DOGEトップ、イーロン・マスク氏も後押し! 来年には現在価格の2.5倍まで急騰!? トランプ発「ビットコインバブル」は始まったばかりだ!

米大統領選で返り咲きしたドナルド・トランプ氏とスペースX社、テスラ社のCEO、X社の執行会長兼CTOを務めるイーロン・マスク氏


米大統領選で返り咲きしたドナルド・トランプ氏とスペースX社、テスラ社のCEO、X社の執行会長兼CTOを務めるイーロン・マスク氏

アメリカ大統領選挙の開票日以降、すさまじい勢いで上昇を続けるビットコイン。ドナルド・トランプ次期大統領はなぜ暗号資産市場のゲームチェンジャーになりえたのか?

【写真】「ビットコイン2024」の会場に飾られた看板ほか

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■トランプ再選で〝確変モード〟へ

共和党が民主党を破り、ドナルド・トランプ氏の再選が決まったアメリカ大統領選挙。ビットコインはその波に乗り、開票が始まってから9日連続で史上最高値を更新。11月19日時点で1ビットコイン約1400万円まで急騰している。

ビットコインを含めた暗号資産は〝トランプトレード〟で最も勢いのあるセクターのひとつとなり、日本でもさまざまな報道が飛び交うなど活況を呈しているが、ここまで価格が跳ね上がったのはなぜなのか?

「トランプ氏の再選がきっかけとなり、ビットコインがいよいよ本格上昇期、いうなれば〝確変モード〟に入った」と語る楽天ウォレットのシニアアナリスト松田康生氏が、ビットコイン急騰の背景を解説する。

「ビットコインにとって、トランプ再選は今年最大の好材料です。トランプ氏の政策は低金利・低課税・ドル安なのでインフレを呼び込む可能性が高く、インフレヘッジとして、〝デジタルゴールド〟ともいわれるビットコインに注目が集まっています。

また、トランプ氏は来年1月20日の大統領就任初日にゲイリー・ゲンスラー米証券取引委員会(SEC)委員長を解任すると示唆していますが、これまで続いてきた民主党の反暗号資産政策にいよいよ終止符が打たれる、と市場が好感していることが今回の急騰の大きな要因です」

ジョー・バイデン政権下でSEC委員長を務めるゲンスラー氏は、暗号資産業界に対してこれまで100件を超える訴訟を起こすなど、厳格な姿勢をとってきた人物だ。

今年7月の暗号資産カンファレンス「ビットコイン2024」の会場に飾られた看板


今年7月の暗号資産カンファレンス「ビットコイン2024」の会場に飾られた看板

「民主党の大統領候補としてトランプ氏と戦ったカマラ・ハリス副大統領も、暗号資産に対しては積極的ではありませんでした。一方、トランプ氏は今年7月に開催された暗号資産カンファレンス『ビットコイン2024』に登壇し、『アメリカを暗号資産の首都に』と発言するなど、積極的な姿勢を打ち出してきました。

アメリカ国内の暗号資産保有者は約4000万人といわれており、今回の大統領選ではワンイシューで投票を決めた層も一定数いるようです。メディアの事前予想に反し、トランプ圧勝という結果になりましたが、暗号資産を巡る方針の違いが明暗を分けた要因のひとつだと思います」

7月の暗号資産カンファレンスでは、トランプ氏が「ビットコインをアメリカの戦略的準備資産として保有する」と明言したが、松田氏によれば、この方針も大統領選後のビットコイン急騰の大きな要因だという。

「アメリカ政府は闇サイト『シルクロード』などから押収した約20万ビットコインを保有していますが、トランプ氏はこれを恒久的な国家資産として備蓄する政策を打ち出しています。

さらに、暗号資産推進派のシンシア・ルミス上院議員がFRB(米連邦準備制度理事会)に対して、戦略的準備資産として100万ビットコインを新規で購入する法案を提出したことも話題になっています。現価格で約900億ドル(約14兆円)もの規模ですから、実現すればすごい話です。

ただし、いかに〝トリプルレッド〟(大統領と上下院の多数派を共和党が占める状態)といえども、強硬に法案を通すのは容易ではありません」

■〝右腕〟マスク氏もビットコイン支持

トランプ氏の〝右腕〟として共和党勝利の原動力となったのが、スペースX社、テスラ社のCEO、X社の執行会長兼CTOを務める実業家のイーロン・マスク氏だ。

12日には、共和党の大統領候補者指名争いに参加した実業家のビベック・ラマスワミ氏と共に、政府の規模を大幅縮小する計画を担う「政府効率化省(DOGE)」のトップに就任することが発表された。

マスク氏の公式Xで政府効率化省のキービジュアルが公開されたが、そこにはマスク氏のお気に入り暗号資産である「ドージコイン」のアイコンと同じく、茶色い柴犬が描かれていた。

