Googleが司法省による「ChromeやAndroidの事業分割」検討に懸念を表明


検索市場を独占してライバルによる競争機会を阻害しているとして、アメリカ司法省がGoogleを独占禁止法で訴えている裁判で、司法省がGoogleの優位性を削ぐため「行動的かつ構造的な救済策」を検討している書類が提出されました。具体的に「事業や会社の分割」を明言しているわけではありませんが、Googleは「判決の法的範囲を逸脱するもの」と表現して懸念を示しています。
Case 1:20-cv-03010-APM Document 1052 Filed 10/08/24
(PDFファイル)https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.223205/gov.uscourts.dcd.223205.1052.0_1.pdf


DOJ indicates it’s considering Google breakup following monopoly ruling
https://www.cnbc.com/2024/10/08/doj-indicates-its-considering-google-breakup-following-monopoly-ruling.html
Justice Department calls for sanctions against Google in landmark antitrust case : NPR
https://www.npr.org/2024/10/09/nx-s1-5146006/justice-department-sanctions-google-search-engine-lawsuit
Google Antitrust Case: DOJ Tells Judge It's Weighing Breaking Up Company - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-10-09/us-says-it-s-weighing-google-breakup-as-remedy-in-monopoly-case
2020年10月、司法省は「Googleが検索および検索広告市場で、反競争的・排他的な慣行により独占状態を違法に維持している」として、Googleを独占禁止法違反で提訴しました。
Googleが「独占禁止法違反」で司法省から提訴される - GIGAZINE


by Thomas Hawk
コロンビア特別区連邦地方裁判所のアミット・P・メータ判事は2024年8月、Googleは独占禁止法に違反しているとの判決を下しました。判決は司法省の主張をすべて受け入れたわけではないものの、「Googleが独占的地位を維持するために立場を乱用した」ことを認めた点が画期的であると評価されています。
Googleが金銭を支払ってスマートフォン検索の地位を維持しているのは独占禁止法違反と連邦判事が判断 - GIGAZINE


判決を受けて司法省は状況を是正する措置を検討。その中で、一部ビジネスを売却して会社を分割する案が出ているという情報が流れていましたが、改めて、司法省が提出した資料により、「GoogleがChrome、Play、Androidなどの製品を利用してGoogle検索およびGoogle検索の関連製品を利用できないようにする行動的かつ構造的な救済策を検討している」ことが明らかになりました。
これに対して規制担当バイスプレジデントのイアン・マルホランド氏は、司法省が検討している措置は、事業分割を含めて「意図しないリスクがある」と個別に反論しています。
DOJ’s radical and sweeping proposals risk hurting consumers, businesses, and developers
https://blog.google/outreach-initiatives/public-policy/doj-search-remedies-framework/


・検索クエリ、クリック、検索結果を競合他社と共有する
マルホランド氏は、検索の共有を強制した場合、プライバシーとセキュリティの面で大きなリスクが発生する可能性があると指摘。たとえば、検索クエリは多くの場合、機密性が高いものやとても個人的なものが含まれ、Googleは厳しいセキュリティ基準で保護していますが、同様の基準を持たない他社の手に情報が渡った場合、悪意ある人物がアクセスすることで、個人とその検索履歴を特定することが可能だとのこと。また、Googleの検索結果を共有することは、模倣者を生み出すことはあっても、他社が検索分野で革新を起こす意欲を減退させる可能性があります。
・GoogleのAIツールの妨害
AIは新たな産業であるというだけでなく、アメリカの技術的・経済的リーダーシップにとっても重要な産業です。まだ世界的に競争が激しく、どこが勝者でどこが敗者なのかということもはっきりしておらず、政府が手を出すにはリスクが大きいとマルホランド氏は述べています。
・ChromeやAndroidの事業分割
GoogleはこれまでChromeやAndroidに数十億ドル(数千億円)を投資しています。ネットにアクセスしてGoogle製品を使用する時に役立つからこそ、GoogleはChromeやAndroidおよびその基礎コードを無償提供しているのであって、これほどの規模でオープンソースを維持したり、投資したりしている企業はないとマルホランド氏は主張。もし事業を分割すると、ビジネスモデルが変容し、デバイスのコストは上昇してAndroidとGoogle PlayはAppleとの競争で不利になる可能性があります。また、AndroidとChromeはPCやスマートフォンだけでなく車やフィットネス端末、テレビなど幅広い業界で使われているため、広範に影響を与えることになります。さらに、ChromeのセーフブラウジングやAndroidのセキュリティ機能、Play Protectなどは他のGoogle製品からのフィードバックの恩恵を受けているため、Googleから分割すると危険にさらされる恐れがあるとのこと。
・オンライン広告システムの変更
マルホランド氏は、Googleの革新的広告システムは、中小企業やパブリッシャーの競争条件を平準化するものであると主張。小規模なウェブサイトでもオンライン広告で収益を得るのに役立っており、政府が考える変更を行った場合、市場を傾けてしまう可能性があると述べています。
・検索エンジンの宣伝へ制限
Googleは、Google検索を手軽に使えるようにさまざまな配信契約を行っていますが、政府が不当な制限をかけることは、「簡単に検索したい」だけの人々との摩擦を生むだけだとマルホランド氏は説明しています。また、MozillaやAndroid端末メーカーなどの企業の収益を減らすことにもなると述べています。
なお、司法省が検討している措置は、あくまで検討段階であり決定したものではなく、2024年11月に修正版が提出されます。また、Googleも12月に、独自の是正措置の提出機会があるとのことです。メータ判事は、2025年8月をめどに対応を決定する予定です。

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