「激しいライヴは間もなく卒業」HYDEが坂本冬美に明かした今後の展望、20代の“尖りエピソード”も【同郷レジェンド初対談】

 

 今をときめく目黒蓮を皮切りに、毎回、意外な相手とトークを繰り広げる坂本冬美のモゴモゴSPECIAL第7弾は――史上最大のまさか! L’Arc~en~CielのHYDEが降臨。2人はいったいどんな関係!?

 

坂本 約5年ぶりとなるオリジナル・アルバム『HYDE[INSIDE]』(10月16日発売)と、その後に続くワールドツアーの準備でお忙しいなか、お越しいただきありがとうございます。

 

HYDE(以下、H) 僕のほうこそ、呼んでいただき光栄です。和歌山県出身の先輩にお会いできるのを楽しみにしていました。

 

 

坂本 そこです。わたしがずっと疑問に思っているのは、そこなんです!

 

H えっ!?

 

坂本 HYDEさんって、彫りが深くてきれいなお顔をされているじゃないですか。でも和歌山の人って、わたしのようにべたーっとした顔の人が多いんですよ(苦笑)。

 

H 言われてみると確かに……親戚にいたような気がします(笑)。めっちゃ和歌山を感じます。

 

坂本 でしょう? ほら、そうなんですよ。だからね、最初に、HYDEさんが和歌山県出身だとお聞きしたとき、思わず「嘘やん!?」って叫んじゃったんです(笑)。

 

H 坂本さん=和歌山。和歌山県民で、知らない人はいない坂本さんにそう言っていただけるのは嬉しいですけど……。でも僕、生まれも育ちも和歌山で、今も本籍は和歌山のままですから(笑)。

 

坂本 とんでもない。いまや和歌山のスターといえば、世界を舞台に活躍されているHYDEさんです。もうすぐ、ワールドツアーがスタートするんですよね。

 

H はい。10月から11月までで台北、香港、ソウル、上海、成都、北京、ニューヨーク、ロサンゼルスをまわってきます。

 

坂本 アメリカは時差があるから大変ですね。

 

H 僕はちゃんと寝ないとだめだと思っているので、世界中どこに行っても、まず大事にしているのは寝ること。

 

坂本 国によってお客様の反応も違うと思いますが、いちばん盛り上がるのはどこ?

 

H 南米ですね。ブラジル、チリ、アルゼンチン……南米の人は皆さん日本人が大好きで、異常な盛り上がりのなかで歌っていると一瞬、自分がビートルズになったような錯覚を覚えるくらい(笑)。今でも忘れられないのが、ブラジルでのライヴを終えて会場からバスで移動していたとき、一人の女のコがずっとバスを追いかけてきて――。

 

坂本 自分の足で走って?

 

H そうです。自分でも追いつけるとは思わないまま走っていたと思うんですけど、たまたまバスが赤信号で停まったものだから、追いついちゃったんです。

 

坂本 で、どうしたの?

 

H その女のコが、追いついたのはいいけどどうしていいかわからないという表情を一瞬した後、バスの窓にチューしたんです。

 

坂本 かわいい~~~~っ!

 

H ですよね。信号が青に変わって、女のコをその場に残したままバスは走りだしたんですけど、その女のコのことは、きっとこの先も忘れないと思います(笑)。

 

■「昔は練習すること自体カッコ悪いと思っていた」

 

坂本 所変われば――とは言いますが、さすが南米。

 

H ライヴが始まる前も、日本のファンは静かに開演を待っていますが、ヨーロッパやアメリカなどでは、始まる前からみんなが大きな声で歌っていますからね。

 

坂本 でも、HYDEさんのコンサートは、みんないきなりスタンディングでしょう?

 

H ソロとラルク(L’Arc~en~Ciel)では、やっていることが全然違うので、ひと括りにしてこうとは言えないんですけど、ひとつだけはっきりと言えるのは、今がいちばん自由に楽しくやれているということです。

 

坂本 デビュー当時よりも?

 

H 僕はほかの人と比べて、成長スピードが遅いんだと思います(笑)。何かひとつのことをやろうとしたときに、こうやったらおもしろくなるだろうと考え始めたのも、どんな準備が必要で、どう行動すればいいのかを考えるようになったのも最近ですから。それに20年前に気がついていれば、と思いますけど(笑)。

 

坂本 それは、わたしも思います。

 

H 反省をこめて、ときどき自分に問いかけるんです。「20年前からちゃんと歌の練習していたら、お前はもっとすごいアーティストになっていたんやないか!?」って(笑)。

 

坂本 20年前から練習していたら……ということは、もしかして若いころは練習していなかったってこと?

 

H はい(笑)。テレビで歌うときは特にそうでしたね。そもそも、テレビに出ること自体が照れくさいような恥ずかしいような感じがありましたし、練習するのはカッコ悪いと思っていたんですよ。

 

坂本 練習する姿を見せるのがカッコ悪いと思っていた、ということですか?

 

H 練習すること自体がカッコ悪いと思っていたんです。ロックは練習したらあかん、練習って何? みたいな。そういうアホなことを大真面目に思っていましたから(笑)。

 

坂本 今もそう思っていらっしゃるわけじゃないですよね。

 

H 大丈夫です。今はきちんと練習しています(笑)。

 

坂本 変わったきっかけは、何かあったのですか?

