そこは平良選手の試合前のモチベーションと同じように、何かひとつ決まったらそこに向かっていくだけでした。こういう機会に敢えて聞いてみたいのですが、平常心は大切にされていますか?

平良 そうですね。一番はケガをしないように心がけていることですね。ただ、試合が近づくと、試合モードの頭になるので、他のことに対する集中力とかが持っていかれてしまう。オフのときは漫画を読むのが好きなんですけど、試合モードに入ったら3ページくらいしか読めないし、昼寝もできなくなる。目を閉じても「練習ではこうだったよな」みたいに思い返すことが多くなって、「格闘技脳」みたいな状態になってしまうんですよ。

福山 それは次の対戦相手についていろいろ考えたり、試合以外のことに関心が向かなくなるからですか?

平良 そうですね。自分の練習動画を見たりもするけど、「どうやったら、理想的な動きができるか」など自分をアップデートするためのことばかり考える時間が多くなっていますね。

福山 なるほど。

平良 まあでも、試合まで1週間を切ったらもうどうすることもできないんですけどね。そうなったら、リラックスしながら体重を作り、試合の日を待つだけですね。

後楽園ホールで収録された、迫真の試合シーン©2024 The Young Strangers Film Partners


後楽園ホールで収録された、迫真の試合シーン©2024 The Young Strangers Film Partners

──この映画のハイライトは〝格闘技の聖地〟後楽園ホールを借り切り、実際に観客を入れて撮影した試合シーンだと思います。撮影時には福山さんも、平良選手が言うような「格闘脳」になりましたか?

福山 格闘脳なのかどうかわからないですが、僕はけっこう緊張するタイプなんです。普段、お芝居するときも自分の中に必要以上のものを抱え込みすぎてしまう。何かひとつに集中しなければならなくなったら、ご飯もいらなくなるというか、お腹もすかなくなるんです。今回の撮影中もそうでした。

平良 僕はそういうことはないですね。計量が終わったらウチの会長(元修斗世界フェザー級王者の松根良太)から「よっしゃ、リカバリーだ」と、たくさん食べることを薦められます。(減量で胃が小さくなっているので途中で)さすがにもうお腹いっぱい、みたいな感じになるんですけど(苦笑)。

福山 前日計量から試合までに、どのくらい体重を戻されるのですか?

平良 いつもは6kgくらい戻して試合をしていますね。

福山 すごい、6kgも!

平良 試合がある週になると糖質、塩分、水を抜いているので、リカバリーでバンッと戻る感じはありますね。水抜きでだいたい6kgは落としていると思います。

福山 すごいや......。

平良 この、1週間前からの最後の工程を繰り返すことで、「ここまで来たら大丈夫だ」みたいなフィーリングは掴めてきましたね。以前あった「もう(体重が)落ちないんじゃないか」みたいな焦りはなくなった。減量も経験だなとつくづくと思いますね。

福山 はじめの頃とは全然違うんですね。

平良 新人の頃は「明日の計量までに落ちるかな?」とか、いろいろ先のことばかり考えていた。完璧主義じゃないけど、「もうこれ以上は絶対食べない」とか、自分で設ける制限がキツくなっていました。でも、やっぱりそれはよくない。今は、「もう何回もパスしているから大丈夫」と思えるようになりましたね。

(第2回はこちら)

■『若き見知らぬ者たち』 
10月11日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
©2024 The Young Strangers Film Partners

●福山翔大(ふくやま・しょうだい) 
1994年、福岡県出身。映画『クローズEXPLODE』(14)のオーディション参加をきっかけに芸能界入り。エキストラから出発し、下積みを経て、ドラマ「みんな!エスパーだよ!」(TX)で俳優デビュー。 2017年には「おんな城主 直虎」(NHK)で大河ドラマに初出演。その後もドラマ「スカム」(MBS)「MIU404」(TBS)「恋はDeepに」(NTV)「明日、私は誰かのカノジョ」(MBS/TBS)「にがくてあまい」(THK)と出演を重ねる。映画では『JK☆ROCK』で映画初主演を務め、その他『花束みたいな恋をした』(21)『ブレイブ -群青戦記-』(21)『砕け散るところを見せてあげる』(21)など。2024年春クールのドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」にはレギュラー出演している

●平良達郎(たいら・たつろう) 
2000年、沖縄県出身。高校1年のとき、パラエストラ沖縄に入会し、総合格闘技のトレーニングを開始。アマチュア修斗を経て、2018年8月プロデビュー。同年11月、修斗フライ級新人王に輝く。破竹の快進撃を続け、2021年7月に修斗世界フライ級王座獲得。2022年5月からUFCに参戦し、現在7連勝中でUFC世界フライ級ランキング5位。10月12日(日本時間13日早朝)に、同級1位のブランドン・ロイバルと対戦

取材・文/布施鋼治 撮影/長尾 迪

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