元フジアナ・吉崎典子インタビュー(1)「60歳で定年退職、嘱託で局に残らなかったワケ」

吉崎典子

「おはよう!ナイスデイ」をはじめ、フジテレビの情報、報道番組のMCを長きにわたって担当してきた吉崎典子(63)。2021年に同社を定年退職し、現在はフリーアナウンサーとして活動している。古巣での充実した日々に想いを馳せ、現在地の「今」を語る―。

 色々な人に出会い、様々な場所に行きましたね。

 特に88年のソウル五輪、92年のバルセロナ五輪に行かせてもらったのはいい思い出です。バルセロナでは柔道の古賀稔彦さんを取材しました。練習中にケガをしてしまい、本当に張り詰めた雰囲気だったのですが、見事に金メダル獲得。その瞬間に立ち会えた。スタッフみんなで感激して泣きましたね。

 私の同期は、寺田理恵子さん、三竹映子さん、川端健嗣くん、吉沢孝明くんです。今も時々、集まってますよ。フジのアナウンス室ってすごく仲がいいんです。先輩の家に泊まりに行くこともありましたし、クリスマスイブに行き場のない女子が集結してごはんを食べに行ったこともありました。居心地がよかったから(定年まで)辞めなかったのかもしれませんね。

 38年フジひと筋だったのですが、29歳の時に一度だけ、ちょうど「ナイスデイ」が終了したタイミングで他局の方から「フリーにならないか」と声をかけていただいたことがありました。「番組を用意する」とまで言われたのですが、「ナイスデイ」と同じ時間帯で、番組が終わったとはいえ、不義理はしたくなかった。仲のいい先輩のアドバイスもあって断りました。

 その後は、50歳でアナウンス室から他部署へ異動。字幕放送の部署で、億単位の予算を扱う仕事でした。でもスキルがまったくないので、50歳の新人OL状態ですよ(笑)。慌ててExcelを習いに行き、1年で仕事に慣れてきたなと思っていたら、次の部署に異動となりました。

 近々、育休明けで4年半ぶりに後輩の戸部(洋子)さんが仕事に復帰するのですが、彼女は希望を出してアナウンス室ではなく他部署へ行くそうです。彼女とは「てんこさんが異動された時にパソコン教室に急遽行かれたって話を思い出しました。頑張ります」ってLINEでやりとりしました(笑)。


──アナウンサー職のみならず精力的に働き、大好きな局で定年退職を迎えた。そのまま社に残るはずだったというのだが‥‥。


 実は65歳までフジで働く予定でした。実際に人事とも話をしていて、嘱託になることで話は進んでいたのですが、急に「何かひとつ、新しいことをやりたい!」って思いが強く出てきてしまって─。65まで働いてから何か挑戦できるかなと考えたら、そのエネルギーが残っているかどうか疑問を感じて、だったら60の今だってなりました。

吉崎典子(よしざきのりこ)1984年、フジテレビ入社。「おはよう! ナイスデイ」「報道2001」「FNNスーパーニュース」など主に報道・情報番組で活躍した。歌舞伎への造詣も深い。2021年の定年退職後から「私の正論」(ニッポン放送)で司会を務めている。「婦人画報」でコラム「吉崎典子の歌舞伎耳寄り話」も執筆。

(つづく)

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