世論の対日圧力に抗せず=求心力衰える尹政権―韓国

【ソウル時事】韓国政府は、新潟県佐渡市の「佐渡島(さど)の金山」の追悼式を欠席し、日本に厳しい姿勢を示した。対日関係を重視する尹錫悦政権で歴史問題の対立が顕著になるのは異例だ。政権の支持率が低迷する中で、対日世論に配慮せざるを得なかったとみられる。
「歴史については妥協しないという韓国政府の確固たる意思を示したものだ」。韓国外務省当局者は韓国独自の追悼行事開催を発表した24日、こう断固たる姿勢をアピールした。
25日付の韓国各紙は1面で日本の追悼式を大きく報道。韓国では7月の世界文化遺産登録直後から佐渡金山の展示に「強制」という表現がないといった不満がくすぶっており、式に出席した生稲晃子外務政務官のあいさつにも「強制労働に関連する表現がなかった」と反発した。
革新系最大野党「共に民主党」は過去の靖国神社参拝が報じられた生稲氏の出席について「追悼ではなく侮辱だ」と主張し、「屈辱的対日外交」と尹政権を非難した。
4月の総選挙で与党が惨敗した上、尹政権は再選のない任期5年の折り返し点を過ぎ、支持率が2割と低迷。これまで対日関係を重視する姿勢を貫いてきたが、野党の攻撃に抵抗する政権の体力が低下している。「もし式に出席していたら世論の反発で大変だったはずだ」(専門家)との声が聞かれる。
日韓関係は2023年3月に尹大統領が元徴用工問題の解決策を「決断」したことで正常化に向かった。峨山政策研究院の崔恩美研究委員は、韓国側が一歩進んでも日本側が付いて来ていないと語り、韓国の心情を「日本がもっと理解してほしい」と強調した。
来年は日韓国交正常化60周年の節目の年。しかし、尹政権の求心力が衰える中で、今後も日韓間で問題が生じた場合に世論の抑えが利かない事態が想定される。さらに来年1月にはトランプ次期米大統領が就任。多国間協力に消極的なトランプ氏は1期目、極度に悪化した日韓関係を放置したとも指摘される。韓国の趙兌烈外相は日米韓協力の維持のためにも今回の問題が日韓関係全体に「支障を来さないよう両国が努力すべきだ」と訴えた。



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