ついにマクドナルドのアイスクリームマシンを自力で修理可能に

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by Alicia Griffin
アメリカ著作権局はデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の例外規定を3年ごとに見直しています。2024年10月28日に発表された第9回例外規定見直し報告書では、「マクドナルドのアイスクリームマシンを含む業務用食品調理機器」を一般市民が修理することが合法となりました。
(PDFファイル)Exemption to Prohibition on Circumvention of Copyright Protection Systems for Access Control Technologies
https://public-inspection.federalregister.gov/2024-24563.pdf
Victory Is Sweet: We Can Now Fix McDonald’s Ice Cream Machines - iFixit
https://www.ifixit.com/News/102368/victory-is-sweet-we-can-now-fix-mcdonalds-ice-cream-machines

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アメリカ合衆国法典第17編第1201条に成文化されているDMCAでは、著作権で保護された書籍や映画、ゲームやコンピュータソフトウェアなどの著作物への不正アクセスを防止するために使用される「技術的手段」を回避することを、一般的に違法としています。しかし、技術的手段の回避を禁止することが、特定の種類の著作物を侵害のない方法で利用するユーザーの能力に悪影響を及ぼす可能性も考えられており、そのようなユーザーに対する禁止の免除を検討するために、3年に1度例外規定を見直しています。
第9回例外規定見直しの争点の1つが「修理する権利」です。修理する権利とは、「スマートフォンなどの電子機器の修理を行えるのはメーカーだけである」という状況は独占禁止法に違反している疑いがあるとして、修理業者や消費者自身が修理可能なように法律的制限および技術や道具を開放すべきという考え方。2023年7月1日からニューヨークで法制化されたり、2024年4月23日に欧州議会が採択したリ、AppleやGoogleが支持を表明したりと、広く普及しつつあります。
この修理する権利に関してしばしば話題に挙がるのが「マクドナルドのアイスクリームマシン」です。アメリカのマクドナルドにおいてアイスクリームは全商品の中でも高い人気を誇りますが、アイスクリームマシン故障状況を記録するサイトによると、記事作成時点ではアメリカの店舗の14.72%でアイスクリームマシンが壊れており、ニューヨークに限ると32%の店舗で故障しているそうです。この原因には「特定の修理業者のみが修理可能で、店舗側の修理は不可能」という修理する権利が関連しており、過去にはアメリカの連邦取引委員会が調査に乗り出しています。
「マクドナルドのアイスクリームマシンが頻繁に壊れる理由」を連邦取引委員会が調査か - GIGAZINE

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by Mike Mozart
最新のガジェットが発売されるたびに速攻でバラバラに分解することで知られる「iFixit」は、あらゆる家電やデジタル製品をユーザーが管理可能になるように、修理する権利の確立を目指してアメリカ著作権局に請願を続けており、第7回例外規定見直しでは「スマートフォン」や「家電製品」、第8回例外規定見直しでは「消費者向け向け機器」「車」「医療機器」のDMCA適用除外を勝ち取ってきました。iFixitは2023年8月頃からマクドナルドのアイスクリームマシンの修理について当局に嘆願書を提出しており、第9回の例外規定見直しではついに、アイスクリームマシンを自由に修理できるようになったことを報告しています。
小売レベルの業務用食品調理機器には、マシンのソフトウェアにデジタルロックが埋め込まれているため、小売店のオーナーは自分でトラブルシューティングや修理ができませんでした。これらのロックはDMCAで保護されており、正当な修理であっても「技術的保護手段」であるソフトウェアロックを回避することは違法となっていました。しかし、著作権局が認めた新たな免除により、業務用食品調理機器のソフトウェアロックを合法的に回避できるようになっています。この免除はアイスクリームマシン以外にも、業務用エスプレッソマシンやレストランの業務用オーブンなども含まれます。
一方で、法律的に可能になったとしても、アイスクリームマシンの修理には依然として問題もあるとiFixitは指摘。というのも、デジタルロックを回避することは認められましたが、この判決は、ソフトウェアロックを回避するツールの共有や販売を違法とする基本法を変更するものではありません。そのため、社内に修理の専門家がいる会社を除き、ほとんどの場合で業務用食品調理機器に関する免除は理論上のものにとどまります。
また、小売レベルの食品機器に対する免除は確保されましたが、商業用および工業用の機器に対するより広範な免除が拒否されています。iFixitは「より広範な免除がなければ、修理市場のかなりの部分は依然としてメーカーによって支配されており、メーカーは修理サービスに法外な料金を請求したり、部品やツールへのアクセスを制限したりすることができます。そのため、多くの中小企業は、簡単な修理ですぐに再稼働できる場合でも、ダウンタイムと追加コストに耐えるしか選択肢がありません。私たちは大きな進歩を遂げましたが、中小企業や消費者が自社製品を管理することを妨げる制度上の障壁が依然として存在しています」と厳しい現状について語っています。
産業用機器に対するより広範な免除と合わせて、「ビデオゲームのデジタルロックの回避を許可する免除」もiFixitは「今回失敗した要請」として挙げています。レトロゲームの保存活動に取り組んでいる非営利団体「Video Game History Foundation(VGHF)」が「入手困難になったゲームの仮想的なコピーをオンラインで貸し出す」という行為の許可要請を実施していましたが、この要請はアメリカ著作権局に拒否されました。iFixitは「ビデオゲームをプレイするために代替の入力方法を必要とする障害のある人は、いまだに取り残されています」と述べています。
「入手不可能なレトロゲームのオンライン貸し出し」の合法化提案をアメリカ著作権局が拒否 - GIGAZINE

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