中国のICBM発射、公海上に落下は44年ぶり 北東アジア地域の緊張、さらに高まる懸念

中国国防省は25日、中国人民解放軍で戦略ミサイルを運用するロケット軍が、同日午前8時44分(日本時間同9時44分)に模擬弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を発射し、予定海域である太平洋の公海上に落下させたと発表した。香港紙によると、中国が公海上に向けて発射したのは、実験に成功した1980年以来44年ぶりとなる。

関係筋によると、中国は発射について米国とオーストラリア、ニュージーランドに事前通報していた。日本にはなく、ICBMは日本上空を飛行しなかった。日本の防衛省は、最終的に弾頭部分がオーストラリア周辺の公海上に落下したと推定している。

中国国防省はICBMの発射について「年次軍事訓練」の一環とした上で「国際法や国際慣例に符合しており、いかなる特定の国や目標も対象としたものではない」と主張した。中国国営新華社通信はICBM発射について、武器の装備や性能、部隊の訓練レベルの検証に有効で、予期していた目的を達成したと伝えた。

香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)によると、中国は1980年5月に初のICBMである「東風(DF)5」の発射実験に成功。この際、中国内陸部の甘粛省から発射し、南太平洋の目標海域に着弾した。

これにより、中国は旧ソ連の欧州部と米本土への核攻撃能力を獲得した。最近ではミサイル実験は主に広大な国土を利用して国内で行われており、太平洋に着弾させるのは珍しい。

中国は近年、台湾や南シナ海の問題などで同盟国などと対中圧力を強めている米国に警戒を強めている。今回は米国を射程に収めるICBMであることを自ら公表し、太平洋に着弾させていることから、米国を牽制(けんせい)する意図は明確といえる。中国は米本土のほぼ全域を射程に収める多弾頭型ICBM「東風41」を既に配備している。

今回の発射は、北朝鮮が日本周辺でミサイル発射を繰り返す中で行われており、北東アジア地域の緊張がさらに高まることが懸念される。(深圳 三塚聖平)

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