作家が小説のアイデアをAIで得ると創造性は向上するが大きな問題も発生すると判明

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芥川賞に選ばれた作品の一部を「文章生成AIを駆使して書いた」と作者が明かしたように、大規模言語モデル(LLM)を用いた生成AIは人間とコラボレーションすることが可能というアイデアがあります。科学ジャーナルのScience Advancesに掲載された論文では「生成AIは個人の創造性を高める」ことが実証されましたが、一方で生成AIに頼ることで創作として問題も発生する可能性が指摘されています。
Generative AI enhances individual creativity but reduces the collective diversity of novel content | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adn5290
AI prompts can boost writers’ creativity but result in similar stories, study finds | Artificial intelligence (AI) | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/article/2024/jul/12/ai-prompts-can-boost-writers-creativity-but-result-in-similar-stories-study-finds

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Experiment finds AI boosts creativity individually — but lowers it collectively | TechCrunch
https://techcrunch.com/2024/07/12/experiment-finds-ai-boosts-creativity-individually-but-lowers-it-collectively/
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのアニル・ドーシ氏とエクセター大学のオリバー・ハウザー氏らの研究では、生成AIと人間の創造性の関係を理解するための第一歩として、「生成AIが創造的な短編小説を作れるか」という実験を実施しました。研究者らは、生成AIが創造的な執筆活動に影響を与える方法として「アイデアの踏み台として出発点を示す」「ライターズブロックを克服するための新たなアイデアを与える」という2種類の役割があると考えています。そのため、生成AIが作家にアイデアを提供し、そのアイデアから作成された短編小説は創造性が高いかどうかを評価することで、生成AIの可能性を探究しました。
実験ではまず、293人の「作家」としての参加者を約100人ずつの3つのチームに分け、全員に「10代~20代前半向けの、8文程度の短い物語」を書くよう依頼。そして、グループAはその物語を自力で、グループBはストーリー執筆のインスピレーションとなるアイデアをGPT-4から1つ受け取り、グループCはGPT-4からアイデアを5種類まで受け取ることができます。完成したストーリーは、600人の別グループによって「ストーリーの新規性」「出版可能性」「感情的特性」などの項目で評価されました。この時、評価者はAIによって書かれた部分を含むかどうかを事前に知らずに物語を読んだ上で、読んだ後にどれが生成AIを用いた物語なのかを推測しました。

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生成AIによるアイデアを採用するかどうかは参加者の自由でしたが、全体としてグループBの82%がアイデアの提供を受け入れました。また、5つまでアイデアを受け取れるグループCのうち、93%が少なくとも1つのアイデアを採用し、25%ほどが5つすべてのアイデアを要求したとのこと。
結果として、生成AIによるアイデアを含むグループBとグループCは、ストーリーの新規性や出版可能性の評価が向上することがわかりました。1つのアイデアを受け取るグループBは、GPT-4の助けを借りないグループAに比べて、ストーリーの新規性では平均で5.4%、出版可能性では平均3.7%評価スコアが高くなりました。さらに、アイデアを5つから選べるグループCは、グループAに比べて新規性では平均で8.1%、出版可能性では平均9%も評価スコアが高くなっていたと示されています。
次に、物語がどれだけ上手に書かれているか、楽しいか、面白いか、退屈か、物語にどれだけどんでん返しがあるかなど、一般的な読者の関心のカテゴリーに基づいて「物語に対する評価者の感情的特性」を評価する項目においては、グループBとグループCはグループAよりもともに高い評価になりました。しかし、「この物語は面白いか」という質問に関してのみ、アイデアを多く受け取るグループCは単一のアイデアのグループBよりもスコアが低く、そのどちらもグループAの作品より低くなりました。ただし、この差は小さく「統計的に有意ではありません」と論文では述べています。


ドーシ氏は研究の結果について、「生成AIが提供する創造性に関して、効果の大きさはそれほど大きくスコアが上昇したわけではないものの、統計的には有意と言える差が見られました。もっとも、本質的に創造的な人々の物語がAIのアイデアによって『強化』されているとは考えられません。むしろ、創造性の指標で高得点を取った人は、生成AIによってさらなる評価を得たということはなく、まったく利益を得られないかマイナスの影響を及ぼす可能性も示唆されました。生成AIの恩恵を受けるのは、本来の想像力が低い作家たちです」と語りました。
さらに研究者らは、創作のアイデアに生成AIを用いる注意点として、「作品が均質化してしまう」問題を指摘しています。参加者による評価とは別に、研究者らはOpen AIのAPIを使用して、各ストーリーが同じカテゴリーの他の作品とどの程度類似しているかを分析しました。結果として、生成AIを利用したグループは、他の参加者が作成した同じカテゴリーのストーリーと類似性が高く、全体の多様性が低くなっていたそうです。
ハウザー氏は「私たちの研究はまだ始まったばかりで、含められていない要素も多数あります」と認めた上で、「理想的には、私たちの研究が、文章、アート、音楽など、創造的なアイデアの多様性を継続的に確保するために、テクノロジーとそれとの関わり方の両方を導くのに役立つでしょう。AIの使用を評価することは、潜在的な欠点に陥ることなく、この潜在的に変革をもたらす技術の恩恵を確実に享受するために不可欠となるはずです」と研究の意義について語っています。

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