『海のはじまり』目黒蓮がずっと暗い顔でゲンナリ…“おもしろさ” を完全に捨て去った第1話からの勝算は?
初回から物議を醸している新・月9ドラマ。好意的に解釈すれば、今後の展開で絶対に感動させる自信があるという、ストロングスタイルなのだと思えるが……。
突然娘がいることを知らされた主人公が、幼い我が子と向き合っていくという親子愛がテーマの『海のはじまり』(フジテレビ系)。7月1日(月)に第1話が放送され、今夜第2話が放送だ。
2022年に大ヒットした『silent』(フジテレビ系)の脚本家・生方美久氏と、同作に出演したことで俳優としてブレイクしたSnow Man目黒蓮が主演するとあって、放送前から大きな期待を集めていた作品である。
■亡き母が自己中すぎる…戸惑う視聴者が続出
主人公・月岡夏(目黒)は平凡な会社員ながら、恋人の百瀬弥生(有村架純)と幸せな日々を送っていた。
そんなある日、大学時代に交際していたものの、8年も疎遠になっていた元彼女・南雲水季(古川琴音)の訃報を受け、葬式に参列。
葬儀場で、夏はもうすぐ7歳になる少女・海(泉谷星奈)と出会う。そして水季の母・朱音(大竹しのぶ)から、海が夏の娘であることを知らされる。
後日、夏の住むアパートに海が急に1人で訪ねてくる。戸惑う夏が、海から「夏君、海のパパでしょ? 夏君のパパ、いつ始まるの?」と問われたところで初回終了となった。
この第1話に、亡き母・水季が自己中すぎると戸惑う視聴者が続出。
まず、大学時代に別れる前、水季は夏に妊娠を伝えると同時に、妊娠中絶の同意書にサインさせている。夏が出産という選択肢はないのか尋ねるも、水季は聞く耳を持たない。その後、水季は電話越しに一方的に別れを告げ、彼の前から姿を消していた。
水季の本心はまだ明かされていないが、要するに夏に伝えぬまま出産しており、海を育てていたのだ。
海に父のことを秘密にしていたのであれば、百歩譲って水季の行動も理解できる。だが、水季は海に夏が父親であることを伝え、さらにアパートの場所まで教えていたことが判明し、「怖すぎる」という視聴者が続出したのだ。
■鬱々とした初回、ストロングスタイルすぎる
筆者も「こわ~~」と感じたし、大きな落ち度のない主人公・夏に同情した。ただ、それ以前の問題として、夏の性格にイライラもしてしまった。
夏はやさしく誠実ではあるが、同時に優柔不断で生返事が多い。観ていて気持ちのいい主人公像ではない。そこに来て元彼女の死や突然の娘の登場という重苦しい展開となり、第1話の大半で夏は暗い表情をしているのだ。
夏をそのような清々しくない性格に設定したのは、回を重ねるごとに彼の心の成長を描いていきたいという脚本家の狙いがあるからだろう。しかしそれは、なかば序盤の “おもしろさ” を捨てるというストロングスタイルでもある。
実際、忌憚なく言うと、個人的には全然おもしろいと思えなかった。
ストーリーは重いし主人公は暗いしで、物語にグイッと引き込まれる感覚はない。観ていて気分が鬱々とし、ゲンナリしただけだ。特に第1話は設定説明に終始しており、エンタメ作品としての見応えは薄かった。
『silent』第1話はラストで元恋人同士が再会するも、彼が聴覚障害者になっていたことを知るという切なすぎる展開で、物語への “吸引力” が強かったため、対照的に感じた。
■本作で『silent』脚本家の真価が問われる
筆者は『silent』ファンのため『海のはじまり』も最後まで観続けるが、逆に言うと、《『silent』脚本家の最新作》というバックボーンがなければ、早々に脱落する気がする。
きっと第2話以降で感動させてくれるだろうと期待しているし、最終話まで観終えたころには、「初回はイマイチだったが非常に感動した! 名作だ!!」なんて大絶賛しているかもしれない。
けれど、現状、「期待しているから我慢して観続ける」という心情になっているのは否めず、それゆえに今後の感動へのハードルが相当上がっているのも事実。「そこそこ感動した」程度では、見合わない気さえする。
『海のはじまり』は、脚本家・生方美久氏にとって2022年の『silent』、2023年の『いちばんすきな花』(フジテレビ系)に続く連続ドラマ3作目。今作が生方氏の真価が問われる作品になりそうだが――はたして、今夜放送の第2話で物語にグイッと引き込んでもらえるだろうか?
堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
07/08 02:00
Smart FLASH