『ブルーモーメント』視聴率的にはいまいちでフィニッシュも…山下智久にとって大きな価値があったワケ【ネタバレあり】

 

 良質で見応えのあるドラマだったが、視聴率はいまいち。TVerでもヒットの指標に届かず……。

 

 山下智久が、旧ジャニーズ退所以来初となる、5年ぶりの民放連ドラ主演ということで注目を集めた『ブルーモーメント』(フジテレビ系)が、6月26日(水)に最終話(第10話)を迎え、完結した。

 

 

 視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、第1話が世帯8.6%/個人4.8%と悪くない数字でスタートしたものの、第3話で急落。 最終話まで世帯5~6%台/個人3%台と低水準で推移した。最終話でのジャンプアップが期待されたが、それまでと同水準の世帯6.3%/個人3.6%でフィニッシュとなった。

 

 第3話以降の視聴率に大きな波はなく安定していたので、好意的に解釈すれば固定ファンをガッツリ掴んだと考えられるが、悪く取れば、第1・2話で脱落した何割かの層が最後まで戻ってこなかったというわけだ。

 

 TVerのお気に入り数は94.1万(6月27日現在)で、人気の指標となる100万に届いていないため、見逃し配信で大好評だったとも言いがたい。要するに、大コケではないもののヒットしたとも言えず、微妙な結果だったということである。

 

■【ネタバレあり】最終話、序盤から衝撃の展開!

 

 山下が演じたのは、気象学のプロフェッショナル・晴原柑九朗。

 

 近年多発している気象災害における被害拡大を防ぐため、内閣府直属のチームとして結成された「SDM」(特別災害対策本部)の気象班チーフ。災害現場に駆けつけて指揮を執る現場のリーダーだ。

 

 最終話は序盤から衝撃の展開。これまでどんな災害でも、SDMが出動すれば一般市民の死者は出さずにすんだのだが、冒頭5分で4人もの一般市民が亡くなってしまい、メンバーたちは打ちひしがれる。

 

 その後、SDMメンバーが総力を結集して、観測史上最強クラスの台風のなか、救助活動をおこなっていく。最終話らしいスケールの大災害で、刻一刻と状況が変わる緊迫感を描き、とても見応えがあった。

 

 中盤では、救助方法を解析していた晴原が、思いついた方法を話し出せず躊躇するシーンがあった。チーム全員の命にかかわる危険が大きすぎる作戦だったため言葉を詰まらせていたのだが、それを察したメンバーらが、晴原を信頼して背中を押してくれる。

 

 第1・2話あたりの物語前半では、晴原が救助者たちを助けるためとはいえハイリスクな策を講じて、仲間たちから反対されることが多かった。

 

 だが、最終話はリスクを懸念する晴原に対し、仲間たちが賛同してくれるという逆転現象。ここまで積み上げてきた信頼関係が結実し、最強のチームになったことがわかる演出に胸が熱くなる。

 

 そして迎えたクライマックスで、救助者たちが全員救い出され、大団円のフィナーレとなった。

 

■民放作に再び主演する足掛かりとしての価値

 

 本作には、山下の代表作である『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ(2008年、2010年、2017年/フジテレビ系)や、鈴木亮平が主演した日曜劇場『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(2021年/TBS系)に酷似しているとの指摘が、視聴者から相次いでいた。

 

 確かに、客観的に見て類似点がとても多かったので、その批判は的を射ていたと思う。ただ、そういったネガティブ要素を差し引いても、十分に良質な作品に仕上がっていたと感じるので、もう少し評価されてもよかったと思う。

 

 とはいえ、山下の俳優キャリアとして考えれば、本作の価値は高い。山下には『コード・ブルー』シリーズという絶対的代表作があり、近年はNHKで放送された『正直不動産』シリーズ(2022年、2024年)もスマッシュヒット。

 

 言わずもがな人気も実績も申し分ないのだが、2020年10月に旧ジャニーズ事務所を退所して以来、民放キー局の連ドラからは遠ざかっていた。

 

 だから、これからまた民放の連ドラにバンバン主演していくための足掛かりとしては、キャリアを傷つけるほどの大コケにならなかった『ブルーモーメント』は、きちんと一定以上の役割を果たせたのではないか。

 

 山下の次回作にも期待したい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

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