Metaの著作権保護ツールを悪用する詐欺師が「身代金を支払わないとコンテンツを削除する」とクリエイターを脅迫している

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FacebookやInstagramに投稿されたコンテンツの著作権を保護するためのツールが詐欺師に悪用され、正当なコンテンツのクリエイターが「身代金を支払わないとコンテンツを削除する」と脅迫される事例が相次いでいると、海外紙のBloombergが報じました。
Meta Copyright Tool Is Exploited in Middle East by Extortionists - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-07-30/meta-copyright-tool-is-exploited-in-middle-east-by-extortionists

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2023年5月、イラクのソーシャルメディアインフルエンサーであるEsaa Ahmed-Adnan氏は、Instagramに投稿した地元のレストランのスポンサー付きコンテンツに「著作権侵害」のフラグが立てられ、削除されたというメッセージを受け取りました。当該コンテンツには著作権で保護された音楽などは入っておらず、レストランを見学していくつかのメニューを試食するだけで構成されていたとのこと。その後、バグダッドを流れるティグリス川の清掃活動に関する投稿にも同様の著作権侵害フラグが立てられ、削除されてしまったそうです。
Ahmed-Adnan氏がWhatsAppでフラグを立てた人物に連絡すると、その人物は自らを「知的財産保護事業のオーナー」であると主張し、Ahmed-Adnan氏のコンテンツが実際には何の著作権も侵害していないことを認めました。しかし、コンテンツを復元するのと引き換えに、Ahmed-Adnan氏が1カ月に稼ぐ収益とほぼ同額の3000ドル(約46万円)を支払うことを要求してきたとのこと。さらに、今後も偽の著作権侵害フラグを立てられたくなければ、月額1000ドル(約15万円)または年額7000ドル(約107万円)を支払うように要求してきました。
脅迫者はAhmed-Adnan氏に対し、FacebookやInstagramを運営するMetaの著作権保護ツールである「Rights Manager」のスクリーンショットを送り、Ahmed-Adnan氏のコンテンツを著作権侵害で報告していることを示したそうです。このように、詐欺師がMetaの著作権侵害ツールを悪用してクリエイターを脅迫する事例は、中東全体に広がっているとBloombergは報告しています。
オランダのフローニンゲン大学でグローバルクリエイター経済を研究しているSmith Mehta教授はこうした事態について、Metaがグローバル展開に熱心になるあまり、発展途上国で自社製品の取り締まりにリソースを割くことを怠っている証拠だと指摘。「Metaはただプラットフォームを世に送り出し、トラフィックがどのように流入するのかを見ているだけです。トラフィックが十分な利益を生むようになれば、プラットフォームにまとまった規制と透明性の高いシステムの導入が必要だと判断しますが、現時点では発展途上国にその必要性を感じていないのでしょう」とコメントしました。

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GoogleやMetaなどのグローバル企業にとって、自社のプラットフォームで発生する著作権侵害は、グローバル展開における障壁となりかねない問題です。そのため、MetaはRights Managerを導入して著作権侵害に対処していますが、一部の国や地域では著作権侵害の報告システムを悪用する詐欺師が幅を利かせている模様。
Metaの広報担当者はBloombergに対し、ユーザーが他人のコンテンツを勝手にアップロードして、それを自分のものだと主張することを禁止していると説明しています。広報担当者はメールで、「Rights Managerの不正使用が確認された場合は定期的にアクセスを取り消したり、アカウントを無効にしたりしています。また、世界中の人々が自分たちの権利を保護し、コンテンツを大規模に管理できるよう多額の投資を行っています」と述べています。
Metaは正当な権利所有者のみがRights Managerにアクセスできるように審査していますが、中東地域ではこの審査が非常に厳しく、フォロワー数が数百万人に及ぶインフルエンサーや組織でさえアクセスを拒否されることがあるそうです。その一方で詐欺師たちは闇市場でツールへのアクセス権を売買しており、Bloombergが見つけたFacebookグループでは「Rights ManagerにアクセスできるFacebookまたはInstagramアカウント」が3000ドルで販売されていたとのこと。これらのアカウントは多くの場合ハッキングされたもので、悪用する詐欺師はMetaの注意を引きにくい中東や西アジアに集中しているそうです。
Rights Managerにアクセスできる詐欺師は、標的となるインフルエンサーが投稿した動画や音声ファイルを切り出し、自分のアカウントにアップロードします。すると、元のクリエイターに対して自動で著作権侵害の削除リクエストが送られるので、詐欺師はターゲットに接触して「コンテンツを削除されたくなければ、もしくはコンテンツを復元してほしければ身代金を支払え」と脅迫するという仕組みです。

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Metaは地元の専門家を信頼できるパートナーとして認定し、投稿やアカウントにフラグを立てる特別なチャネルを設けています。そんなパートナーの1人であり、イラクの非営利団体であるTech4Peaceの創設者であるAws al-Saadi氏は、2023年5月以降だけで中東地域の100人以上のクリエイターや組織と協力し、著作権侵害報告の乱用に対処してきたとのこと。しかし、最終的に数十人のクリエイターは身代金の支払いに応じてしまったそうで、恐喝者は一連の詐欺で最大100万ドル(約1億5000万円)を稼いだとal-Saadi氏は推定しています。
恐喝のターゲットには病院や社会活動家、ファッションモデル、ホテルなどが含まれており、イラクの聖職者兼政治家であるAmmar al-Hakim氏もターゲットになったそうです。al-Hakim氏は何度もRights Managerへのアクセス権を申請していたものの拒否されており、その間に詐欺師が逆に著作権侵害のフラグを立ててしまった模様。なお、このケースでは詐欺師は直接金銭を要求せず、al-Hakim氏への謁見(えっけん)を求めたそうですが、スタッフによって要求は拒否されたとのこと。
al-Saadi氏は10月に行われたMetaとの会議でこの問題を提起しましたが、その後の会議では「著作権トロールの報告はal-Saadi氏の領分ではない」として、優先的な報告をやめるように指示されました。al-Saadi氏は、「Metaはこの問題を取り上げたり、詳しく議論したりすることにほとんど興味を示しませんでした」と述べています。これに対してMetaの広報担当者は異議を唱え、MetaのチームはRights Managerの悪用について引き続きTech4Peaceと協力していると回答しました。
なお、冒頭のAhmed-Adnan氏はTech4Peaceと協力してMetaにコンテンツの復元を求めたものの、Metaからはコンテンツの復元を拒否する自動返信メッセージが届いただけだったとのこと。脅迫者はその後もAhmed-Adnan氏のコンテンツを削除し続けると共に、「あなたは愚かです」「24時間に支払わない場合、あなたのアカウントを破壊します」といった挑発的なメッセージを送っているとBloombergは報じました。

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