研ナオコ アタシたちの年齢になると過去を振り返ってふさぎ込む人がいる。でもまずはそこまで頑張ってきた自分を褒めてほしい【2023年編集部セレクション】

研さん「日々をしっかり生きていることが大事なの」(写真:『70歳、すっぴん人生』より)
2023年下半期(7月~12月)に配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします。(初公開日:2023年8月16日)


高齢化社会をむかえ、「これから先の人生、どう生きていけば良いのか」「悔いのない人生を送るには何をすれば良いのか」など悩みを抱えている方は少なくありません。歌手、タレント、女優とマルチに活躍する研ナオコさんは今年、満70歳を迎えました。そんな研さんが提案する、これからの人生を楽しむコツとは。研さん「日々をしっかり生きていることが大事なの」と言っていて――。

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【写真】愛犬を抱っこして満面の笑みの研さん

「人生そろそろ終わり」だなんて言っている場合じゃない

「終活」ってあんまり考えたことないんです。

アタシと同世代の方々にとっては当たり前のことみたいですけど、どうしても実感が湧かない。こう見えても一流芸能人(笑)だから、けっこう先までスケジュールは埋まっている。

ソロコンサートもあれば、梅沢富美男さんとの舞台もあるし、テレビの収録、映画の撮影やら、やらなければならないことが目白押し。

舞台やコンサートは本番の日だけが仕事ではないですからね。当然お稽古をしなければいけないし、リハーサルもあるわけです。

面倒で大変なことばかりだけど、生き抜くことが大事

時間なんてあっという間に過ぎていってしまう。けっこう売れっ子じゃん(笑)。だから終活なんて考えるヒマもない、って……イヤイヤ、休みの日には一日中ボーッとしてたりするでしょ。でも、休めるときは徹底的に休まなきゃダメですよ。普段から忙しい人ほど何も考えない時間が大事なの。

そんなこんなで終活なんですけど、アタシの場合、今は健康で働くことができるからあまり考えないんだと思う。動けなくなったら終活を始めるかもしれませんね。

『70歳、すっぴん人生』(著:研ナオコ/Gakken)

とはいえアタシの場合、普段から周りの人に迷惑だけはかけないようにって心がけていますから、たった今死んだとしても周りがバタバタすることはないと思っています。

終活に否定的なわけじゃなくて、日々をしっかり生きていることが大事なの。生きていればいろいろ面倒なことに直面するけど、それでも自分の人生を生き抜くんですよ。

今まで生きてきた自分の人生を否定しない

人生の節目節目で記念のイベントをやることがありますよね。アタシも45周年のときはコンサートをやりました。

50周年のときは残念ながらコロナ禍ということですべて中止になってしまいましたが、一応予定はしていました。

でも以前はそういう節目節目で何かをすることってなかったんですよ。アタシ自身がそういうことにあまりこだわらないタイプだったからなのかもしれませんが。

「**歳になったから、生まれ変わったつもりで頑張ります!」みたいに言う人もいる。その気持ちはわからなくはないし、悪いことではないですよね。

でもふと思うのは、そのトシまで生きてきた自分を否定してまで生まれ変わりたいのかな? ってことなんですよ。

「否定」という言葉が適当でなければ「無視」するとでも言えばいいのか……それじゃかわいそうじゃん、って思っちゃうんです。

仮にそれまでの人生が間違っていたとしても、そこまで頑張ってきたその人の人生は、まぎれもなくその人自身の人生ですし、それは続いていくものなんです。

過去があったからこそ今の自分があるし、当たり前ですけど過去の自分は今の自分とつながっている。

アタシたちの年齢になると過去を振り返って忸怩(じくじ)たる思いになる人も少なくないと思うけど、そうふさぎ込まず、まずはそこまで頑張ってきた自分自身を褒(ほ)めてあげてください。

日本人女性の平均寿命は長い

アタシたちの業界には定年というものがない。役者であれば年を重ねれば重ねるほど、味わいのあるお芝居ができるでしょう。

歌手も声が出る限りは歌い続けて、若いころには表現できなかった「人生の深み」のようなものを歌うことができるようになる。

だから健康でいるあいだは常に現役なんです。

でも例えば会社員の方々の場合、会社を定年退職したらいったん終わり、なんて思われたりするみたいですね。いきなり現役感がなくなるんですよ。隠居して孫と遊ぶことが楽しみだ、みたいになっちゃう。

別にそれが悪いとは言っていませんよ。でもね~、なんかもったいないじゃありませんか。仮に65歳で退職して80歳まで生きたとしても残り15年、いろんなことができますよ。

例えば15歳の少年が15年すれば30歳になるわけでしょう。そのあいだにどれだけ多くの楽しい経験をすることになるんでしょうか……そう思うとワクワクしませんか?

「それは若かったからなんでもできただけの話。65歳からの15 年とは違うよ」なんていうのが何かを始めようとしない人の言い訳。常に後ろ向き……そういうのはダメですよ。

ちなみにアタシが舞台で大腿骨を折ったのは64歳のとき。舞台に立ちたい一心でリハビリを頑張った。そのおかげで今でも舞台に立てるし、スキューバダイビングもできる。

あそこで後ろ向きになっていたらと思うと空恐ろしくなりますよ。

※本稿は、『70歳、すっぴん人生』(Gakken)の一部を再編集したものです。

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