「嘆願事業」に反発し脱出を決断…脱北者ら、都内で会見

政府が若者に強要している「嘆願事業」を苦に、北朝鮮からの脱出を決行した男性ら脱北者の男女4人が9日、都内でデイリーNKジャパンなどのインタビューに応じ、北朝鮮当局による人権侵害の実態について語った。

「中国は送還停止を」

4人は、韓国の人権NGO「セサム(新しい人生)」の一行で、今月5日から大阪など各地をまわり、北朝鮮内部の実態を伝えてきた。

現在30歳の男性、パク・ムヨンさんは高校卒業後、大学への進学を希望していた。しかし、北朝鮮当局は当時、金正日総書記の死亡(2011年12月)による社会の動揺を防ぐ目的などから、高校の新卒男子を全員、軍に入隊させる「嘆願事業」を推進していた。

「嘆願事業」とは、若者らが自ら進んで軍や炭鉱、農村行きを志願するキャンペーンだが、実態は国家による強制にほかならない。

これにより、進学の夢を打ち砕かれたパクさんは、「一個人(独裁者)の運命が、全国民の運命を左右するような国では暮らせない」と考え、脱北を決意。両親の許可を得て、単身、国境の川を渡ったという。

北朝鮮当局は近年においても、農村や炭鉱などを対象とした「嘆願事業」を継続している。背景には、窮乏を苦にした農村部からの住民離脱や出生率の低下による人口減少があると見られるが、「嘆願事業」で送り込まれた若者らの定着率も高くはないと見られる。

パクさんの証言は、北朝鮮の若者らが決して体制に従順ではなく、理不尽な政策の押し付けに反感を強めている実態を、垣間見せたものと言える。

一方、20代半ばの女性、カン・ジソンさんは16歳のときに、中国で人身売買の被害に遭った。その後、辛くも脱出して韓国にたどり着いたが、「それでも自分は幸運な方だ」と話す。

「今も中国では、膨大な数の北朝鮮女性が、人身売買の被害に苦しんでいる。しかも彼女らは、不法滞在者として中国当局に摘発された場合、北朝鮮に強制送還され、管理所(政治犯収容所)送りなど最悪の人権侵害を受ける。中国は難民条約締約国として、脱北者を北朝鮮に送ってはならないのに、自ら批准した条約を守ろうとしていない」

中国は「難民の地位に関する条約」と「拷問禁止条約」に加入しており、それらの条約は、難民の強制送還を禁じている。

だが、中国は頑として脱北者を難民として認めようとしない。「政治難民ではなく経済的な移民で、違法越境者」と主張し、北朝鮮との間で結んだ犯罪人引渡に関する条約を根拠に、強制送還を続けている。

カンさんは「中国に政策を変えさせるのは容易ではないが、だからこそ国際的な連帯が必要。日本の人々もこの問題に関心を持ち、北朝鮮の人権状況を改善する運動に力を添えてもらいたい」と語った。

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