タッチパネルから物理ボタンへの回帰の理由は「触覚フィードバックが欲しい」
スマートフォンや券売機など、身の回りのいろいろなものでタッチパネルが採用されていますが、一部にはタッチ操作をやめて物理的なボタン操作に戻る動きがあります。企業からも助言を求められることがあるというレイチェル・プロトニック氏が、その事情の一端を語っています。
Tactile Controls: Why Buttons Are Making a Comeback - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/touchscreens
プロトニック氏はインディアナ大学ブルーミントン校の准教授で、ボタンと人々の相互作用についての研究を行っており、2018年にはテクノロジーと社会の関係を記した「Power Button: A History of Pleasure, Panic, and the Politics of Pushing(電源ボタン:快楽、混乱、そして押すことの駆け引きの歴史)」という本を出しています。
Amazon | Power Button: A History of Pleasure, Panic, and the Politics of Pushing | Plotnick, Rachel | Communication & Media Studies
書籍「Power Button」のきっかけとなったのは2009年ごろ、iPhoneの普及などによってタッチ操作の人気が高まるとともに語られるようになった、「物理ボタンは死ぬのではないか」という説です。
2010年には、センサーで読み取った動きをゲームなどにフィードバックする「Kinect」をMicrosoftが発表。プロトニック氏も、いよいよ映画「マイノリティ・リポート」で描かれたようにジェスチャーや音声による操作に移行する可能性を感じるとともに、これまでに使われてきた物理的な「ボタン」に興味を持ち、その原点に迫りたいと思うようになったそうです。
調べを進めていくと、タッチ操作が便利であるのは確かである一方で、人々には「ボタンを押したい」という渇望があることもわかったとのこと。「なぜボタンを押したいのか」の理由としては、「触覚によるフィードバックを得たい」というのが大きかったとのこと。
これを裏付けるように、自動車の安全評価を行っているEuro NCAPは自動車産業に対して、タッチパネル採用をやめて物理ボタンに戻すべきだと提言しています。ボタン操作の方がタッチ操作よりも素早く反応できることは実験でも示されています。
「自動車産業はタッチパネル採用をやめて物理ボタンに戻すべき」と自動車安全評価システムのEuro NCAPが提言 - GIGAZINE
自動車業界では、車載インフォテインメントシステムの操作にタッチパネルを採用するのが流行のようになってきました。きっかけはテスラによる採用だったとみられます。しかし、ボタンへの回帰が始まっていることが報告されています。
自動車メーカーはユーザーがタッチパネル操作を嫌っていることを認めてボタンへの回帰を始める - GIGAZINE
なお、iPhoneも16で新たに「カメラコントロール」ボタンが追加されていますが、振動によって擬似的な触覚フィードバックを与えるもので、物理ボタンではありません。
iPhone 16から搭載された「カメラコントロール」は画面を触れずにカメラの設定を調整できる新機能、ただし慣れには時間がかかりそう - GIGAZINE
11/06 09:53
GIGAZINE