【仮面ライダーヒロイン名鑑】『仮面ライダー龍騎』森下千里「"ひょっとこ"のようなキス顔はさすがに恥ずかしかったです(笑)」
仮面ライダーシリーズ最新作『仮面ライダーガヴ』のオンエアを記念して、今年も『週刊プレイボーイ』のスペシャルイシューが発売! 9月17日に発売された40・41号では「歴代仮面ライダーヒロインが大集結!!」と題し、仮面ライダー女優たちが登場。水着グラビアの最新撮り下ろしやインタビューなど、今回も仮面ライダー愛がほとばしる内容となった。
その特集により歴代ヒロイン4名のインタビューを、週プレNEWSに再掲載。今回は『仮面ライダー龍騎』(2002~2003年)で浅野めぐみを演じた森下千里さんが登場。めぐみは主人公・城戸真司が働くネットニュース配信会社の見習い記者。パソコンを叩き壊すなど不器用で、そそっかしいが、ピュアな愛されキャラで、戦いに疲弊した真司らの心を癒やした。今回の取材では、当時の心境や役への思いなどを語ってくれた。
――『仮面ライダー龍騎』は、森下さんが芸能活動をされていた時代の、本格的な女優デビュー作だそうですね。
森下 はい。事務所に入った、20歳の時ですね。途中出演のキャストが募集されていたんです。オーディションを受けました。
――『仮面ライダー』を見たことはあったんですか?
森下 私が子供の頃はレギュラー放送のない頃でしたし、大人になってからも週末はレースクイーンの仕事をしていたので、いずれも見ていないです。とんねるずさんの『仮面ノリダー』くらい(笑)。でもだからこそオーディションにはまっさらな状態で臨めました。
森下千里さんが演じた浅野めぐみ ©石森プロ・東映
――オーディションはどんな感じでだったんですか?
森下 部屋の中で監督と二人きり。後に私が演じることになる浅野めぐみの登場回の台本を読みました。
――登場回というと、低血圧の症状を不治の病だと勘違いして、以前から憧れていた北岡秀一(仮面ライダーゾルダ)に結婚を迫る、めぐみの"そそっかしいキャラ"全開の迷エピソードです。
森下 それってコメディですよね。でも私、悲劇だと思って(笑)。それを帰り道に気づき、「落ちたな...」とガッカリしていたんです。そうしたら連絡がきて「合格です」って。リアルにそそっかしいのがよかったみたいです(笑)。もちろん嬉しかったけど、ちょっとだけ複雑な気持ちでした。
――途中出演ということで、現場にはすぐに溶け込めました?
森下 なんというか、「転校生」の気分でした。ただメインキャストは同世代だったので、すぐに仲良くなりました。控え室やメイクルームでは一緒に騒いでいたし、撮影後はカラオケに行くなど、よく遊んでいました。特に栗原瞳ちゃんとは仲がよかったです。
――浅野めぐみは主人公・城戸真司が働くネットニュース通信社の見習い記者。栗原さん演じる同僚の島田奈々子とともにコスプレをしたり、ダンスをしたり、賑やかな姿で物語を盛り立てました。役作りはどんな風にされました?
森下 役作りもなにもデビュー作ですからね(笑)。台本だけ徹底的に読み込んで、現場ではがむしゃらに演じていました。監督からよく言われたのは、『仮面ライダー龍騎』はミラーワールドという異空間で仮面ライダー同士が戦う物語。言うなれば真司たちは現実と非現実を行き来するわけで、現実は絶対に平和でないといけないんだって。現実は真司がひとりの青年でいられる世界であり、またそうでないと仮面ライダー同士の戦いというシリアスな世界観が際立たなくなる。それだけにひたすら無邪気で明るくいることを意識しました。
――特に印象に残っているエピソードは?