 

H テレビで歌うときは、新曲を歌うことが多いんですけど、歌詞もまだろくに覚えていないうえに練習もしていないし、歌い慣れていないから、結果、音を外すことが多くなって。バンドのメンバーにも申し訳ないし、自分自身“ダセェな”と思うようになったあたりから徐々にですね。

 

坂本 練習していないと不安でしょうがないわたし的には、ちょっと考えられないんですけど……HYDEさんは、練習しなくても一発でパーンと声が出るタイプの人ですか?

 

H そうでもないです。なんとなく体が温まってきたら、声を出してみて――という感じですね。

 

坂本 喉はお強い?

 

H めちゃめちゃ強いと言われます。

 

坂本 あれだけの爆音の中で、その音に負けないように、ぐわ~~~~~~~っと声を出して歌っていらっしゃるんだから、喉も当然お強いとは思いますが……。

 

H でも、ロックバンドのボーカルで喉にポリープができる人ってけっこういるんです。

 

坂本 喉のチェックはされていますか?

 

H はい。いつか自分もポリープできるんかなぁと思いながら、定期的に診ていただいています。今のところきれいだと言われますが、いつかできるかもと思うと、ちょっと怖いです。

 

坂本 喉のためにケアされていることは?

 

H 特別なことはしてません。唯一やっているのは、寝るときに加湿器をつけることですね。どこに行くときも、加湿器だけは持って行きます。

 

坂本 わたしは寝ている間、口呼吸にならないように、いびき防止用テープを貼って、その上からマスクをして寝ています。

 

H え~~~~っ、マスクですか!? それはすごい。でも、息苦しくないですか?

 

坂本 苦しいです(笑)。10年以上続けているので慣れましたけど、たまに寝相が悪くてマスクが外れているときがあって。そういうときは、喉の調子がおかしいんですよ。

 

H 喉は、ほんのちょっとしたことで変わりますからね。

 

■「最近までほぼ毎日1年360日くらい飲んでいた」

 

坂本 雑誌のインタビューで、お肌の手入れはワセリンだけとおっしゃっていましたけど、本当にそれだけですか?

 

H 本当です。メイクをしなければいけないときも、下地はワセリン。落とすときもクレンジングはワセリン。肌を保湿するのもワセリンです。

 

坂本 本当に!?  誰にも明かしていない、秘密の方法があったりしませんか?

 

H ビタミンを補うために、サプリメントを飲んだりすることはありますけど……それくらいですね。

 

坂本 それでその美しさを保っているのは、すごいを通り越して驚異です。

 

H 坂本さんだって、お美しいじゃないですか。

 

坂本 気を使わなくていいですから(笑)。食事のほうは?

 

H 以前は一日、夕食の1回だけでしたが、今は1.5回ですね。

 

坂本 1はわかりますけど、0.5というのは?

 

H 朝はご飯なしで、納豆と味噌汁を食べるので、それが0.5です。

 

坂本 そのぶん、夕食はガッツリ食べる? ご飯を大盛りで2、3杯とか?

 

H 夜はお酒を飲むことも多くて、ご飯はあまり食べないです。

 

坂本 お酒は毎日?

 

H 最近までほぼ毎日、1年360日くらい飲んでいて、お酒がないと生きられないんじゃないかと思っていたんですけど(笑)。最近は、健康のために少し減らして……今のペースでいくと、今年は150日前後まで減りそうです。飲まなきゃ飲まないで、なんとかなるものですよね。

 

坂本 その気持ち、すごくよくわかります。以前は、仕事を終えた後に飲むお酒が楽しみで、これがなかったらやってられないと思っていたんですけど、2杯を1杯にしたり、飲まない日があっても、それはそれで楽しいし、我慢した後に飲む1杯が最高に美味しいと思えますからね。

 

H それを成長と言っていいのかどうかはビミョーですけど(笑)。でも、これからはそうやって歳を重ねていくんだろうなと思ってます。

 

坂本 ロックの方って年齢不詳で、70代になってもステージ中を走りまわっている方がいらっしゃいますけど、HYDEさんもそれを目指していますか?

 

H 目指してないです(笑)。僕は60くらいまででいいかなぁと思っています。

 

坂本 60ってすぐじゃないですか。それはダメですよ。

 

H 今は、自分でも異常だと思うくらい激しいライヴをやっているのでそれは卒業して、しっとりしたピアノとホーン隊とウッドベースのような編成で、お酒を飲みながらジャジーなバラードを歌うような、そんなコンサートがしたいなぁと思っているんです。

 

坂本 HYDEさんのジャズ、わたしも聴きたいです。

 

H 人間の二面性をテーマにした『ジキル博士とハイド氏』っていう小説があるじゃないですか。16日に出したアルバムが、激しい「動」の部分のHYDEで、来年以降出す予定のアルバムが、バラードを集めた「静」の部分のJEKYLL。そこがひとつの節目で、ジャジーなコンサートへのスタートになるんじゃないかと思っています。

 

坂本 そのときは、和歌山の梅干しを持って駆けつけます(笑)。

 

はいど
1月29日生まれ 和歌山県出身 1994年7月に、L’Arc~en~Cielのメンバーとしてメジャーデビュー。2001年にソロ活動をスタートし、ワールドワイドに活躍。10月16日に、約5年ぶりとなるオリジナル・アルバム『HYDE[INSIDE]』を発売

 

さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 1987年に『あばれ太鼓』でデビュー。『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新アルバム『想いびと』が好評発売中

 

写真・福田ヨシツグ 取材&文・工藤 晋
スタイリスト・小泉美智子(坂本)、高見佳明(HYDE)
ヘアメイク・岡崎じゅん(坂本)、澤西由美花(クララシステム、HYDE)
衣装協力・CHONO(坂本)

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