イギリスで14年ぶり労働党政権が確実、スターマー党首が首相就任の見通し…解散前から議席倍増へ

 【ロンドン=蒔田一彦】英下院(定数650)の総選挙は4日午後10時(日本時間5日午前6時)に投票が締め切られ、開票が進んだ。日本時間5日午前8時時点の英BBCなどの推計によると、最大野党・労働党が6割を超える410議席を獲得すると予想され、英国で14年ぶりの政権交代が確実となった。キア・スターマー党首は5日、首相に就く見通し。与党・保守党は推計131議席にとどまり、歴史的な惨敗となりそうだ。

 スターマー氏は5日未明、自身の選挙区での当選を受けて、「全国の人々が声を上げた。人々は変化への準備ができている。我々がそれを実現する時だ」と述べた。出口調査に基づくBBCなどの推計では、労働党の獲得議席は解散前の206から倍増する。トニー・ブレア氏が党首として臨んだ1997年総選挙の418議席に匹敵する地滑り的勝利となる。

4日、ロンドンの投票所を訪れた労働党のスターマー党首(左)=AP

 2019年の前回選で労働党は議席を減らし、保守党の単独過半数獲得を許した。20年に党首に就任したスターマー氏は政権交代を視野に現実路線を打ち出し、基幹産業の国有化など左派色の強い公約の多くを取り下げた。中道層の支持回復を図る戦略が奏功した形となった。

 一方、スナク首相が率いる保守党の獲得議席は解散前の345から半分以下に激減する見通しとなった。1918年以降の総選挙で最少だった97年の165議席を下回りそうだ。コロナ禍以降の経済低迷や物価高騰、欧州連合(EU)離脱後も続く移民の増加などに対する国民の不満が強く、2010年から政権与党の座にあった保守党の支持率は低迷が続いた。不祥事などで首相交代が相次いだことも支持離れを招いた。

 スナク氏は5月、不法移民をアフリカのルワンダに移送する計画や回復基調となった経済が有権者に評価されると見込んでサプライズ解散に踏み切ったが、支持率は回復しなかった。

 BBCの推計では、中道派の自由民主党が解散前の15議席から61議席に躍進する見通しとなった。EU離脱運動を推進したナイジェル・ファラージ氏が率いる改革党は13議席を獲得しそうだ。「反移民」などポピュリスト的主張を展開し、保守党に不満を抱く保守層の一部を取り込んだとみられる。

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