『トークサバイバー!』で大きな爪痕。すがちゃん最高No.1の豪傑な父親

先日、Netflixで配信されたコメディシリーズ『トークサバイバー! ラスト・オブ・ラフ』に出演したお笑いトリオ「ぱーてぃーちゃん」のツッコミ担当・すがちゃん最高No.1。本格ドラマに挑戦する芸人たちが、台本なしのシーンでトーク合戦を繰り広げ、面白くなければ即脱落となるルール。すがちゃんは、そこで披露したトークがネットニュースに切り抜かれるなど、大きな爪痕を残し話題となっている。

『トークサバイバー!』出演が反響を集めるなか、12歳で一人暮らしをすることになったという、彼の壮絶な半生に再び注目が集まっている。そんな彼の破天荒すぎる父親のエピソードを紹介。

※本記事は、すがちゃん最高No.1:著『中1、一人暮らし、意外とバレない』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

実の父親と異性をナンパ

2019年7月。

27歳になった俺は、

実の父親と、女の子をナンパしていた。

果たしてこの世に何人いるだろうか、実の父親と異性をナンパしたことがある人が。限りなく0に近いのではないだろうか。

ただ、残念なことにうちの父親は、そういう“可能性0%”のオンリーワンの父親と言えるほどの男だった。

親父のナンパのやり口はこうだ。

親父は当時、葛飾に住んでいて、周辺には親父が“ナンパ用”に使っているカウンターメインの狭めの居酒屋が数軒あった。親父は俺をつれて、そのナンパ用居酒屋を順に、外から見て回る。

1軒目を覗き……「次行くぞ」と2軒目へ。2軒目も外から覗き、何がダメだったのかよくわからないが3軒目へ。3軒目を覗き……笑顔になって、「ここだな」と、ようやく中へと入る。

カウンターには、2人の明るい感じの女の子が座っていた。

親父は俺と共にカウンターに座る。店が狭いので、女の子の隣に座ったところでなんの違和感も持たれない。

親父はしばらくメニューを見たあと、何げない感じで隣の女の子に、

「なぁ、それ、美味いか?」

と楽しげに話しかける。のだが、この話しかけ方が、とにかく絶妙!

いやらしさがまるでないのだ。

60代で成功率80%以上を叩き出したナンパ術

女の子からすれば、ただの陽気なジジイに話しかけられたくらいにしか思われない。不快感はなく、ナンパ臭も全くしない。

そんな親父のナンパで、俺はダシに使われる。

この頃、親父は俺のツッコミをいたく気に入ってくれていた。親父が女の子に話しかけると、俺は親父に、

「いや、あんま関わるなよ」

とツッコむ。そのツッコミを利用して、親父はまた女の子に話しかける。それにまた俺がツッコむ。女の子は笑い、親父は俺のツッコミを利用して、いつの間にか自然と当たり前のように、女の子たちの会話に入っていく。

「一緒に飲もうよ」と誘うような野暮なことは決してしない。あくまで自然と、いつのまにか場になじみ、女の子たちは気がついたら親父と一緒に楽しげに飲んでいるのだ。

このナンパ術で、親父は齢60を超えているにもかかわらず、「女の子と飲む」というところをゴールにするならば、70~80%以上という驚異のナンパ成功率を叩き出していた。

そんな骨の髄までナンパの血が流れているのが、俺の実の父親だ。

女子大に潜入する手口

まぁ、そもそも親父が俺をナンパのダシに使うのは、今に始まったことではない。なんたって俺は小学生の頃から、親父のナンパのダシに使われていたのだから……。

小学1年生の頃。俺は山形に住んでいた。

ある日、とある女子大の前に親父と俺は立っていた。

親父の手には野球ボール。俺の手にはグローブ。よくあるキャッチボールをする微笑ましい親子の風景だ。

……が、ここからが全く微笑ましくない。

親父はこれでもかというほど思いっきり振りかぶる! そして、

「ウォオォオラァア!」

と、力の限り、思いっきりボールを投げるのだ。俺に……ではなく女子大に。

ボールは女子大の塀を越えて大学内に。これは親父の大暴投、というわけではない。親父の巧妙かつ狡猾な作戦なのだ。

本来、女子大は関係者以外立ち入り禁止。ただ、時代もあってか小さい子は侵入可だった。俺はボールを捜しに大学内へ。しばらくウロウロしていると、小さい子が困っているのを見兼ねてか、

「どうしたの?」

と、女子大生が声をかけてきてくれる。

「ボールが……」

と俺が言うと、一緒になって捜してくれる女子大生。やがてボールを見つけると、たいてい大学の校門まで送ってくれた。

「ごめんなぁ、うちの息子が~」

親父が俺と女子大生の方に近づいてくる。

「おわびに家まで送って行こうか?」

もうお察しだろう。これは俺をダシに使った親父の巧妙かつ狡猾な女子大生ナンパ術だ。

授業参観は格好のナンパ場

女子大生を車の助手席に乗せ、送っていく。その後、言葉巧みにトークを展開し、笑いをとり、そして連絡先を聞き出し、後々ごはんに誘うのだ。

そもそも親父は所構わず女の子をナンパする男だった。

授業参観に来たときも、カッコつけの親父は、なぜかその日、専用に髪を真っ赤に染め、坊主にし、勝負服の革ジャンを着て、教室を香りで塗り潰すほどの香水を撒いてやってくる。

そして周囲の既婚者である同級生のお母さんをナンパしまくる。

親父にとって授業参観は、格好のナンパ場だったのだ。

改めて文字にすると「本当にあった話か?」と自分でも少し疑ってしまう。ただ当時はこれが日常で俺の中の普通だったのは確かだ。

まぁとにかく俺の親父は、どんな親父より明るくて豪快で、そして何より破天荒な男だった。

そんな親父に巻き込まれ、俺は、“中学1年生にして実家で一人暮らし”という事態に巻き込まれていく。

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