《バラエティー初出演》Koki,、芸能界でさらなる飛躍のための条件は「家族離れ」、 母・工藤静香は重鎮の懐に飛び込み魅力が拡散

木村拓哉と工藤静香の次女・Koki,

 有名俳優や人気タレントを親にもつ二世タレント。下積みなしにデビューできるケースも多いことから、“親の七光り”などと批判されがちだ。木村拓哉と工藤静香の次女でモデル・女優として活動するKoki,は先日、バラエティー番組に初出演したが、ネットでは厳しい声が多かった。Koki,が二世タレントという枠を超えて、今以上に活躍するために必要なこととは? 有名人批評に定評のあるライター・仁科友里さんが、昨今の二世タレント事情をふまえて考察する。

【写真】まぶしい笑顔のKoki,ほか、工藤静香との2ショットなど

 * * *
 有名人の子ども、つまり二世は人生イージーモードだと、巷間思われているような気がします。確かに生まれながらに経済力や人脈を持つ二世が恵まれていないとは言い切れないでしょう。けれど、芸能界の場合、親が大物であればあるほど、二世は不利なのかもしれないと思うのです。

芸能界有数の二世・Koki,がバラエティーで見せた姿

 そういう意味で私が注目しているのは、モデルのKoki,さんなのです。木村拓哉さんと工藤静香さんというスターを親に持つ、芸能界有数の二世と言えるでしょう。韓国の大人気Web漫画「女神降臨」が映画化されることになり、主演のKoki,さんと共演者である俳優・渡邉圭祐さん、綱啓永さんと共に「しゃべくり007」(日本テレビ系)に出演したのでした。

 Koki,さん初のバラエティー番組出演ということで、いやが上にも注目が集まります。Koki,さんばかりに注目が集まって他の2人が気の毒だった、つまらなかったという意見がありましたが、これこそが二世の悲哀なのだと思うのです。親の名前が大きいと「きっとすごい子なのだろう」と勝手に期待するのが大衆というもの。けれど、トークスキルが高いとされる芸人さんでも初めてのバラエティー出演で結果を出すことはほぼ不可能なわけですから、Koki,さんは健闘したと言えるのではないでしょうか。また、テレビに限らず、人気商売で注目度の高い人にスポットが当たるのは当たり前のことで、主役であるKoki,さんに質問が集中したのは彼女のせいではありません。

 番組を見ていると、Koki,さんからはお母さんである工藤静香さんに影響を受けていることがわかります。Koki,さんは料理が好きなこと、フルーツを取るように心がけていること、美容院でトリートメントをせずに、つげの櫛でケアしていることを明かしていましたが、料理、フルーツ、つげの櫛は工藤静香さんのインスタグラムでもよく取り上げられています。工藤さんが丁寧に育てたお嬢さんであることは伝わってきましたし、2022年の工藤さんのバーステーに際して、Koki,さんは「こんなに尊敬できる人が、母で幸せ」と尊敬と愛情をつづっています。家族仲がいいのはいいことですが、Koki,さんが「日本で、テレビに出ながら芸能人として活動する」ことを考えるなら、この家族仲のよさはネックになるかもしれないと思うのです。

テレビに必要とされる条件はネットから愛されること

 Koki,さんのお母さんである工藤さんは80年代を代表する国民的アイドルでしたが、当時と今を比べると明らかに違う点として、現代はネットが力を持っていることが挙げられます。80年代はテレビ全盛の時代でしたから、テレビに出ることが売れっ子への近道だったと言っていいでしょう。しかし、今の時代はテレビだけでなく、ネットからも愛される人でないと厳しいのではないでしょうか。テレビとネットは正反対の性質を持つと言えるかもしれません。

 テレビはともかく視聴率がほしいわけですから、常に注目度の高い人、知名度のある人を求めています。しかし、スポンサーの意向、他の出演者との兼ね合いがありますから、予定調和的、ご都合主義的なオチがついてしまうこともあるでしょう。こういった嘘や欺瞞やきれいごとこそ、ネット民が一番嫌うものと言えると思います。ですから、新人の二世タレントが番組で親の話をしたり、丁寧に扱われているのを見ると、実績もないのにチヤホヤされている、親の七光りだとそっぽをむかれてしまうわけです。

それでは逆に、どんな人がネットから愛されるかというと、“ツッコみどころ”を自ら用意できる人、あえてイジらせてあげる人ではないかと思うのです。本人は嘘ではなく大真面目に言っているけれど、聞いているこちらにとっては面白い。さらにそのエピソードが新鮮で説得力があり、コンプライアンスに抵触しなければ、テレビでもイケるのではないでしょうか。

 テレビ出演はそれほど多くないものの、出演するたびに叶姉妹が高評価を得るのは、彼女たちが明かすエピソードが、すべてネット受けするからではないでしょうか。例をひとつあげてみましょう。その昔、叶姉妹が「25ans」において、「美肌の秘訣は、すっぽんをたくさん食べること」と紹介し、すっぽんが女性の間でブームとなったことがあります。多くの女優さんが判で押したかのように「美容のために、たくさん野菜を食べています」と答える中、叶姉妹のようなゴージャスな女性たちが夜な夜なすっぽんを食らう。もうこれだけで十分な面白さがありますよね。すっぽんは良質なたんぱく質が含まれているため、古来、男性の精力増強に効果が期待できると言われており、オジサンのための食べ物というイメージを持つ人も多いでしょう。そのすっぽんを積極的に食べる叶姉妹はどこからエロチックでもある。情報としての新しさ、おもしろさ、エロさ。このようにいろいろな切り口があるエピソードがあるとネットでも評価され、テレビでも重宝されるのではないかと思うのです。

