Amazonに約1000億円で買収されたTwitchはいまだに経営難の状態が続いている

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by Dinah888
ゲーム実況配信プラットフォームのTwitchは、2014年にAmazonによって約9億7000万ドル(当時のレートで約1000億円)で買収されて10年経過してもなお経営は苦しい状況にあると、アメリカ経済紙のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じています。
Amazon Paid Almost $1 Billion for Twitch in 2014. It’s Still Losing Money. - WSJ
https://www.wsj.com/tech/twitch-amazon-video-games-investment-9020db87
Twitchは、ビデオゲームのライブストリーミングプラットフォームとして知られていますが、爆発的な人気にもかかわらず、一貫して収益性の問題に直面しています。
AmazonはTwitchの収益を公表していませんが、WSJが入手した財務資料によると、2023年にTwitchは広告収入で約6億6700万ドル(約1030億円)、商取引収入で13億ドル(約2000億円)を生み出したとのこと。これはAmazonの総収益の0.5%未満を占めます。WSJに関係者が語ったところによると、Twitchの広告収入は新型コロナウイルス感染症のパンデミックが落ち着いてからは頭打ちになっているそうです。

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by Liz Henry
Twitchの課題は配信コストの削減、コンテンツ管理ツールへの投資必要性、長時間のライブ動画と広告販売の不適合など、多岐にわたります。また、最も高額な支払いをするユーザーの支出が減少傾向にあり、新規ユーザーの獲得とエンゲージメントの成長も鈍化しているとのこと。WSJは、この傾向が続けば2025年末までにTwitchの収益は2億5000万ドル(約380億円)近く減少するだろうと予測しています。
さらに、ゲームへの支出が減速していること、TikTokやInstagramのようなショート動画の人気が高くなっていることなどが影響し、業界全体のトレンドがTwitchに不利に働いているとWSJは指摘。加えて、Twitchはトップタレントとの独占契約やeスポーツイベントの配信権に1億ドル(約154億円)以上を費やしています。また、カラオケサービスやウォッチパーティーなど、のちにサービス終了あるいは優先度を下げたようなサービスにも投資していました。

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ただし、ゲーム実況以外のカテゴリー、特に「Just Chatting(雑談)」では成功をおさめているほか、スポーツや旅行、音楽分野も成長しているとWSJは評価しています。また、著名人や政治家も利用するなど、Twitchは影響力のあるプラットフォームとしての地位を維持しています。アナリストのマイク・ヒッキー氏は「需要が急増している時に利益が出ていないのであれば、経営構造に何か問題があります」とコメントしています。
AmazonはこれまでTwitchには比較的手を加えない方針を取ってきましたが、2021年にはTwitchの広告販売チームを自社に統合し、業績向上を図りました。しかし、Amazonのアンディ・ジャシーCEOは収益性重視の姿勢をみせており、2024年1月には従業員の35%を解雇するという大規模な人員削減が行われ、従業員たちは更なる人員削減の可能性を懸念しています。
2023年、Twitchの共同創設者でCEOも務めていたエメット・シアー氏が退社し、YouTubeの元エンジニアリングおよび消費者向け製品部門の責任者だったダン・クランシー氏が新たなCEOに就任しました。クランシーCEOは、スマートフォンからの視聴体験の改善やショート動画セッションの導入など、新たな戦略を打ち出しています。


WSJによると、クランシーCEOは世界中のTwitchクリエイターに会ってライブ配信を行っているそうですが、経営難で大勢の従業員が解雇される中、多額を費やして世界中を旅行するクランシーCEOのパフォーマンスについては従業員から批判も出ているとのこと。クランシーCEOは「もし私が製造会社を経営していたら、原材料を供給してくれる会社や製品を販売する会社と面談をするだろう。Twitchにとって、ストリーマーは同様の役割を果たしているのです」とメールで弁解していたとWSJは伝えています。

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