大統領選後にマスク氏のXアカウントで投稿された政府効率化省(DOGE)のキービジュアル


大統領選後にマスク氏のXアカウントで投稿された政府効率化省(DOGE)のキービジュアル

「相場操縦じゃないのかと思いましたが(笑)、実際にドージコインも大統領選後に急騰しました。そもそもマスク氏は以前からビットコインに関心を持つ人物です。財務資産としてビットコインを保有する企業が増えましたが、そのはしりがテスラ社ですから。

また、トランプ氏はマスク氏だけでなく、ビットコイン支持者のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を厚生長官に起用する方針を固めました」

今年9月にマスク氏のXアカウントで投稿された画像


今年9月にマスク氏のXアカウントで投稿された画像

そのマスク、ケネディ両氏がそろって新政権の商務長官に強く推したのが、ビットコイン融資事業を手がける投資銀行キャンター・フィッツジェラルドのハワード・ラトニック会長兼CEOだ。

トランプ氏本人よりも早く、陣営のキーマンふたりがSNSで声明を出したが、この〝越権行為〟まがいの異例の意思表示からもビットコイン政策への本気度がうかがえる。

ちなみに、これまで商務長官の本命と目されてきた投資会社キースクエアグループの創設者兼CEO、スコット・ベッセント氏もビットコイン肯定派だったが、結局、トランプ氏は11月19日にラトニック氏を商務長官に起用すると発表。トランプ新政権でビットコイン需要がさらに高まることになりそうだ。

選挙集会に参加したケネディ・ジュニア氏(右)とトランプ氏


選挙集会に参加したケネディ・ジュニア氏(右)とトランプ氏

アメリカ発のビットコインバブルが本格化しつつあるが、日本もこの波に乗り、恩恵を受けることができるのだろうか?

「今年1月にはアメリカでビットコイン、5月にはイーサリアムといった暗号資産の現物上場投資信託(ETF)の取引が始まり、イギリスや香港でも続々とローンチしました。日本も実現へ向けて踏み出そうとしていますが、税制上の問題もあり、難航しています」

日本では現在、暗号資産で得た利益は原則として雑所得に区分され、総所得金額に応じて5%から45%の所得税が課される(別途、住民税10%)。一方、株式投資で得た利益は譲渡所得として一律で約20.315%の申告分離課税が適用されるため、暗号資産との〝格差〟が取り沙汰されている。

ETFが実現すれば、これまでビットコインを現物保有することに抵抗感のあった日本の投資家たちも、積極的に新規参入してくるだろう。

「岸田文雄政権では『Web3』を成長戦略の柱に据えていましたし、石破 茂政権でも平将明デジタル大臣が推し進めようとしていますが、少数与党の影響もあるのか、ビットコインETF実現に向けた法案が国会に出されるのはもう少し先になりそうです」

衆院選で躍進し、国会運営のキャスティングボートを握る国民民主党も、暗号資産の減税と規制改革を公約に掲げている。「103万円の壁」問題だけでなく、暗号資産に関する問題も与野党でどこまで協議できるのか注目だ。

■来年4月には現価格の2.5倍に

トランプ再選をきっかけに勢いづいたビットコイン市場。大統領選前までは約1000万円で推移していたが、大統領選後には約1400万円まで急騰した。ここからさらに上昇していく余地はあるのだろうか?

「ビットコインバブルはまだ始まったばかりです。ピークは来年4月頃と予想していて、現価格の2.5倍に当たる3500万円を目指す展開になるのでは。

1500万円や2000万円は通過点に過ぎませんが、足元の上昇は少し急すぎるので、どこかで調整が入るはず。もしこのままノンストップで勢いよく上抜けていくようだと、ピークの予想を上方修正する必要が生じそうです」

山でいえば、今はまだ4合目付近。〝トランプトレード〟が一巡してもビットコイン市場の勢いは止まらず、需要は伸び続けている。この状況について、「大統領選前後で買い手の層が変わった影響も大きい」と松田氏は分析する。

「今年の前半は主に個人投資家がビットコインを買っていましたが、大統領選後にはアメリカ各州の公的年金基金や大手保険会社など、〝大口〟の機関投資家がビットコインETFをポートフォリオに組み込み始めた可能性があります。

トランプ再選で『いろいろ考えてみた結果、やはりビットコインは買いだ』『暗号資産がアメリカの民意だ』という認識が広まっているのだと思います」

来年1月20日の大統領就任式を待たずに、ビットコイン市場へ絶大な影響をもたらしているトランプ氏。アメリカ国内のみならず、全世界から注目されるビットコイン政策が「トランプ2.0」のカギになりそうだ。

写真/Getty Images 時事通信社

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