「サイトのブロックや違法性の訴えにあらゆる予防策を講じている」と宣言していた海賊版検索エンジンは数億円の損害賠償と永久差止命令に直面して無視を決め込む

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世界最大級の海賊版電子書籍サイト「Z-Library」が法的措置を受けたことに対抗して誕生した海賊版サーチエンジン「Anna's Archive」は、「著作権で保護されたコンテンツを直接取り扱わないシャドウライブラリメタサーチエンジン」だと主張し、サイトのブロックや違法性による訴えに予防策を講じていると宣言していました。しかし、ライブラリ作成のために図書館目録をスクレイピングしたことで数億円規模の損害賠償と永久差止を求める訴訟を起こされており、Anna's Archiveは数カ月の間訴訟に応じず無視を決め込んでいることが報じられています。
Anna's Archive Faces Millions in Damages and a Permanent Injunction * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/annas-archive-faces-millions-in-damages-and-a-permanent-injunction-240708/

「サイトのブロックや違法性の訴えにあらゆる予防策を講じている」と宣言していた海賊版検索エンジンは数億円の損害賠償と永久差止命令に直面して無視を決め込む - 画像


Anna's ArchiveはZ-Libraryのドメイン差し押さえを受けて作成されたメタサーチエンジンで、「世界中のすべての書籍の保存を目指す」という姿勢を示していました。2023年10月ごろには、非営利の図書館目録であるOnline Computer Library Center(OCLC)に参加する7万1000以上の図書館の蔵書を目録化したインデックスである「WorldCat」のスクレイピングを開始し、約7億件のデータおよび3テラバイトほどのメタデータを収集することに成功したと報告しました。
海賊版検索エンジン「Anna’s Archive」が世界最大の図書館カタログからデータを取得、「世界中のすべての書籍の保存を目指す」姿勢 - GIGAZINE


Anna’s ArchiveがWorldCatから収集したのはメタデータであり、直接本の海賊版コピーを得られるものではありませんが、OCLCは2024年2月に「スクレイピングは違法なハッキングである」としてオハイオ州連邦裁判所に訴状を提出しました。訴状では「2022年の秋から、OCLCはWorldCatとOCLCのサーバーに対するサイバー攻撃を受け始め、結果としてWorldCat、他のOCLC製品とサービス、OCLCのサーバーとネットワークインフラストラクチャの速度と運用に重大な影響が発生しました」と告発しています。
「違法とみなされないようあらゆる対策を講じている」と宣言していたシャドウライブラリがデータサイトから告訴される - GIGAZINE


Anna's ArchiveはWorldCatから本の海賊版コピーを収集したのではなく、大量のメタデータを得たのみのため、著作権侵害に関連した告訴は含まれていません。OCLCは「Anna's Archiveがスクレイピングを続けたことでサービスの速度と運用に影響し、スクレイピングに対処するために実施したネットワークインフラストラクチャの強化やメンテナンス、トラブルシューティングに140万ドル(約2億円)以上と従業員の約1万時間を費やしました」と主張しました。
しかし、提訴から5カ月が経過しても、Anna's Archiveの運営者は法廷に姿を見せず、あらゆる連絡にも応答しませんでした。OCLCはワシントン在住のソフトウェアエンジニアの女性を主な運営者として挙げましたが、その人物はサイトへの一切のアクセスをしていないと全面的に否定しています。一方で、Anna's Archive自体はOCLCの訴えを受けてもサービスを継続しており、WorldCatから収集したデータも提供し続けています。
OCLCは双方の法廷闘争の見込みがないことから欠席裁判を要求しており、「私たちは、出廷を望まない匿名の被告と争い続けています。そのため、欠席裁判が唯一の選択肢です」と主張しています。OCLCは具体的な被害額として、スクレイピング対策用の実費と追加で労働する従業員の給与、その他セキュリティ関連の費用を含めて、533万ドル(約8億5000万円)の直接的な被害があり、なおかつ現在も奪われたデータが公開され続けていることで損害額は増加し続けていると主張しています。


また合わせて、OCLCはAnna's Archiveの差止命令も求めています。記事作成時点ではドメインの停止は訴状に含まれていませんが、裁判所に提出した動議の中で「差止命令によって、Anna's Archiveの強固な無視の姿勢によって生じ続けている継続的な被害を抑え、公共の利益が守られるはずです」とOCLCは述べています。
この件を報じたTorrentFreakによると、Anna's Archiveは2024年の7月初めごろに、アメリカの裁判所の管理下にある「.org」というドメインからイギリスを拠点とするレジストリの管理下にある「.gs」というドメインに変更しているそうです。このドメイン変更がOCLCの訴訟を受けたものかは不明ですが、少なくともアメリカの裁判所がドメイン差止命令をすることは難しい可能性があるとTorrentFreakは指摘しました。
OCLCはオハイオ州連邦裁判所に「Anna's Archive運営者が出廷要求不履行につき、欠席裁判を求める」という内容の要請書を提出しており、引き続き訴訟を続けていく姿勢を示しています。

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