賃金増も実感乏しく=中間層の6割超、生活苦訴え―米大統領選

【ニューヨーク時事】米大統領選の投開票まで1カ月。市民を悩ませてきた物価高は和らぎ、賃上げ幅はインフレ率を上回る。ただ、生活が楽になったという実感は薄く、人々は支出見直しで当座をしのいでいる。勝敗を左右する中間層は現状に強い不満を抱いており、民主党のハリス副大統領と、共和党のトランプ前大統領の両候補は、同層に照準を合わせた政策でしのぎを削っている。
全米トゥルー・コスト・オブ・リビング連合の調査では、中間層の65%が「生活が苦しく、改善は期待できない」と回答した。全回答者の46%は貯金がほとんどなく、家計の厳しさが浮き彫りとなった。
8月のインフレ率は前年同月比2.5%と、ピークだった2022年6月の9.1%から大幅に低下。23年5月以降、実質賃金は前年比でプラスが続くが、家計に余裕がないと感じる市民は多く、節約による生活防衛を余儀なくされている。
ニューヨーク市内の飲食店に勤務する女性(34)は「生活が良くなったとは思えない。家でコーヒーを沸かし、外食もやめた」とため息をつく。同市在住のジョシュア・ストリックランドさん(27)も、趣味の映画館通いを控えた。両候補には「賃金が増える政策を打ってほしい」と訴える。
大和総研ニューヨークリサーチセンターの藤原翼研究員は、庶民の苦境の一因を「生活コストの高止まり」と分析。その上で、「インフレが低水準で安定する中で、賃金の伸びが続かない限り、改善を実感することは難しい」と指摘する。
格差拡大も深刻だ。米調査会社エクイラーなどによると、大企業トップの年間報酬は23年の中央値で1630万ドル(約24億円)と、一般従業員との差は約200倍に広がった。
両候補の接戦が予想される中、ハリス氏は食品価格のつり上げ禁止策の導入を、トランプ氏は残業代への課税全廃を打ち出し、有権者のほぼ半数を占める中間層の取り込みに躍起だ。ただ、こうした政策が格差是正につながるかどうかは見通せない。

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