俳優・冨永愛の生みの親『グランメゾン東京』秘話。キャスティングが難航するなか、実は木村拓哉さんが「彼女なら」と…
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【写真】ドラマ『グランメゾン東京』でリンダ・真知子・リシャール役を演じた冨永愛さん
間違えることに臆病にならない。失敗は覚悟のうえだ
俳優・冨永愛の生みの親、『グランメゾン東京』
実を言えば、俳優の仕事は20代の頃からちょこちょこやっていた。
でも私は、あくまで自分をモデルだと思っていた。
たまにドラマに出演することがあっても、自分を俳優だとは思えなかったし、そう思うことがおこがましいと感じていた。
ましてや、そこで評価を得られるなんて想像していなかった。
私の意識が大きく変わったのは、2019年のドラマ『グランメゾン東京』だった。
地上波ドラマの経験はなかったから、オファーがきたときは心底驚いた。
リンダ・真知子・リシャールという役
のちに、もっと驚くべきことを知る。
私が演じるリンダ・真知子・リシャールというジャーナリストの役は、キャスティングが難航したらしい。
そんななか、「彼女なら、座っているだけで国際的なジャーナリストに見えると思う」と木村拓哉さんが言ってくださったと聞いた。
こんな運命があるのかと心が震えた。
しかもキャストはとんでもなく豪華だ。木村拓哉さん、鈴木京香さんをはじめとする確固たるキャリアも人気もある方々ばかりがズラリ。
そこに突然、冨永愛。
そのときの心境はただひと言、「やばい…」。
37歳、本気のレッスン
現場では改めて、自分がド新人だと実感した。だからこそ本気でがんばろうと決めた。
いままでだって本気だったけれど、本気のレベルを変える必要がある。
撮影と並行して、演技レッスンにも通い続けた。
演技レッスンは過去にも受けたが、37歳の本気のレッスンはいままでとは違った。
縁があって出会ったキム・ジンチョル先生のレッスンを受ければ受けるほど、その意図が腑に落ちていった。
たとえば悲しい演技をするとき「悲しい感情を演じよう」と思っても、感情に入り込めないこともある。
そんなときは身体行動から感情を動かすことが大事だと教えてもらった。
いきなり悲しい感情をつくることはできなくても、ずっとうつむいて、頭を抱えていたら、いやでも気持ちは暗くなっていく。胸がしめつけられ、涙さえ出てくる。
その段階に体をもっていって初めて、感情を動かす演技ができる、という演技の方法だった。
演じる役の生い立ちを知り、どんな人に囲まれて生きてきたかを考えることも重要だ。
どんなふうに笑うのか、コーヒーを飲むとき、どうカップを持つのか、行動を積み重ねていくことで、人物像が浮かび上がってくる。
演技っておもしろい。そう気づいた37歳の「デビュー」だった。
失敗を恐れなくていい
とはいえ、どんなに準備を重ねても、うまくいかないことはたくさんある。
みなさんの演技は完璧なのに、私のNGで「やり直し」になると申し訳ない気持ちになるし、悔しい。
それでも、映画「世界の終わりから」に出演したとき、紀里谷和明監督に「間違えることに臆病になるよりも、思いっきりやってみて。失敗を恐れなくていい」と言っていただいた。
安心した。
どんな世界でもそれは同じ。失敗を恐れてビクビクしていても、よいものはできない。
本番になったら、自分ができる最大限のことをする。それは俳優でもモデルでも同じだ。
結果、「冨永さんは、度胸あるねえ」とほめていただいた。
そんな「俳優・冨永愛」の生みの親でもある『グランメゾン東京』が、2024年冬にスペシャルドラマとして帰ってくる。
あれから5年、私たちがどう成長したのかも見てほしい。
※本稿は、『冨永 愛 新・幸福論 生きたいように生きる』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
08/15 12:30
婦人公論.jp