AKB48を卒業し演歌の道へ進んだ岩佐美咲「秋元先生への返信を悩みました」

AKB48出身の演歌歌手、岩佐美咲が11thシングル『マッチ』を8月28日にリリース。本作も、総合プロデューサーである秋元康の書き下ろしだ。

高い歌唱力と表現力はもちろん、前作まで、デビューから10作連続でオリコン週間演歌・歌謡シングルランキング初登場1位を記録するなど、人気も兼ね備えている彼女に、3年ぶりとなる新曲への思いや、「人生を変えていただいた」と語る演歌への向き合い方などを聞いた。

▲岩佐美咲WANI BOOKS-“NewsCrunch”-INTERVIEW

実際の私はマッチなんてつけてあげない!

3年ぶりとなる新曲『マッチ』。彼女自身は、この曲をどう捉えているのだろうか?

「すごくドラマチックでステキだなと思いました。三連のリズムもおしゃれな雰囲気で大好きです。最近はマッチを見かけることも少なくなりましたが、そこをあえて曲のテーマにするのは秋元先生らしいな、と。曲中では、女性がある人を待っているけど、その人はきっと来ない。目の前にマッチがあって、なんとなくそれを擦ってみる。曲を聞いた方に、映画のワンシーンみたいな情景が浮かび上がってほしいです」

岩佐の歌唱力の高さに加えて、妖艶な雰囲気を存分に感じられる本作。レコーディングへ望むにあたり、意識したことはあったのだろうか。

「大人な雰囲気を出せるように意識しています。ファンの皆さんには、この3年間で大人になったと感じていただきたい。歌唱においては、低音を大事にしています。これまでの楽曲では、自分の中で高い声がキンキンしがちだなと思っていたので、この曲では出ないように気をつけました。

ありがたいことに、歌唱力を褒めていただけるのですが、自分自身、まだまだだと感じています。演歌や歌謡曲を歌われている方々とコンサートなどでご一緒すると、本当に皆さん歌唱力が高いので“すごいな”と思うことばかり。でも、そこで落ち込むのではなく、日々精進で頑張っています」

『マッチ』のミュージックビデオでは、スナックを舞台に、誰かを待ってマッチを擦る女性が描かれている。岩佐も歌詞に出てくる女性のように、待つタイプなのだろうか。

「えー! 待てない! 私は絶対に待てないです!(笑) じつは楽曲をいただいたときに、秋元先生から歌詞に込めた思いなどはお聞きしたんです。秋元先生は、相手の男性を待っていて、でも来てくれなくて……みたいな。ちょっとかわいそうな感じが“岩佐には合うな”と思って、この曲をくださったと思うんです。

その主人公の思いは曲に込めたつもりですが、でも、実際の私はマッチなんてつけてあげない! 火くらい自分でつけろ!ってタイプです(笑)」

2012年にデビューして以降、新曲の『マッチ』を含め11作のシングルを発表してきた岩佐。家庭を持つ男性との恋愛を歌った『右手と左手のブルース』など、悲哀の漂う曲が多くある印象を受ける。

​「そうなんですよ、シングルのなかで笑顔で歌える曲は『初酒』だけなんです!(笑) 『初酒』は、二十歳のときに“初めてのお酒”をテーマに出した曲なんですけど、生きていればいろいろあるけど、お酒を飲んで、また明日からも頑張ろうみたいな感じで明るい曲。それくらいなんです。でも、どの曲も大事な私の曲ですし、悲哀が私の魅力のひとつだと思ってもらえるなら、それもまたステキなことですよね」

新曲リリースまでの3年間の変化と成長

前作『アキラ』の発表から『マッチ』のリリースまで、3年という月日が経過した。デビューから10作連続オリコン週間演歌・歌謡シングルランキング初登場1位を記録するなど、人気を博している歌手としては珍しいブランクである。

​「大御所の方だったら、そのくらいのペースで出されることもあると思うんですが、私くらいのキャリアでリリースが3年も空く人って、あまりいないみたいで。ファンの方からも“いつ次の新曲出るの?”“もしかして、もう出さないの?”って言葉をいただいても、はっきりしたことが言えずに申し訳ないなと思ってました。3年越しにうれしいお知らせをできて、ファンのみんなも盛大なお祝いしてくれたのでホッとしました」

『マッチ』がリリースされるまでの​3年間について改めて振り返ってもらうと、共演者と関わる機会も多くなり、年下のスタッフも増えたことで、“しっかりしてきたんじゃないか”と自己分析する岩佐。何か大きく変化したことはあるのだろうか。

「もともと私は人見知りで、共演者の方と、いわゆる雑談とかをできていなかったんです。出番前も楽屋にずっとこもっている、みたいな(笑)。でも、この3年で自分がゲストを迎える立場である機会も増えてきて、ご一緒する皆さんとお話できるようになってきました。

