ソフトバンクがAIのトレーニングと実行のためにArmの技術を新データセンターのネットワークの中心に据えることを計画中、実現すればArmとNVIDIAが真っ向から対立する形に
by Alpha Photo
ソフトバンクグループが、AIシステムのトレーニングと運用に特化した新たなデータセンターの中心に、株式のおよそ9割を保有するArmの技術を配置する計画があることが報じられました。ファブレス企業であるArmはこれまで、企業に対し知的財産権をライセンス提供してきましたが、この計画が実現すればNVIDIAと真っ向から衝突することになることが指摘されています。
How Arm could be the unexpected winner of the AI investment boom
https://www.ft.com/content/80a1e79e-b662-40e9-9b41-6d1070f694a8
46% of Nvidia's Revenue Came From 4 Mystery Customers Last Quarter | The Motley Fool
https://www.fool.com/investing/2024/10/30/46-nvidia-revenue-came-from-4-mystery-customers/
近年のAIの興隆に伴ってArmは収益が急増しており、時価総額も記事作成時点で約1570億ドル(約24兆円)にまで上昇。Intelの約950億ドル(約14兆5000億円)に大きく差をつけています。
Armのレネ・ハースCEOは「ここ数年でAI全体が非常に進歩しているのを目の当たりにしており、AIがもたらすイノベーションの量は信じられないほどのものになるでしょう」と述べています。
AIが盛り上がる中で、ArmはNVIDIAとうまくバランスを取りつつ立ち回っており、NVIDIAが「B200」などのAIプロセッサを開発する一方で、Armベースの中央処理装置(CPU)が開発されてきました。
しかし、ソフトバンクの孫正義CEOは、現状のArmが設計で得ているよりもはるかに大きなプロセッサの経済価値をソフトバンクが獲得することを望んでおり、そのためにAIシステムのトレーニングと運用に特化した新たなデータセンターを開設する予定とされています。また、データセンターのネットワークの中心にはArmの技術を配置するとのことで、知的財産権のみをライセンス供与する従来のビジネスモデルからの転換をArmに求めています。
海外メディアのFinancial Timesによると、孫氏の野望はArmをIPライセンスビジネスから、AIモデルのトレーニングまたは構築に必要なデータセンター向けチップを製造できる会社に押し上げたいとのことで、ソフトバンクが2024年7月にイギリスのチップメーカーであるGraphcoreを買収したのも、チップを生産に導入するための専門知識を求めた結果であることが指摘されました。
ソフトバンクがイギリスのAIチップメーカー「Graphcore」を買収 - GIGAZINE
NVIDIAはAI市場におけるトップランナーとしての地位を確立しており、Armの元幹部は「NVIDIAの圧倒的なコンピューティング能力と、長年にわたって確立されたAI開発者とのコミュニティをArmが再現することは大きな課題です。ファブレス企業としての枠組みから飛び出し、NVIDIAと競争するために必要な投資のことを考えると涙が出ます」と語りました。
それでもハース氏は「将来的なAIワークロードは、何らかの形でArmが担うことになるでしょう。だからこそ、私たちはソフトバンクと未来について多くの時間を費やして協議を進めています」と語っています。
一方でハース氏は、チップだけでなくネットワーク技術やソフトウェアを含むNVIDIAの技術全体をArmが複製するには「多くの重労働」が必要であることを認めており、Armのニューラルプロセッシングユニット(NPU)はあくまでスマートフォンなどのエッジデバイスに向けたものであり、データセンター向けではないため、NVIDIAのAIプロセッサのようなパフォーマンスレベルにないことを伝えています。それでも「我々のNPUをスマートフォンなどのエッジデバイス以外にも広げる方法に関して、多くの作業が進行中です」と明かしました。
なお、Armのライバルとなる可能性があるNVIDIAが2024年8月28日に発表した2025年度第2四半期の決算では、売上高が前年同期比で122%増の300億4000万ドル(約4兆6000億円)に達したことが報告されています。
NVIDIAが2025年度第2四半期の決算を発表、売上高は前年比122%増の4兆3000億円超でデータセンター部門は過去最高を更新 - GIGAZINE
決算報告の中でNVIDIAは、「顧客A」「顧客B」「顧客C」「顧客D」というわずか4つの企業がNVIDIAの第2期四半期売上高の約46%を占めていることを伝えています。海外メディアのThe Motley Foolは、顧客AがMicrosoftであると予想するとともに、AIインフラストラクチャに多額の投資を行うAmazonやAlphabet、Meta、Oracle、Tesla、OpenAIのいずれかが「顧客B」「顧客C」「顧客D」に該当する可能性があると推測しました。
一方でThe Motley Foolは「これらの上位顧客の1社か2社が支出を削減した場合、NVIDIAには取り返しが付かないほどの損失が発生する可能性があります」と指摘しました。
10/31 17:11
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