川田利明が経営するラーメン屋の今。「物価高で固定費が1.5倍に。両替の手数料まで…工夫のしようがないからみんな潰れている」

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
「プロレス四天王」の一人として活躍した川田利明さんは現在、東京都・世田谷区のラーメン屋「麺ジャラスK」の店主です。「開業から3年以内に8割が潰れる」ともいわれる厳しいラーメン業界で経営を続け、2024年6月で開店から15年目を迎えました。しかし川田さんは、「ラーメン屋は絶対にやらないほうがいい」と語っていて――。今回は、川田さんの著書『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』から一部引用、再編集してお届けします。

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【写真】川田利明「今年(2024年)6月で店を経営してから丸14年が経つ。このままいけば15年目に突入することになるが…」

体も店の経営もますますボロボロになった

2019年9月、単行本(『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学』ワニブックス)を出版した。

ラーメン屋を経営しているのに、「ラーメン屋は経営しないほうがいい」という内容の変わった本だから反響はあったし、「2ちゃんねる」の元管理人・ひろゆき氏が動画で褒めてくれたとも聞いている。

その動画では、将来はラーメン屋を経営したいという中学3年生からどういう経験を積めばいいかと聞かれ、ひろゆき氏はラーメンの作り方ではなく「経営を勉強しなさい」という返答をしていたらしい。

本当にそのとおり。この指摘はすごく正しい。

麺ジャラスK

2010年6月、東京都世田谷区に「麺ジャラスK」をオープンした。

今年(2024年)6月で店を経営してから丸14年が経つ。

『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(著:川田利明/宝島社文庫)

このままいけば15年目に突入することになる。

単行本を出版してから4年半経ったけれど、当時よりも俺の体は間違いなくボロボロになっている。

右膝は2002年の試合で大けがを負ってから古傷になっていたのだが、昨年からは元気だったはずの左膝も痛み出した。

一日中ずっと立ちっぱなしの仕事だから、営業後に翌日の仕込みをして自宅に帰る頃には膝が痛くて曲げられない。

おまけに坐骨神経痛で両脚全体がしびれているから、しゃがむのも一苦労な状態だ。

昨夏、アメリカのプロレス団体「AEW」のイベントに呼ばれ、久々に渡米した時に現地でかなり歩いたことがいけなかった。

それで余計に悪化したね。まさか左膝も悪くなるとは思っていなかった。

コロナの影響

体もボロボロの上に、売り上げも減った。

単行本を出版した翌年、2020年春には新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた。

お客さんの数自体も激減したし、感染防止のために20席あったテーブルのレイアウトを変えて8席に減らしたから、売り上げは単純計算でも3分の1になった。

ランチ営業ではメニューをラーメンと唐揚げに絞るなど仕入れの量を抑えても、経営はいよいよ厳しくなった。

特に夜はお客さんが来ない。だから、開店当時は深夜2時までだった営業時間は段階的に切り上げていった。

最初は21時をラストオーダーにして22時閉店に。そして今は20時30分をラストオーダーにして21時には店を閉めている。

うちだけじゃなくて、多くの飲食店では、新型コロナの時期にしていた「早じまい」を今も続けているのではないだろうか。

コロナの影響は間違いなく今も尾を引いている。

小銭の両替

昨年からは物価が高騰して、食材の仕入れ値が全部値上がりした。

輸入品は特に高くなったし、ものによっては倍の値段になった。

揚げものに使う油も倍ぐらい値上がりしたから、看板メニューの唐揚げにも工夫が必要になる。

本当はいつも同じような商品を提供したいけれど、ハンバーグ風唐揚げやメンチ風唐揚げにしたりと知恵を絞っている。

でも、どんどん仕入れ値は上がっていく。

この物価高の中で、ラーメン屋はみんな工夫のしようがないからたくさん潰れているんだと思う。

電気、ガスの光熱費も上がって、うちの店も固定費は2020年以前と比べると、1.5倍にはなっているね。

両替の手数料も高くなった。

銀行で10円硬貨を500枚両替するのに400円もかかるようになり、なるべく10円硬貨が出ないようにメニューの料金を改定させてもらった。

たとえば、看板メニューの「カレー白湯ら~めん」は以前は普通盛りが850円、大盛りが950円だったけれど、大盛りを標準にして1000円にした。

小銭の両替が経営に影響するなど、開業当初は露ほども思っていなかった。

※本稿は、『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島社文庫)の一部を再編集したものです。

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