森下 やはりオーディションの時に台本を読んだ、登場回(第30話)ですね。とにかくめぐみはそそっかしいんですよ。お茶を頼まれれば茶筒を渡し、運転手を任されれば車内のハエに気を取られて事故を起こす。食事を頼まれれば何もないところでつまづいて食器ごとぶちまけてしまったり。見ていて呆れるほどの演出が自分でも楽しかったです(笑)。
――めぐみは腕っぷしも立つんですよね。
森下 そう。ガラの悪い男たちを一瞬でやっつけるんです。真司役の須賀(貴匡)くんからは、「一見抜けているんだけど、じつはすごく強いなんて、キャラが立ちすぎてる、ズルい!」ってうらやましがられました(笑)。ただあの回は演じていて、ちょっと恥ずかしかった箇所もあって。昔、憧れていた男性とデートをするシーンなんですけど、湖のど真ん中、ボートの上でウエディングドレスを着て、相手にキスをせがむんです。それがちょっと、ね(苦笑)。
――というと?
森下 そのキス顔がまるで"ひょっとこ"みたいなんですよ(笑)。しかも全方位から思い切り照明を当てられ、スタッフの皆さんに見守られて。さすがにあれだけは「わ~! 恥ずかしい~、早く終わって~」って思いました(笑)。
――それにしても、後に雑誌やテレビで度々、クールな美女を演じる森下さんを考えたら、びっくりするほどの三枚目なキャラクターですよね。
森下 キレイな女性として見てもらえるのは嬉しかったですけど、もともと私はそんなタイプではなく、むしろ真逆。なのでストレスになることも多かったんです。それだけに、めぐみのことを思い出し、またあんな楽しいキャラクターをやりたいと思っていましたよ。
――『仮面ライダー龍騎』を通じて学んだことは?
森下 なんといってもチームワークの大切さです。キャスト、監督をはじめ、カメラマンさん、照明さん、衣装さんなど、本当にたくさんの方々がいらっしゃって、それぞれがいい作品にしようと全力を注いでいる。1年間という時間をかけてみんなとの関係性を丁寧に築きながら、ひとつの作品を作り上げる大変さ、面白さは本当に勉強になりましたね。
――森下さんは2019年末に芸能界を引退。現在は、宮城県石巻市を拠点に政治活動をされています。
森下 石巻市は、石ノ森萬画館があるなど、『仮面ライダー』の原作者である石ノ森章太郎先生のゆかりの地なんです。私のデビュー作が『仮面ライダー龍騎』であることを考えると、なんだか不思議なご縁を感じずにはいられないです。
――放送終了から20年以上が経ちましたけど、『仮面ライダー龍騎』にご出演されていたことを言われることはあります?
森下 もちろんです。石ノ森萬画館では当時の映像のダイジェストが随時流れているんです。それをご鸞になって私を知ってくださる方もいますし、あと宮城県に限らず、当時、見ていましたと言ってくださる方はすごく多いです。森下千里ではなく、浅野めぐみとして、サインを求められることもあります(笑)。いまなおここまで気にかけてくださるなんて本当にすごい。つくづくオーディションの時に勘違いをしてよかったなと思います(笑)。
――現在の活動で、『仮面ライダー龍騎』での経験が生きていると感じることはあります?
森下 先ほどのチームワークの大切さを生かしていることはもちろんですけど、自分が現場にいたからこそ、石ノ森先生の偉大さ、そしてエンタメの力の大きさを実感するようになりました。石ノ森萬画館に全国、いや世界中から大勢の方々が訪れてくれるんです。素晴らしい作品が人の心を動かし、活気が生まれ、それが地域の活性化にもつながっていく。自分が芸能界にいたからこそ、それらがよりリアルに感じます。もちろん私自身のエネルギーにもなりました。私も『仮面ライダー龍騎』に出演できたことを誇りに、大勢の方々に元気を与える活動をしていきたいと思いますね。
●森下千里 Chisato MORISHITA
1981年9月1日生まれ 愛知県出身
○2002年『仮面ライダー龍騎』で女優デビュー。2019年に芸能界を引退。2023年、自由民主党宮城県衆議院比例区第一支部長に就任
取材・文/大野智己 撮影/荻原大志 ©石森プロ・東映
09/28 18:00
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