生成AIを使って描かれた絵画はどこまで著作権を主張できるのか?

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© Wikimedia Commons / Fair Use Théâtre D’opéra Spatial by Jason Allen

2年前に、テーブルゲーム企業を営むジェイソン・アレン氏が、生成AIで作成した絵画をコロラド州のアートコンテストに応募し、デジタルアート部門で賞を獲得しました。

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この一件は瞬く間に話題となり、芸術界全体で賛否両論の意見が飛び交いました。この作品を不正行為とまで言う批評家もいましたが、当のアレン氏は自身の作品に自信を持っていたようです。

その当時、アレン氏は自身が賞を獲得したことに何も謝罪すべきことはないとし、ルール違反をしたわけではないと主張しました。また、彼がその"絵画"を作成するために使用した生成AIによる画像ジェネレーターであるMidjourneyのようなAI企業が、アート市場を崩壊させるのではといった懸念も意に介さなかったようです。

アレン氏はNew York Times紙に対し、「アートは死にました。AIが勝ち、人間が負けたのです」とまで語ったそうです。

AI作品の著作権保護を求める

さて、そんなアレン氏は、現在自身の作品の著作権が保護されず盗用されていることに憤慨しているそうです。数えきないほど多くの著作物を盗用していると非難されるプラットフォームを用いて作成した作品の盗用を訴えるとは、なんとも皮肉なこととも思えます。

アレン氏は2022年後半ごろから、自身の作品を著作物として登録しようと努めているそうです。しかし昨年3月、米著作権局はAIプラットフォームによって作成された作品には、"人間による著作物が含まれない"ために、著作権保護の対象とはならないと発表しました。

そして先月の終わりに、アレン氏は『Theatre d' Opera Spatial』と題した自身の作品の著作権登録を米著作権局が拒否したのは誤りだとして、コロラド州の連邦裁判所に訴えました。

これについてアレン氏の最大の懸念といえるのは、作品から十分な収入が得られていない点なのです。これについて同氏はコロラド州公共ラジオにて、自身の作品が業界水準のライセンス料を得られていないことから、価格を低く認識されていると語っています。

さて、アレン氏は自身の作品の"盗用"について以下のように述べています。

著作権局が『Theatre d' Opera Spatial』の登録を拒否したことで、私はひどい状況に追い込まれました。

これにより、利用料の支払いやクレジットなしで露骨に私の作品を繰り返し盗用している人々に対して、何の手段も講じられなくなっているのです。

さらには、この作品をコピーしてインターネット上で販売して金儲けをしている人もいるとも主張しています。

一方で、彼が作品制作に使用した生成AIツールの開発者たちも、ほとんど同じことで訴えられていることを考えると、少々おかしな事態ともいえます。

AI作品に宿る人間の創造性とは

アレン氏が作品の制作に使用したMidjourneyは、現在複数のアーティストから訴訟を起こされています。彼らは自分たちの作品が、(支払いやクレジットなしで)『Theatre d' Opera Spatial』のような作品の制作に使われたアルゴリズムのトレーニングに使用されたと主張しています。

ここで『Theatre d' Opera Spatial』という作品について注目したい点は、アレン氏はMidjourneyを使用して最初のイメージを作成した後に、PhotoshopやGigapixel AIといった別のツールで編集するのにかなりの時間を費やしたと主張していることです。

こうした制作背景も踏まえ、米著作権審査委員会が公開した今回のケースの概要を読むと、著作権局との議論の中でアレン氏の主張に興味深いものがあることがわかります。

例えば著作権局がMidjourneyを使用して作成した作品は著作権保護できないと裁定した後、アレン氏は「著作権局は、Midjourneyを使用して作品を生み出すのに必要な人間の創造性の重要な要素を無視している」と主張しました。

彼が言いたかったのは、裁判所は「一連のプロンプトの入力、構図の調整、焦点を当てる部分の選択、画像のトーンの指示」といったMidjourneyへの"創造的な入力"を認めるべきということ。そして「それらはほかのアーティストが表現するものと同等であり、著作権保護の対象となる」と主張したのです。

アレン氏の弁護士であるタマラ・ペスター氏は、この件とAIを取り巻く創造性を関連付けて、以下のように述べています。

著作権局がAIによってアシストされた創造物が人間の著作物であることを認めなかったのは、現代の知的財産法における重要な問題を浮き彫りにしています。

AIが進化をし続ける中で、こうした技術を創造的な表現に利用する権利を保護するために、私たちは法的な枠組みを適応させることが不可欠です。

"リアル"なアーティスト、つまり実際的な芸術作品を制作するために何年も人生を費やしてきた人々が、AI企業からそれらを守るための法的保護を主張するために多大な努力が成されてきました。しかし、これからの芸術において法的保護を受けるべきなのは、Midjourneyを使用する人々ということになるのでしょうか。

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