「性奴隷にされケダモノのように…」北朝鮮女性が語る中国での暗黒体験

2011年に北朝鮮から脱北し、韓国で「脱北美女」タレントとしてテレビ番組に出演するなどしていたイム・ジヒョンさん(本名=チョン・ヘソン)さんは2017年ごろ、突然姿を消した。

その後、北朝鮮の対外プロパガンダメディアに登場した彼女は、韓国のテレビで共演者だった脱北者を非難する一方、両親や妹と幸せに暮らしていると近況を伝えた。もちろん、北朝鮮当局により演出されたものだろう。

彼女が北朝鮮に戻る動機については様々な説が飛び交ったが、中国人の夫が保衛部(秘密警察)と共謀し、ホラー映画のような方法で北朝鮮に拉致したと伝えられている。

(参考記事:美人タレントを「全身ギプス」で固めて連れ去った秘密警察の手口

現在、北朝鮮でも表舞台から姿を消した彼女だが、韓国のNGO・北韓戦略センターの姜哲煥(カン・チョラン)代表は自身のYoutubeチャンネルで、彼女が管理所(政治犯収容所)に連れて行かれたとの情報を入手したと明らかにした。また、別の匿名の脱北者は、流刑地として知られている咸鏡北道(ハムギョンブクト)慶興(キョンフン)郡の阿吾地(アオジ)炭鉱で目撃されたとの話を伝えた。

今月中旬、同じ咸鏡北道の穏城(オンソン)郡文化会館で、40代前半の女性キムさん(仮名)が、朝鮮社会主義女性同盟(女盟)のメンバー300人の前で講演を行った。彼女は脱北して中国で逮捕され、今年4月に北朝鮮に強制送還されていた。詳細を現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

川向うは中国というロケーションにある、穏城郡の豊西里(プンソリ)出身のキムさんは、10年前に豆満江を渡って脱北して中国で暮らしていたが、中国の公安当局に逮捕されて、北朝鮮に強制送還された。

「資本主義の幻想に陥り、一時的に間違った道を歩んだキムさんの話を聞きたい」

温城郡の女盟委員長は、こう口火を切った。するとキムさんは、脱北の経緯や人身売買の被害に遭ったことを語った。もちろん、当局が脚色した内容だが、一部(あるいは相当部分)は真実であると思われる。

「きらびやかな中国を眺めながら幻想を抱いた。しかし、中国に足を踏み入れた瞬間からケダモノのような暮らしが待ち構えていた。結局、性奴隷としてあちこちに売られ、本当に人間として想像できない絶望的な生活を送らざるを得なかった」

そして、逮捕後のことについてはこのように語った。

「非法越境者として捕まり、中国公安に足で殴る蹴るの虐待を受けた。人間性など微塵もなく、地獄そのものだった。居心地がよく平穏だった祖国(北朝鮮)での幸せな日々を思い出し夜も眠れなかった」

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

そして、彼女はこのように話を締めくくった。

「母なる党では、死を持ってしても洗い流せない大罪を犯した私を暖かく抱きしめて許し、新たな人生を生きるように大きな愛を与えてくれた。残りの人生は、偉大なる首領様、将軍様、敬愛する元帥様のために喜んで捧げる」

さて、会場の反応だが、同情と非難に二分されたという。

「言葉の通じない国でどれだけ苦労したのだろうか」と彼女に同情を示す人もいれば、「一度裏切れば永遠に裏切る」と非難する人もいたという。ただ、後者は本音ではなく、当局の目を意識した建前の可能性が高い。

穏城は中国との国境に面しており、脱北の経験を持つ人が非常に多い。密輸のために少しだけ脱北してすぐ戻ったという人もいれば、しばらく出稼ぎしていた人、果ては韓国にたどり着いた人が、周囲に当たり前のようにいる環境だ。

川向うの中国がどれほど豊かな暮らしをしているか多くの人が知っているのに、わざわざキムさんを「裏切り者」と非難するのは非常に白々しい。

(参考記事:北朝鮮、脱北めぐるプロパガンダに大失敗…「60代なのに美肌過ぎる」

キムさんの身が、今後どうなるかは不明だ。かつては軽い処罰で済まされた脱北だが、現在では重罰化が進んでいる。どれだけ処罰が軽くとも、穏城から追放され、二度と脱北などできないほど国境から遠く離れた寒村に送られることは間違いない。それで済まされればまだマシなのだが……。

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