北朝鮮がICBM発射 米韓訓練、発射台見立てた標的に攻撃 対抗か

10月31日、北朝鮮のミサイル総局が発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)。朝鮮中央通信が配信した=朝鮮通信

 韓国軍は31日、同日午前7時10分ごろ北朝鮮の平壌付近から日本海に向けて、大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発が発射されたと発表した。日本の防衛省によると、高度は7千キロ超で過去最高、飛行時間も86分で過去最長だった。11月5日の米大統領選を前に米国などを牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。

 防衛省によると、ミサイルは約1千キロ飛行し、北海道奥尻島の西約200キロの日本海上に落下した。日本の排他的経済水域(EEZ)の外とみられる。北朝鮮の弾道ミサイル発射は9月18日以来で、10月1日の石破政権発足後は初めて。

 韓国軍は、ミサイルは高角度で打ち上げて飛距離を抑える「ロフテッド軌道」で発射されたとの見方を示した。発射の兆候がつかみにくい固体燃料を使った新型のミサイルの可能性があると分析している。

 一方、北朝鮮の朝鮮中央通信は31日、同日朝にICBMを発射したと伝えた。北朝鮮が発射当日に内容を公表するのは異例だ。ミサイル総局が金正恩(キムジョンウン)総書記の立ち会いの下で「非常に重大な試験を行い、戦略ミサイル能力の記録を更新した」とした。金氏は「核戦力強化路線を絶対に変えない」と強調したという。

 日本政府は国家安全保障会議(NSC)を開催。林芳正官房長官は「わが国地域および国際社会の平和を脅かすものであり、断じて容認できない」と述べ、北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に厳重に抗議したと明らかにした。

 韓国の金竜顕(キムヨンヒョン)国防相は30日、米大統領選の前後に北朝鮮が「存在感の誇示」のため、ICBMの発射のほか、7回目の核実験にも踏み切る可能性があると指摘。米韓が警戒を強めていた。

 発射を受け、米国のNSCは「発射実験を強く非難する」とする声明を出した。

 また、米韓両軍は31日、合同訓練を実施。北朝鮮の移動式発射台に見立てた目標に攻撃を加える写真を公開した。北朝鮮のミサイル発射に対抗する狙いがあるとみられる。(太田成美=ソウル、矢島大輔)

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