話題の漫才師・センチネル「ロング缶を飲みながらフジテレビを見上げた日々」
有吉弘行、劇団ひとり、土田晃之、アルコ&ピース、タイムマシーン3号……数多くの人気芸人が所属する太田プロに、ブレイク間近のお笑いコンビがいる。センチネルだ。
「トミサットがウガンダ人とのハーフ」という、ツカミにはバッチリな特徴がある彼らだが、センチネルはそれを武器とはしていない。ただただ面白い漫才で、太田プロの事務所ライブ『月笑2023クライマックスシリーズ』優勝、『マイナビ Laughter Night』月間チャンピオン、『ツギクル芸人グランプリ2024』ファイナリストなど、賞レースで実績を残してきた。
今回、ネタのみならず、フジテレビの若手ユニット番組『深夜のハチミツ』にも出演中と、波に乗っている彼らにニュースクランチ編集部がインタビューした。
居酒屋のゲームで意気投合してコンビ結成
――もともと違うコンビで活動したのち、2020年に結成したセンチネルさん。具体的に、どういったやりとりがあってコンビを組んだのですか?
大誠:お互い、前のコンビを解散したタイミングがちょうどコロナ禍で、緊急事態宣言明けに久しぶりに飲みに行くことになったんですよ。
トミサット:行ったのが、地方料理とボンバーマンが楽しめるお店で。
――どういうお店ですか?(笑)
トミサット:ボンバーマン側に許可を取っているのかはわからないですけど(笑)、居酒屋でボンバーマンが遊べるっていう。
大誠:僕らがお笑いの話をしていたら、横のカップルが「芸人さんですか?」と声をかけてきて、2対2でボンバーマンをやることになったんです。僕らは初めてボンバーマンをやったんですけど、そのカップルに完封勝利して……息が合いすぎていたんで、「じゃあコンビを組むか」って。
――(笑)。実際にネタ合わせしてみていかがでしたか?
大誠:トミサットがストイックすぎて、初舞台前に「“どうも〜!”って出ていくときのキーが違う」って20回ぐらい練習させられました。ようやくOKが出たあと、舞台に出たら、こいつが1ページ分、台本を飛ばしたんです。
トミサット:(大誠の)「どうも〜!」が良すぎて……。
大誠:「“どうも〜!”が良すぎて、トミサットがネタを飛ばした」というのが、初舞台の思い出ですね。
――(笑)。そんなトミサットさんはウガンダ人とのハーフ。そこを押し出してはいないそうですが、それでもハーフ芸人特有のエピソードを求められるのでは?
トミサット:そうですね。僕はアントニー(マテンロウ)さんの流派なんですよ。八王子出身だし、1学年に1ハーフいて、さほどイジられもせずに育っちゃったんで、エピソードもないんですよね。
――ハーフ芸人の方って、何かと求められるので困りますよね。
トミサット:世間はハーフ芸人に飽きてんのに、メディアではハーフ芸人の1個目(のエピソード)を求められるじゃないですか。そこがすごくジレンマです。実際やり続けたら“ほら飽きてんじゃん!”みたいな……。もちろん聞かれることが多いので、用意しなきゃいけないんですけどね。
――トミサットさんは、若手芸人のホセ(豆鉄砲)さんと、コモダドラゴン(ポテトカレッジ)さんと同居中。芸人シェアハウスならではのエピソードも多そうですが、一緒に暮らしてみていかがですか?
