ウクライナ、防御戦立て直し 侵略長期化と対露制裁でプーチン体制の不安要因にも

ロシアのプーチン大統領が7日、就任式を経て新たな6年間の任期に入る。プーチン氏にとって最大の課題であるウクライナ侵略では露軍が優勢にあるものの、ウクライナも態勢の立て直しを進めており、終わりが見えない。欧米主導の対露経済制裁は今後も露経済をむしばんでいくとする観測も強く、プーチン氏の政治基盤が今後6年間、盤石であり続ける保証はない。

露軍は最激戦地の東部ドネツク州を中心に攻勢を継続している。米国が再開した軍事支援や追加動員によりウクライナが戦力を回復させる前に、可能な限り占領地域を拡大したい思惑だとみられている。

露国防省は今月、ドネツク州や東部ハリコフ州で複数の集落を制圧したと発表。ショイグ国防相は3日、「今年初め以降に547平方キロメートルを支配下に置いた」と主張し、露軍の優勢を強調した。

直近の焦点はドネツク州の小都市チャソフヤルを巡る攻防だ。チャソフヤルは高台にある要衝で、露軍が同市を制圧すれば、ウクライナが保持する同州の主要都市スラビャンスクやクラマトルスク方面への前進拠点を得ることになる。戦闘では露軍が火力で勝り、チャソフヤル陥落は避けられないとの見方が強い。

ただ、ウクライナ軍はチャソフヤルの後方にも防衛線を構築した。米国などから提供された兵器も前線に順次到着していく見通しだ。仮にチャソフヤルが陥落した場合でも、ドネツク州での戦闘はなお長期間続くとみられている。露軍の戦力も損耗しており、攻勢をどこまで維持できるかは見通せない。

プーチン氏は露経済が堅調であり、対露制裁を「打破した」と繰り返してきた。ただ、露専門家やメディアは、経済を押し上げている主な要因は軍需生産の拡大であり、景気の継続性や将来性には疑念が残ると指摘している。

ロシアは国家歳入の3~4割を占める石油・天然ガス輸出で、制裁前の主要販売先だった欧州での減少分を中国やインドなどでの増加分で補えなえておらず、財政赤字が増加。機械や電子機器、部品などの供給で依存してきた欧米の供給網から切り離されたロシアの生産力の低下が本格化するのは、これからだとする分析もある。

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