Googleがチップ設計AI「AlphaChip」を発表、すでにスマホ向けチップやAI特化チップの設計で活躍
GoogleのAI研究部門であるGoogle DeepMindが、チップレイアウトの設計が可能なAI「AlphaChip」を発表しました。AlphaChipはすでに実際のチップ開発に導入されており、GoogleやMediaTekのチップ設計で活用されています。
How AlphaChip transformed computer chip design - Google DeepMind
https://deepmind.google/discover/blog/how-alphachip-transformed-computer-chip-design/
Google DeepMindは2020年に4月に「チップレイアウトの設計が可能なAI」の学習手法に関する研究論文をプレプリントサーバーのarXivで公開し、2021年6月には科学誌のNatureに論文を掲載しました。2024年9月26日には新たに論文の追加情報をNatureに掲載して、同時にチップレイアウト設計AIの名前を「AlphaChip」と命名しました。
ICチップは非常に細い配線でつながれた複数のブロックで構成されており、各ブロックを配置する際は複雑な設計要件を満たす必要があります。このため、人間によるレイアウト設計には数週間から数カ月を要します。一方で、AlphaChipならわずか数時間でレイアウトの設計を完了できます。
AlphaChipは囲碁AI「AlphaGo」やゲームAI「AlphaZero」と同様のアプローチを採用しており、チップレイアウト設計をゲームとして捉えて処理を実行します。具体的には、「空白のマス目に回路コンポーネントを1個ずつ並べていき、できあがったレイアウトの品質に応じて報酬を与える」という学習手法が用いられています。
また、既存のICチップからコンポーネント間の関係を学習して一般化し、他のチップレイアウト設計に活用することも可能です。以下の画像をクリックすると、「既存のICチップを学習していない状態でRISC-Vプロセッサ『Ariane』を設計するイメージ」(左)と「20個のTPUの設計を学習した状態でRISC-Vプロセッサ『Ariane』を設計するイメージ」(右)の動画を確認可能。動画を再生すると、既存チップから学習した方が素早くレイアウトを決定できていることが分かります。AlphaChipは、多くのチップレイアウトを学習するにつれて、高速な処理が可能となるとのこと。
AlphaChipはすでに実際のチップ設計で使われており、Google独自設計のAI特化型チップ「TPU」では2020年以降に登場した「TPU v5e」「TPU v5p」「Trillium」の3モデルでAlphaChipが活用されているほか、2024年4月に発表されたGoogle独自設計のArmプロセッサ「Axion」でもAlphaChipが使われました。さらに、GoogleはAlphaChipを他社にも提供しており、すでにMediaTekがスマートフォン向けチップ「MediaTek Dimensity 5G」の開発にAlphaChipを採用しています。
以下のグラフは「TPU v5e」「TPU v5p」「Trillium」に含まれるブロックのうち、AlphaChipでレイアウトを設計したブロックの数を示しています。AlphaChipを用いた設計が増加傾向にあることが分かります。
また、AlphaChipによる設計と人間による設計を比べた際の配線長削減率を示したグラフが以下。削減率は徐々に上昇しています。
なお、AlphaChipのソースコードは以下のリンク先で公開されています。
GitHub - google-research/circuit_training
https://github.com/google-research/circuit_training
09/27 11:36
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