親しみを感じさせる一般人的な感覚がウケた橋本環奈

 Koki,さんと同世代で、現在放映中のNHK連続テレビ小説「おむすび」の主演を務める橋本環奈さんも、テレビとネットに愛される要素をたくさん持っていると言えるのではないでしょうか。もともと子役として活動していたそうですが、出身地である福岡のご当地アイドルとして活動していたところ、ファンの人が撮影した「奇跡の一枚」が話題を呼び、「1000人に1人の美少女」としてネットで大バズりして、テレビの出演依頼やコマーシャル出演が殺到したそうです。

 女性芸能人のデビューのきっかけと言えば、スカウトやオーディションというのが一般的ですが、ネットに押し上げられて、一夜にして日本中の話題になるというのは、常に希少性を求めているテレビ業界の人にとっては願ってもない人材でしょう。権威を嫌うネット民にとっても「ハシカンをスターにしたのは、芸能事務所でもマスコミでもない、オレたちだ」と鼻高々はなずです。たった1枚の写真がきっかけで人生が変わったというフック(きっかけ)も見事ですが、橋本さんはツッコみどころも持っている人。橋本さんはお酒が大好きなことを公言しており、2022年8月11日放送の「櫻井・有吉THE夜会」において酒豪ぶりを明かし、司会の有吉弘行さんに「女優さんがこんなに飲むの見たことない」と驚かれるくらいの飲みっぷりでした。また、X(旧ツイッター)において、「家に1人でいると納豆を食べる回数が格段に増えます。あ、あとにんくも!きざみにんにくときざみしょうががこの自粛期間だけで1瓶無くなろうとしています」と、にんにく好きであることを明かしています。

 今はSNSで芸能人に話しかけることができる時代ということもあって、芸能人には圧倒的な才能や魅力を望みながら、一方で自分たちと同じ感覚を持っていてほしいと願う人が増えているように感じます。神さまに選ばれたとしか言えないようなデビュー秘話を持ちながら、飲酒やにんにくが好きなことを明かす橋本さんの一般人的な感覚は、ネット民にも歓迎されるでしょう。

Koki,に必要なのは家族離れ?

 ですから、Koki,さんもこういう感覚を身に着けるために、“家族離れ”をすすめたいのです。今のKoki,さんのインスタグラムには、本人、工藤さん、お姉さんであるCocomiさんと工藤さんのお母さんがよく登場し、他人はほとんど出てきません。それだけ家族を愛している、信頼しているということでしょうが、恵まれた家族の話というのはそれほど広がりません。また、ご両親ともスターなわけですから、安易にプライバシーを明かすと炎上する可能性もあります。「私はこういう人だ」ということをKoki,さんが自分自身で伝えていく必要があると思うのです。

 そういう意味で残念だったのが、「しゃべくり007」において、知っている若手の芸人を聞かれた際に誰の名前もあげられなかったことでした。バラエティー番組においては「好きな芸人」は頻出のクエスチョンですから、準備不足と言わざるを得ませんし、実はこの質問はとてもおいしいと思うのです。笑いのツボというのは人によって結構違うので、具体的な名前をあげることで、意外性と親近感を見せることができるからです。そこから芸人との交流が生まれ、それをSNSにアップすれば、芸人のファンの人にも「二世としてのKoki,さん」ではなく、Koki,さん本人を知ってもらうきっかけになるでしょう。

 人との交流と言えば、お母さんである工藤さんは若い頃から、そのあたりも非常に上手だったと言えるでしょう。和田アキ子さんや森光子さん、とんねるず・石橋貴明さんなど各界を代表する売れっ子や重鎮と交遊があり、彼らが自分の番組で、工藤さんが親御さんのために家を建ててあげた、親孝行だというエピソードを明かしていました。実力者(インフルエンサー)の懐に飛び込み、交流を持つことで自分のいいところが拡散され、イメージアップがなされるというSNS戦略の原型を、工藤さんはとっくに実行していたと言えるのではないでしょうか。

 しかし、Koki,さんがこういう売れるためのカンを養うのは、環境的に難しいのかもしれません。明石家さんまさんを父に、大竹しのぶさんを母に持つタレント・IMARUさんは2016年8月8日放送の「しくじり先生 俺みたいになるな!3時間スペシャル」(テレビ朝日系)において、二世の難しさを明かしています。デビュー後、注目度の高さから大きな仕事が続々と決まるも、結果は出せずに仕事を維持することができなかったIMARUさん。しかし、危機感はそれほどなかったと言います。なぜなら、周りが親御さんに遠慮して、誰も注意しないから。ということは大物二世だからこそ、自分をどう見せるかは自分で決めないといけないという厳しさがあると言えるのではないでしょうか。

 考えてみれば、お父さんもお母さんもラクをしてスターになったわけではないのです。歌番組が激減したために、SMAPはバラエティー路線に転向し、トークスキルを磨いてコントにも挑戦していました。工藤静香さんもおニャン子クラブに加入する前には、セブンティーンクラブとしてデビューしていますが、シングルを2枚出した後に活動を休止しています。こういう憂き目に負けなかったからこそ、今があると言えるのではないでしょうか。これまでどおり家族と仲良くしつつ、家族から一歩離れる勇気をもって自分を確立できるのか。これがKoki,さんに課せられた最大の試練なのかもしれません。

◇仁科友里/フリーライター。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ』(主婦と生活社)。

ジャンルで探す