イスラエルが報復表明のヒズボラ幹部標的に空爆、8人死亡 機器爆発受け情勢緊迫化

【テルアビブ=佐藤貴生】レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが使用する通信機器が一斉爆発した事件を受け、地域情勢が急激に緊迫化している。イスラエル軍は20日、レバノンの首都ベイルート郊外で空爆を実施し、レバノン保健省は8人が死亡、50人以上が負傷したと発表した。ロイター通信は複数のレバノン消息筋の話として、空爆がヒズボラの有力幹部を標的に行われ、イブラヒム・アキル司令官が死亡したと伝えた。

ヒズボラは爆発にイスラエルが関与したとして、報復する方針をすでに表明。ヒズボラを率いるナスララ師は19日、事件に言及し、イスラエルが「すべてのレッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と非難していた。

19日のナスララ師の演説放映中には、イスラエルの戦闘機がレバノンの首都ベイルート上空を轟音を立てて飛行した。ヒズボラに対する挑発行動とみられる。イスラエル軍はこの日、レバノン南部一帯を数十回にわたり爆撃するなど激しく攻撃した。

ナスララ師は演説で、レバノンの歴史上、例がないほどの大規模攻撃を受けたとし、「戦争犯罪か宣戦布告と考えられる」と述べた。組織としてのヒズボラは維持できるとした。

ロイターによると、イラン革命防衛隊のサラミ司令官はナスララ師に対し、イランや連携する各地の民兵組織で構成する「抵抗の枢軸」が、イスラエルに「壊滅的な報復」を行うと述べた。中東地域の戦闘の広域化は不可避な情勢だ。

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