「その後、彼が急に私のホテルに来て…」交際半年でプロポーズした日本人女性が明かす、衝撃だったエジプト人との国際結婚

 2014年にエジプト人のモスタファさんと結婚したベリーダンサーのHANAさん。ベリーダンスの修行先であるエジプトで出会い、現在は夫婦で日本に暮らす。今回はHANAさんに、国際結婚の難しさやエジプトの知られざる現状、ベリーダンサーという職業についてなど、話を聞いた。(全3回の1回目/続きを読む)

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HANAさん

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「爽やかでカッコいい」と思ったけど恋愛感情はなかった

――HANAさんのパートナー・モスタファさんはエジプトの方だそうですが、出会いは?

HANAさん(以降、HANA) 2013年の年末、私がエジプトのカイロにいるベリーダンサーの先生のもとに修行に行ったとき、空港でのピックアップをお願いしていたんですけど、そのときお迎えに来たのが彼だったんです。

 当時、彼はスキルの高い資格を持っていたので、旅行会社の若手エリートでした。エジプトは観光業がメインな国のため、高い偏差値がないと観光学科に入学ができないんです。

――その時のモスタファさんの第一印象は?

HANA かっこいいなって。ピックアップに来る人ってイモっぽい人が多いんですけど(笑)、爽やかで雰囲気のいい人だなと。

――初めから好印象だったんですね。

HANA というか、私は当時ダンスにしか興味がなくて。ベリーダンスをはじめてから7年くらい、まったく恋愛をしてなかったんです。

――ベリーダンサーとしての仕事に集中していた時期だったと。

HANA 私はベリーダンスをはじめた時期が遅くて、スタートが31歳なんです。それもあって、「もうこの先はベリーダンスで食べていくしかない」という感じで、最初からプロになることしか考えていなくて。

 それで、恋愛みたいに気持ちがアップダウンするものは要らないと、最初にカットしちゃってたから、男性に対して1ミリも興味がなかった。だから、彼とエジプトの空港で会っても、「爽やかでカッコいいな」というだけで、それ以上の感情は何もなかったですね。

――そこからどのように交際に発展したのでしょう。

HANA 彼がタクシーの中で「エジプトは初めて?」と聞いてきたので、「バカじゃない? この人」と思って。

――HANAさんはそれまでに何度もエジプトに行かれていたから?

HANA そうそう。だから、「なめんな」みたいな気持ちになって(笑)、あとはもうずっと無言で話さなかったんですけど、修行中に一度だけ、ベリーダンスのスーパースターがナイトクラブで踊る日があったので、参加の申込みをしたんです。で、そのツアーを彼が仕切っていたので、また会うことになって。

とっさに「el Hobb(エル ホッブ)」って言っちゃった

――モスタファさんは観光業に従事していたということでしたよね。

HANA でも、待ち合わせ時間になっても他の参加者が来ないんです。彼と私しかいない状態がずっと続いて、普通、ツアーコンダクターなら私に気を遣ってその状況を説明すると思うんですけど、彼はずっと携帯をいじってて何も話さない。

 だんだん頭にきて、約束の時間から40分経ったとき、「もう帰ります。キャンセルで」といって怒って帰ったんです。

――当日キャンセルになってしまったと。

HANA そうです。今でも覚えているんですけど、チケットが60ドルだったんですね。それは当日キャンセルだから普通ならお金は返ってこないわけですが、その後、彼が私の滞在先にチケット代を返しに来たんです。

 私は「要らないよ」と言ったんだけど、「いやいやいや、受け取って」と言われて。ぶっちゃけエジプトでそういうことってほとんどないんです。

――普通はお金を返してくれるようなことがないと。

HANA お金にゆるいし適当だし、基本的にガメついから、取れるなら何でも取っちゃおうという人が多いんですよ。たとえばこのジュースも(と、目の前の飲み物を指しながら)、エジプト人相手だったら100円だけど、外国人なら1000円で売りつける、みたいな。

 そういうエジプトの慣習を知っていたので、わざわざお金を返しに来てくれたことに驚いて、とっさに「el Hobb(エル ホッブ)」って言ったんです。「エル ホッブ」ってアラビア語で「I Like」っていう意味なんです。「I Love」じゃなくて。

――恋人に対してというより、友だちに好意を示すような意味ですかね。

HANA そうです。ただ、エジプトの人は外国人がアラビア語を話すとすっごく喜ぶし、さらに男性に対して「Like」なんて意味の言葉を使ったらもう大変。「この子は僕のことが好きなんだ!」と取られてしまうから、簡単には言えない言葉なんです。

――そういったカルチャーも理解した上で、HANAさんはあえてアラビア語で好意を伝えた?

HANA そう。わかってたんだけど、でも、なんか言っちゃったんです。そうしたら彼が、「フフンッ」て鼻で笑って出て行っちゃって。「あれっ、なんか違う」と思って、そこにまたキュンとしたんです。

遠距離恋愛から半年後、「私からプロポーズしました」

――これまでのエジプト人男性とは違う反応だったと。

HANA 帰国してからメッセンジャーでやりとりをするようになって、ベリーダンスで使う曲の翻訳を彼に頼んでみたんです。普通、アラビア語の翻訳をエジプトの人にお願いしたら絶対お金がかかるし、前払いしないと翻訳しないんですけど、彼はお願いした1時間後に翻訳を送ってくれた上に、「これは僕の本業じゃないから」と、お金も受け取らなくて。

 それまでいろんな人に翻訳をお願いしたことがあったけど、皆けっこうめちゃくちゃだったんですね。

――モスタファさんの翻訳は全然違った?

