「ロシアがICBM発射」とウクライナ軍発表 情報錯綜、否定報道も

ウクライナ中部ドニプロで2024年11月21日、ロシア軍のミサイル攻撃を受けた場所で消火活動をする消防士。ウクライナ非常事態庁提供=ロイター

 ウクライナ空軍は21日、ロシア軍が同国南部カスピ海沿岸のアストラハン州から、ウクライナ中部の産業都市ドニプロに向け、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した、と発表した。被害などについては明らかにしていない。一方、米CNNなど複数の主要メディアは、発射されたのはICBMではないとの西側当局者の話を伝えており、情報が錯綜(さくそう)している。

 ウクライナ空軍の発表によると、ドニプロは21日午前5時から同7時にかけて、ICBMだとする兵器のほか、戦闘機から発射される極超音速兵器「キンジャル」や、戦略爆撃機から発射される射程4千キロ以上の巡航ミサイルなどによる攻撃を受けたという。ウクライナ軍は6発の巡航ミサイルを撃墜したとし、「その他のミサイルについても重大な被害はない」としている。一方、地元当局は、ドニプロと中部クリビーリフで計28人が負傷したとしている。

 米国の複数の主要メディアはいずれも西側当局者の話として、ドニプロへの攻撃で使用されたのはICBMではないとの見方を相次いで報道。米CBSは「ロシアが発射したのはICBMではなく、中距離弾道ミサイルのようだ」とする米国の当局者の発言も伝えた。米ABCはロシア軍のICBMによる攻撃を「95%確信している」とするウクライナ当局者のコメントを伝える一方、ウクライナ側がミサイルの残骸を調査中で、最終的な結論には至っていないと報じている。

 米国は今月、ウクライナに対し、これまで認めてこなかった米国提供の長射程ミサイルによるロシア領土への攻撃を承認したとされる。欧米のメディアによると、ウクライナ軍は19日に米国製の「ATACMS(アタクムス)」、20日には英国製の「ストーム・シャドー」を使用し、ロシアによる報復攻撃の懸念が高まっていた。

 ロシアのプーチン大統領は19日、核兵器の使用方針を定めた文書を改定し、核兵器保有国から支援された非核保有国の攻撃も、核兵器による反撃の対象になると示唆。欧米のウクライナ支援強化に対して「核の脅威」を見せつけ、強く警告している。

 ロシアは核弾頭を搭載可能なICBMの発射実験を繰り返してきた。今回のウクライナ側の主張が事実であれば、本来なら米大陸への攻撃などが想定されているICBMを使うことで、ウクライナ支援をめぐり米欧を強く牽制(けんせい)すると同時にウクライナの防空能力を試した可能性もある。(喜田尚、ロンドン=藤原学思)

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