心がけていることは、以前にお仕事した方とお会いしたら、“この前はありがとうございました!”と御礼をお伝えすること。そうすると、自然とそこから会話が広がっていくんです。これまでは、きっかけがないと話しかけたりできなかったですけど、テレビやラジオ番組のお仕事をきっかけに変われたかなと思います」

AKB48時代の同期であり、ピアニスト・タレントの松井咲子とライブハウスツアーを開催するなど、活動の幅を広げている岩佐。気の置ける松井と一緒に仕事をすることで、楽しさを知ったと語る。

「松井咲子ちゃんと一緒にライブハウスツアーをやり始めたことも大きかったです。やっぱり、いつも一人でステージをやっていたから、誰かと一緒にやるのって心強いなって改めて思いました。二人だからできることもあって、そういう楽しさを知ったんです。

咲子の好きなところ? いっぱいありますよ! いっぱいありますが、特に好きなのは、喋っても喋らなくても居心地の良さを感じさせてくれるところです。無言でも全然いいし、でも、話を聞いてほしいときは聞いてくれる。咲子は、音楽のことも専門的にわかっているから、リズムとかキーとかについて、レッスンしてもらったりしています」

曲の世界観や歌い方について、作詞をした秋元から連絡をもらうことがあると言う。今回の『マッチ』をリリースする際も、“秋元らしい”連絡を受け取った。

「秋元先生からデビュー曲の『無人駅』をいただいたとき、私はまだ17歳だったんです。そのとき、秋元先生からは“岩佐が10年、20年と歌っていけるように、大人な曲にしているんだよ”と言ってもらえて、20年後も歌っていると思ってもらえてるんだ、と感じてうれしかった。

秋元先生は、LINEの返信がすっごい早いんですけど、初めて『マッチ』をお客さまの前で歌ったときに報告したら、“幸せにやっているか?”とだけ返事が来て、これは秋元康だな~って思いました(笑)。なんてお返事するのが正解か悩んじゃいました(笑)」

演歌は私の人生を変えてくれた

水森かおりや田川寿美など、所属事務所の先輩たちから気にかけてもらうことが多いと話す岩佐。たくさんの場所でコンサートをしながら成長を続けている。『マッチ』の発売前日である8月27日には、ミュージックビデオでも共演した玉袋筋太郎のスナック「スナック玉ちゃん」でイベントを開催した。

「行く場所によって、お客さまのテンションとか年齢層が違うので、それによって歌う場所を変えたり喋ったりしています。自分のファンの方以外のお客さんがいるところも結構あるんです。そういう場所では、初めて見ていただく人たちに興味をもっていただけるように意識をしています。新曲『マッチ』発売日のイベントを、玉袋さんのスナック『スナック玉ちゃん』でやったのですが、すごく楽しかったです」​

プライベートでは、ペットとして飼い始めた犬の「たまちゃん」を幸せにすることが生きがいと語る岩佐。今後、やってみたい仕事について聞いてみた。

「一度、演歌ミュージカルっていうのをやらせていただいたことがあるんです。演歌のカバーを、物語に合わせて歌ったりって感じで、やっていて楽しいなって思いました。自分が歌手っていうことを活かせるなと思ったので、そういうことはもっとやっていきたいですね。

やっぱり、ファンの方と接するのもすごく好きだし、自分の歌を好きと言ってもらえるのがうれしい。自分自身も歌を聴くことは好きだから、そういう歌から貰えるパワーみたいなものを、ファンのみんなに与えられていたらいいなあって。あとは、たまちゃんを養うために頑張りたい」

▲愛犬「たまちゃん」のために頑張りたい!

人気と努力を糧に演歌を続ける岩佐。演歌界でやってみたいことついて展望を聞いたところ、『演歌男子。』という番組の名前をあげた。『演歌男子。』とは、演歌・歌謡曲界隈で活躍する若手男子らによるバラエティ番組で、番組発のライブを開くほどの盛り上がりを見せている。

「『演歌男子。』みたいな感じで、“演歌女子”も盛り上がったらいいなあって。それくらいの年齢層で演歌をやるっていう、女性演歌歌手も盛り上げていきたいです」

デビューしたての頃は、演歌や歌謡曲に関する知識が少なかった。しかし、歌っていくうちに数多くの名作に触れ、今では実力と人気を兼ね備えて演歌歌手としての活動を続けている。最後に、岩佐にとって演歌とは? を聞いた。

「演歌の独特なメロディラインがすごく好き。演歌は本当に良い曲ばかりですが、原田悠里さんの『津軽の花』が特に好きです。歌もいいんですけど、その歌を歌っているときの原田悠里さんがすごく可愛くて!

演歌は、私の人生を変えてくれたものです。演歌をやってなかったら、こうして歌を続けていられたかどうかもわからない。演歌があるから、こうして今も活動できているって思います」

岩佐美咲はデビューしてから12年間、演歌に向き合い続けている。​もともとは誘いを受けて始めた演歌の道。しかし、いつしかそれはライフワークとなっていった。演歌とファンのことを第一に思いながら、新たな挑戦を続ける岩佐に注目したい。


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