松下洸平、出世作『スカーレット』から5年 走り続ける原動力は「素敵な作品に巡り合えたことがすべて」

松下洸平

 クランクイン! 写真:松林満美

 俳優、アーティストとしての活動はもちろん、今年は『with MUSIC』(日本テレビ系/毎週土曜19時56分)でアーティストナビゲーターを務めるなど、活躍の幅をさらに広げている松下洸平。10月12日にスタートする新ドラマ『放課後カルテ』(日本テレビ系/毎週土曜21時)では、地上波ドラマ単独初主演という新たな挑戦が始まる。“超偏屈な学校医”というこれまでのイメージとは異なるキャラクターを演じる松下に、作品への思いや俳優デビュー15周年を迎えた心境を聞いた。

◆パブリックイメージと正反対の役柄も「振り切って演じたい」

 日生マユの同名漫画を実写化する本作は、小学校を舞台に、口も態度もでかい小児科医・牧野が、その観察眼で“言葉にできないSOS”を見抜き、未来へ向かう子どもたちの背中を押す、保健室ヒューマンドラマ。松下は、学校医として小学校に赴任してきた仏頂面の小児科医・牧野を演じる。

 地上波ドラマ単独初主演への思いを尋ねると、「座長としてできることっていうのは、実はあんまりないと思っている」との答えが。「作品はみんなで作るものなので、もちろん先頭に立って引っ張っていく力も時には必要ですが、大前提として、子どもたちも含めたみんなで作りたいからこそ、そこ(主演)に縛られない雰囲気作りを心がけていきたい」と、肩に力を入れることなく作品と向き合っている。

 「いい評判も悪い評判もあってしかるべきと思いますし、それを一手に担わなきゃいけない重圧はあると思います」と打ち明けつつ、「そこばかり気にして楽しくものづくりできないのは嫌なので、子どもたちやスタッフの皆さんとも常に同じ目線でいたいです。座長だからと言ってあまり難しく考えずに、自分のキャパオーバーなことをしてしまわないよう、自然体で現場にいられたら」と思いを明かす。

 演じる牧野というキャラクターは、仏頂面で口も態度もでかいという、これまでの松下のパブリックイメージとは真逆なキャラクターだ。「確かに今までやってきた役の中では珍しいタイプのキャラクターだなと思います。でも、自分じゃない部分も含めて演じられるというのは俳優としては楽しいことなので、そこは思い切り振り切って演じたいと思います」と前向きだ。

 「牧野は嘘をつかないところが魅力だなと思います。嘘がない代わりに、オブラートに包んで言うことも知らないので、誤解やトラブルを生むこともある。でも、彼にとってはそれが信念なんだと思います」と分析。さらに「社会生活を送る上では少し足りない部分もあったりするのですが、それが彼の性格であり個性なので、どう魅力的に演じていくか難しいところですが、とても真っすぐで嘘のない魅力的な人」だとも語る。「一部嫌われる可能性もありますが、必ず牧野先生はしっかり回収してくれると思うので(笑)、嘘をつかずに真っすぐに子どもたちと向き合う姿勢で臨みたいと思ってます」とにっこり。

 医師役の経験が多くない松下だが、「すごく難しいセリフにあふれた役なんだろうなと思いきや、牧野先生はあまり口数が多くなくて助かった」と笑う。「難しい医療用語ももちろん出てきますけど、今回の作品は病気と向き合うことだけでなく、命の尊さや大切さも伝えられたらと思います。医療に携わる役として難しく捉えるんじゃなくて、身近な物語として、柔らかくて優しい光が射し込むような、そういう作品にできたらいいなと思ってます」と作品に込める思いを伝える。

◆俳優、アーティスト、音楽番組出演とフル回転続くも、“素敵な作品との出会い”が原動力


 牧野は、メガネ、白衣、一見とっつきにくそうな見た目だが実は抜けてるところもある、という人物。松下洸平×メガネ×白衣は、ファンの心をぐっとつかみそうな組み合わせだが、自身の白衣姿を見た感想を「原作のキャラクターに近いものでチョイスしたので、そこがちゃんとブレていなくてよかったなと思いました。髪形とメガネもあわせて白衣を着ると、ちゃんと原作の牧野先生に寄せられているなと安心しました」と語る。

 今回、これだけ大勢の子どもたちと共演する経験も松下にとっては初めてのことだ。「みんな礼儀正しい子たちばかりでビックリしました。自分が彼らと同じ年齢の時に同じことができたかと言われたら、絶対できない。要求されたことに対してしっかりと応えていく姿はすごく心強いです。『みんな頼もしいな!』って思いました」と太鼓判。「慣れない現場で緊張してしまうこともあると思うし、自分の気持ちや心をコントロールしきれない部分もあると思うので、そこはサポートしつつ、ことお芝居に関しては同じ共演者の1人として、時には話し合いもしながら一緒に作品を作っていきたいと思ってます」と、“松下先生”の優しい顔を見せた。

 2009年のBROADWAY MUSICAL『GLORY DAYS』で俳優としてのキャリアをスタートさせてから15年。一躍注目を浴びるきっかけとなった朝ドラ『スカーレット』からは5年が経った。これまでの道のりをどう受け止めているだろう?「目まぐるしかったなとは思います。大変だった分、それと同じくらいたくさんの人に出会えたので、ありがたかったなと思うし、そういう人たちのおかげで今があるので、この5年で出会えた人たちに対して、これから先にどれくらい恩返しできるかなと考えたりしています」。

 今年は本作に加え、大河ドラマ『光る君へ』や映画『室井慎次』シリーズに出演。さらには自身のライブツアーに舞台『母と暮せば』があり、『with MUSIC』も始まった。フル回転の仕事ぶりが続くが、その原動力は「素敵な作品に巡り合えたことがすべて」だときっぱり。「今回の『放課後カルテ』も、原作を読ませていただいて、本当に素敵で面白いなと思ったんです。自分に務まるかどうかという不安ももちろんありましたが、こうしてお声がけいただいて、皆さんとものづくりができる。今回は『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』でご一緒したスタッフさんが多いので、心強いものもあります。本当に楽しいし、好きでやっているので、それがすべての原動力になっているんじゃないかと思います」と明かす。

 「自分の心と体が続く限りは頑張りたい。その代わり、嫌いなものや苦手なものに対してまったく興味を示さないのが問題なんですけど」と笑う松下。初主演にも平常心で作品と向き合い、また新しい魅力を見せてくれることは間違いなさそうだ。(取材・文:竹村ユウヒ 写真:松林満美)

 ドラマ『放課後カルテ』は、日本テレビ系にて10月12日より毎週土曜21時放送。

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