トミサット:楽しいんですけど、“誰かが人のものを食べた”とかで喧嘩が絶えないです。絶対に誰かが誰かのものを食べているのに、最後まで白状しない。平和的に解決せずに終わりますね(笑)。
――日々、小さい喧嘩が繰り広げられているんですね。
トミサット:前にコモダさんにお金を貸していたことがあって。どうしてもエッチなお店に行きたかったらしく……「返せ」と言ったら、「いや、返したくない。俺の金や!」と喧嘩になったことがありました(笑)。その後、コモダさんが俺のことを突き飛ばして、裸足でベランダから逃げて……。それから4日間、帰ってこなかったです。
――(笑)。
トミサット:(コモダの)相方のきよちゃんが、お母さんみたいに、ふてくされた顔をしたコモダさんを連れてきて「早く謝って!」って。で、コモダさんが謝って仲直りするみたいな。そういう気持ち悪いことをやっています。お金の貸し借りだとか、友人関係でよくないことは全部やっていますね(笑)。
大誠:僕、ホセと地元のバイト先が一緒で、昔からの知り合いなんですけど、あの家にまともなホセが入ったのは、かなりデカいというか。側から見ていると、潤滑油になっている気がします。
トミサット:たしかに、ホセは家の常識を作ってくれています。規律を正してくれていますね。
最近やっと食っていけるようになりました
――大誠さんはラグビーで埼玉選抜キャプテンの経験があります。ラグビー仕事もしていきたい気持ちはあるんですか?
大誠:めちゃくちゃしたいです! ただ、吉本にラグビー芸人のしんやがいるので、あいつとの戦いになるのかなと思います。もし番組があったら、しんやにはボケてもらって、僕はガチの説明側にいければなと思いますね。あと、元コック見習いなんで、料理系の仕事もガンガンしていきたいです。
――大誠さんはバイトを辞めていて、「月笑」の賞金で滞納していた家賃を払ったとお聞きしました。それ以降は払えているんですか?
大誠:年末に家賃が払えなくなって、退去の手続きも進めていたんですよ。長期滞在できる漫画喫茶に住もうと思って、荷物を運んでいたところだったので、優勝できてよかったです。そのあとは、別の大会で優勝した賞金とか、まだ入っていなかったギャラで、どうにか払えていますね。
――トミサットさんも生活はできているんですか?
トミサット:3人で暮らしているので、欲をかかなければ生きていけるというか……。後輩とガールズバーに行っちゃうので、それでお金が飛んじゃいますけどね。
大誠:それは欲をかいてんじゃないの?
トミサット:欲をかいちゃうから、結局は生きていけないんですよね(笑)。
――初めてお二人のことを知った方のために、センチネルの魅力を教えてください。
大誠:ネタを書いていないほうが言うのもあれですけど、ネタが面白いコンビだなと思ってもらいたいです。まだ単独ライブをやったことがないんですけど、ハーフ芸人さんが単独ライブをやると一辺倒になりそうなところを、それがない良さがあるのかなと思います。
トミサット:魅力は人間味ですかね……。
大誠:トミサットは人間味というよりもボケです。逆に言うと人間味はなくて、全部お笑いにしちゃうというか。
トミサット:違うよ? 本当に人間味があんだよ。逆にお前みたいなヤツが一番、人間味がないんだよ。
――(笑)。
トミサット:ただ、今の時代には少ないと思うんですけど、テレビスターにまっすぐ憧れているので、そこは珍しいのかなと思います。
――今度は、お互いに魅力的だと思うところを言い合ってほしいです。
大誠:トミサットはお笑い能力っすね。面白さ、ストイックさ、全部をお笑いにしようとするメンタルの強さがあります。
トミサット:大誠のいいところ……ちょっと待ってくださいね。
大誠:こういうのはスピードなんだよ。「でかい」とかでいいんだよ。
――(笑)。
トミサット:声がめちゃくちゃ良いので、大誠の声にはだいぶ支えられていると思います。僕は滑舌が悪くて、玉突き事故が起きることがあるんですけど、失敗したときも大誠の声でカバーしてもらうことが多いです。
今年の賞レースは過去イチの手応え
――近年、大型の賞レースで名を連ねているセンチネルさん。結果を出すために取り組んできたことはありますか?