HANA それまでは、「水を売ることがなんでかわいいにつながるの?」みたいな、全く意味の分からない翻訳ばっかりでしたけど、彼の翻訳ではじめて、アラビア語って美しいな、と思ったんです。意味がきちんと理解できて共感できたから、そこから私の踊りもぐわーっと変わりました。

 それもきっかけになって、遠距離恋愛がはじまったんです。

――結婚を意識したのはどのタイミングで?


HANA 付き合って半年くらいのタイミングで私からプロポーズしました。

――結婚願望があったのでしょうか?

HANA 全然。プロポーズしたのも軽い気持ちで、深い意味もなかったです。

彼はすべてを捨てて日本へ来ちゃった

――今はモスタファさんが来日して一緒に生活されているそうですが、生活の拠点を日本にしたのはなぜ?

HANA 交際中も、自分が修行や仕事でエジプトに行くときだけ会うような感じだったので、私は結婚後も遠距離のまま、たまに会うくらいでよかったんですね。でも、彼はとてつもなく誠実な人なので、「結婚するなら一緒に住んで私をずっと守りたい」と、すべてを捨てて日本に来ちゃったんです。

――モスタファさんは結婚を機にはじめて日本に?

HANA そうです。だから、本当に日本に住めるかどうかテスト期間として、3ヶ月間ツーリストビザで来ました。

――モスタファさんの日本に対する反応はどんなものでしたか。

HANA 「こんな素晴らしい国はない」と言ってましたね。電車待ちで並ぶ人たちを見て、「なんてオーガナイズされてるんだ!」って。電車が時刻表通りに来ることとか、ゴミが落ちてないとか、日本人なら何とも思わないようなことに「すごいすごい」って感動してました。

――感触としてはいいものだったと。

HANA 日本に来てから良いことしかなかったみたいですね。一人暮らしを長年謳歌してきた私としては、生活のペースが乱されて嫌でしたけど(笑)。

 あと、夫は日本のインテリアも好きみたいですね。

「外国人差別は絶対許さない」

――ミニマムな感じのデザインがいいんですかね。

HANA そうみたい。ニトリとか好きですよ。ああいう、コンパクトでシンプルに完結しているやつが好きみたいです。

 エジプトってお家が大きいんですけど、テーブルも椅子も全部大きいんです。夫からすると、「そこがエジプト人のバカなところだ」って。「大きい家だからって全部大きくする必要はないじゃないか」と言ってます(笑)。

――逆に、モスタファさんが日本で暮らしにくさを感じられているところはありますか。

HANA 人種差別です。そういう目に遭ったときは私が容赦なく相手を叩きのめしますね。外国人差別する人は許さないので。

――具体的にはどんな差別があったのでしょうか。

HANA  結局、言葉なんですよね。私たちは日常会話が英語ということもあって、モスタファは日本語が得意じゃなくて。そうなると一気にバカにされるというか。

 例えばコンビニで「袋いりますか?」って聞かれてとっさにわからなくて「?」みたいになっていると、「ふ・く・ろ・い・り・ま・す・か!」みたいにキツく返されたり、彼が日本国内で車の免許を取る時も、教官から日本語で高圧的な態度をとられて試験を落とされたと言っていて。

――モスタファさんはそういった差別についてどのように話していますか。

HANA 「外国人だからしょうがない」って。でも私が外国人差別は絶対許さないので、免許証の一件のときも、教官の名前を聞いて向こうが謝罪するまで徹底的に言いましたし、コンビニの店員にも、「今なんて言ったの?」って言い返します。そうすると向こうが「ハッ」とするんですよ。「あ、コイツ日本人だった、ヤベ」みたいな。

エジプト人から見た日本とは…

――今、インバウンドで日本にはたくさんの外国の方が来ていますが、それによって差別の状況が変わったようなところはありますか。

HANA それは全くないですね。あるとすれば、前よりも彼の日本語が上達したことで多少マシになったかな、という感じです。

――逆に、HANAさんがエジプトで差別にあったこともありますか。

HANA 「チャイニーズ」とよく言われるので、「中国人じゃない!」ってその度に返してます。で、「日本人」と言うとエジプト人の態度がコロッと変わるんです。

――それはいい意味での変化?

HANA 「おお~」って感じですね。エジプトの人にとっては“アメリカンドリーム”的な感じで、“ジャパニーズドリーム”があるみたいです。あとは、日本人はだましやすい、っていうのもあるかもしれない。ナメられているところはあると思いますよ。知り合いの女性たちがエジプト男性たちに騙されて泣く姿をたくさん見てきましたから。

写真=深野未季/文藝春秋

「むすこが娼婦と結婚したなんて知ったら…」エジプト人と国際結婚したベリーダンサーHANAが明かす、エジプトの知られざる現状〉へ続く

(小泉 なつみ)

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