『366日』最終話、タイトルのミスリードと伏線回収は秀逸だったが…眞栄田郷敦のクズっぷりにモヤモヤ【ネタバレあり】

 

 心境の変化が強引すぎやしないか? とモヤモヤが残る最終話だった。

 

 広瀬アリス主演の月9ドラマ『366日』(フジテレビ系)が6月17日(月)に最終話(第11話)を迎えた。

 

 本作はHYの代表曲「366日」から着想を得たオリジナルラブストーリー。同級生の明日香(広瀬)と遥斗(眞栄田郷敦)は、高校時代に密かに想い合っていたが、当時は恋が実らず。そして初めて出会ってから12年後、28歳になって再会した2人はようやく恋人同士に。

 

 

 しかし第1話のラストで急転。幸せ絶頂の初デートの日、待ち合わせ場所に向かう途中で遥斗が転落事故に遭ってしまい、意識不明の重体。第2話から意識が戻らないまま物語が進み、第4話のラストでようやく目を覚ましたが、なんと記憶喪失になっていた。

 

 第6話で遥斗は中学生までの記憶は戻り、家族や幼馴染みのことは思い出せたものの、高校で出会った明日香のことは思い出せず――という展開になっていた。

 

■【ネタバレあり】バッドエンドかハッピーエンドか?

 

 最終話前となる第10話終盤で、明日香は「遥斗とやり直したい」と告白するも、「できない。怖いんだ、やっぱり」とフラれてしまっていた。

 

 ここまでの流れ的に、明日香も視聴者も記憶が戻っていないことへの恐怖心だと思っただろう。だが、最終話序盤で実は遥斗の記憶は回復しており、高校時代の思い出や明日香と付き合いだしたことなどを思い出していたことが発覚。

 

 筆者は「じゃあなんでフッたんだよ!?」と心の中でツッコんだが、遥斗が明日香と付き合えない理由を最終話で掘り下げていくのだろうと思ったため、その後の展開を見守ることに。

 

 ネタバレで結論を言うと、遥斗がなぜ明日香をフッたのかという理由はふわっとしたまま話は進み、特に大きなターニングポイントもなし。遥斗は心変わりして再び明日香とともに生きていくことを選び、復縁してハッピーエンドという結末。

 

 一応は明日香の想いに応えられなかった理由は描かれたし、やっぱり明日香と一緒にいたいという気持ちの変化も描かれたが、その事情や推移の過程が“弱い”のだ。大きく変動していた遥斗の心情の理由づけとして、釣り合っていないように感じて、モヤモヤしてしまったのである。

 

 第10話で怖いからとフッておきながら、最終話でやっぱり一緒にいたいとヨリを戻した遥斗の乱高下する態度を見ると、エゴだらけで自己中なクズ野郎に思えたほど。一見すると誠実ないいヤツというキャラクターのため“ステルスクズ”だった。

 

 ただ、これはおそらく脚本家の都合。最終話で大逆転のハッピーエンドを描きたいという結論ありきで、そこから逆算して1話前に破局イベントを挿入。主人公および視聴者の感情を揺さぶって、フィナーレに向けての“引き”にしたかったのだろう。その魂胆が透けて見えてげんなりしてしまった。

 

 第10話で破局して最終話で復縁するという展開が悪いわけではないのだが、だとしたらフッた側の遥斗の事情や、そこから気持ちが反転してヨリを戻したいと心変わりするまでの心情の推移を、きちんと説得力のあるよう丁寧に描写してほしかった。

 

■『366日』というタイトルのギミックはお見事だった

 

 1話前で波風立てて最終話を盛り上げたいという制作側の都合で、遥斗の行動や心情に違和感が出てしまったのは残念だったものの、『366日』というタイトルからのミスリードとタイトルの伏線回収は秀逸だった。

 

 まず、本作のモチーフとなっているHYの代表曲「366日」は、叶わなかった恋を歌った狂おしいほどに切ない失恋ソング。そのため、忠実にシンクロさせていくならドラマ『366日』もバッドエンドになるわけだが、実際は大団円のハッピーエンドで幕を閉じた。

 

 要するに、HYの「366日」の歌詞でミスリードして、裏をかいてハッピーエンドに持っていくという手法だったわけで、個人的にはいい裏切りだと感じた。

 

 そして、第1話で2人が付き合いだした1年後の同じ日に復縁してエンディングとなったため、波乱万丈の366日を描いた物語だったことになり、タイトルの伏線回収もしたことになる。

 

 こうして『366日』というタイトルがミスリードになっていると同時に、きちんとそのタイトルの意味を最終話で回収するというギミックはうまいと感じた。

 

 しかしそれだけに、遥斗の心情の推移をもうちょっと上手に描けなかったのかという、不満が残る最終話でもあったのだ。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

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