大誠:毎月、新ネタを4本おろすライブをやっていますね。
トミサット:「片っ端から上の先輩を呼び、緊張する場でネタをして、漫才の精度を上げていく」というライブなんですけど、それをやり始めてから、ちょっと良くなった気がします。去年からやってきて、今年の8月で一旦終わらせるんですけど。
――8月で終わらせたのは何か意図があったんですか?
トミサット:『M-1グランプリ』の予選中に、新ネタライブをやるのがめんどくさくて(笑)。
大誠:賞レースで出すネタを叩く(調整した)ほうがいいっていう考えだと思います。
――あえて先輩を呼んで、緊張する場でネタをやるって珍しいですよね。
トミサット:同期だと楽しいので緩くなっちゃうんですよね。ライブシーンで知ってもらえるようになってきたからなのか、話したことのない先輩でもオファーをしたら来てくれることが多いです。
大誠:本当に先輩方は優しいです。
トミサット:人情がありますね。「自分もそういうときがあったから」って来てくれます。
――すでに『M-1』の予選がスタートしています。今年こそは! という気持ちではないでしょうか。
大誠:そうですね。調子こいてるとかじゃなくて、2年ぐらい前から先輩に「今年はいける」と言ってもらえていましたし、去年、初めて3回戦に行けたので、今年はさすがに良い成績を残したいですね。
トミサット:『ツギクル芸人グランプリ』とか、呼んでもらったライブのおかげで、センチネルのスタイルを認知してもらえているというか。全国的にはまだまだなんですけど、『M-1』のお客さんには知ってもらえていると思うので、良い具合に行けるんじゃないかと思います。今年は過去イチの手応えがありますね。
――現在、『深夜のハチミツ』のメンバーとしても活躍中です。出演してみていかがですか?
トミサット:先輩後輩含めて、“ここで売れるぞ”というヤツしかいないのでエグいですね。たとえば“誰かが沈黙したときに言おう”と思ったことも、思いついた瞬間に言わないと、流れてすぐ次の展開に行っちゃう。スピード感がすごいです。
――大誠さんは「ユニット番組でのツッコミ」というポジションです。他のコンビのツッコミもいますし、なかなか難しいのでは?
大誠:そうですね。そもそも、今のお笑い界はツッコミがボケることが多いので、まっすぐツッコミを入れることが、今の時代に合っているのかわからないんですよ。ただ、まっすぐならではの出方もあるだろうし、出なきゃいけないなとは思っています。まだ模索中です。
――ネタ以外での「テレビのお仕事」について、どんなことを感じていますか?
大誠:別にうまくいったことなんてないんですけど、“頑張ろう”という気持ちになります。テレビの仕事に出させてもらうと前向きになれるんですよ。昔は仕事ゼロだったし、どうすれば売れるのか、何をしたらいいのかわからなかったんですけど、目指すものが見えると頑張れる。今のところスタジオで太ってるだけの日もありますけど(笑)。
トミサット:『めちゃイケ』とか『はねトび』とか、昔から若手のユニット番組が好きで出たいと思っていたので、本当にうれしいです。ただ、いざ出てみると、鼻をほじりながら見ていたテレビも、裏にはいろんな努力やいろんな思いがあったんだな、と痛感していますね。
大誠:別に鼻ほじってなくていいけど。
――(笑)。
トミサット:昔、大門でバイトしていたんですけど、帰り道にフジテレビが見えるんですよ。そこでロング缶を飲みながらデカい球体を見て“フジテレビに出てえな〜!”と眺めていたんで、いま自分たちがその中にいるのはめちゃめちゃ感慨深いです。
目標の場所にいるからこそ慢心せずにいたいですし、今は事務所のおかげとか、若手だから出させてもらうことも多いので、“センチネルじゃなきゃいけない”というステージに早く行きたいです。
大誠:「センチネル」というものに説得力がほしいですね。
(取材:浜瀬 将樹)
09/06 12:00
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