浜辺美波「他のお仕事に就きたいと思ったことが一度もない」オーディション→芸能界入り14年 女優を「続けられる限り頑張りたい」

「プライベートも含め、たくさん人生経験を積みたい」と語った浜辺美波(カメラ・竹松 明季)

 若手トップ女優としてドラマ、映画、CMと活躍を続けるのが、浜辺美波(24)。小学4年の時「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞し、芸能界入りした。あれから14年。22日公開の主演映画「六人の嘘つきな大学生」では、就職活動を舞台に女子大生役を熱演している。今作への思い、朝ドラ経験後の意識の変化、今後の女優人生について語った。(加茂 伸太郎)

 「あっ、お久しぶりです。よろしくお願いします!」。浜辺はほほ笑むと、両手を添えて、丁寧にお辞儀した。

 デビュー以来、何度か取材してきた。直接話を聞くのは5年ぶりだったが、ほんわかとした空気感は当時のまま。昨年のNHK紅白歌合戦で司会を務め、世代のトップ女優に上り詰めても、おごらず、謙虚な姿は実に彼女らしい。

 「自分が24歳というのが信じられなくて…。ここ数年は(1年が)2倍の早さで進んでいる感覚です。時間の流れがすごく早い。役の幅を広げるために、もっと頑張らないといけないですし、のんびりとしていられないなって思います」

 2011年の「東宝シンデレラ」オーディションをきっかけに芸能界入りした。同オーディションには母親が応募。歯科医になりたかった10歳の少女の未来は、大きく変わった。

 「この仕事を始めてから、他の職業、他のお仕事に就きたいと思ったことが一度もないんです。子どもなりに、覚悟を決めた瞬間があったんだと思います。その気持ちは今も変わらないですし、続けられる限り、この仕事を頑張りたいです」

 出世作は17年の映画「君の膵臓をたべたい」。報知映画賞新人賞、日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した。同時期にはドラマ「咲―Saki―」「賭ケグルイ」に主演し、その後の活躍につなげた。

 「当時は(10代で)思春期だったし、反抗期もあった。余裕が全然なくて、笑顔も少なかったと思います。自分にはもったいないぐらいのステキな役をいただきましたから」と懐古。「ありがたいことに、2020年前後から、ずっと忙しくさせていただいています。(10代後半は)駆け抜けた時期だったけど、忙しいからこそ一つ一つの作品や役を丁寧に、大事に演じていこうと意識しました」

 昨年は、NHK連続テレビ小説「らんまん」(神木隆之介主演)でヒロインの寿恵子を演じた。1年近くかけてひとつの役を作り上げるのは、初めての経験だった。映画「ゴジラ―1・0」でも共演した神木を見て、オン・オフの切り替えの重要性を実感。「自分の中で意識が変わった」という。

 「これまでは発散する暇があったら、その時間に台本読むべきという意識が強かったんです。(納得のいく演技が)できていない時は(現場でも)楽しい顔をしちゃいけないって。神木さんや(『シン・仮面ライダー』で共演した)池松壮亮さんだったり、座長のステキな背中を見ていると、難しく考えず、抱え込まないこと、息抜きをすることも大事だって。(何となくですが)発散の仕方も分かってきた気がします」

 朝ドラからしばらくして臨んだのが、「六人の嘘つきな大学生」だった。浅倉秋成氏の同名小説が原作。企業の最終選考に残った6人の就活生に「内定者1人を決める」という課題が与えられ、仲間からライバル関係に。それぞれの裏の顔が暴かれていく。

 演じたのは、早大の学生で人並み外れた洞察力の持ち主・嶌(しま)衣織。就職活動を体験した同い年の友人らに話を聞き、役づくりのヒントにした。「短い期間にたくさんの企業を受けて、人生が左右されてしまうかもしれない。(友人からは)追い詰められて、疲弊している感じがヒシヒシと伝わってきて。すぐにイメージできました」

 リクルートスーツで臨んだ、会議室での最終ディスカッションのシーン。1週間ほど、こもりきりの撮影だった。「窓がない部屋で一日の大半を過ごしていたので、極限状態まで追い込まれるようでした。あまり記憶がなくて。だんだんとすり減っていく感覚がありました」

 最後まで勝ち残れるか―。緊迫感のある会話劇が繰り広げられる中でも、一歩引いて耐え忍ぶようなキャラクターだった。「ひとり黙って(輪の中で)引いている。控えめだけど、『この会社に入りたい』という思いは誰にも負けていないので、芯の強さが伝わればと思いました。かえって目立つんじゃないかと思い、あまり目線を動かしたり、体の向きを変えたりしないように心がけました」

 後半の重要な局面で、アップで映し出される嶌。ためていた感情をあらわにし、涙を流す。全ての力を注ぎ込んだ。「台本のト書きに心情がビッシリと書き記されていて、『めっちゃ感情動いてるじゃん、嶌さん』って。当日は気持ちをもっていきづらくて、結構時間をもらった記憶があります。悩んでしまって。ずっとブツブツと、つぶやいていたかもしれません(笑い)」

 来年25歳になる。周囲が羨むような環境に身を置くが、自身が描く理想の女優像にはほど遠い。「100点満点で満足していたら、伸びしろがなくなってしまう。私なんかまだまだ。だから、今は点数(=自己採点)は低めですね。今年は年間を通して作品に携われていないですから。来年は1点でも積み重ねていけるように、鍛錬の年にできたらなと思います」

 「君の膵臓をたべたい」の桜良、「賭ケグルイ」の夢子など、多くの個性的な役柄を自分のものにしてきた。「いまだに『桜良が好きです』『夢子が好きです』と言ってくれる方がいて、うれしいし、ありがたいです。(年齢などの制約で)今しかできない役、今だからできる役ってあると思う。一瞬一瞬を大切に、自分にできる精いっぱいを詰め込む作業を忘れないようにしたいです」

 この先、どんな出会いが待っているのか、期待に満ちあふれている。

 ◆浜辺 美波(はまべ・みなみ)2000年8月29日、石川県生まれ。24歳。11年「東宝シンデレラ」オーディションのニュージェネレーション賞を受賞し、芸能界入り。同年映画「アリと恋文」で女優デビュー。16年、TBS系「咲―Saki―」で連ドラ初主演。25年1月、映画「アンダーニンジャ」、26年にNHK大河「豊臣兄弟!」に出演する。趣味は読書。157センチ。

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