Microsoftが定義するAI PC「Copilot+ PC」をスペック的に満たすPCは2024年に出荷されるPCのうち約3%だけ

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Microsoftは2024年5月に「Copilot+ PC」と呼ばれる次世代AI PCカテゴリを発表し、このカテゴリに準拠するPCの最低要件を定めました。MicrosoftやASUSなど各社がCopilot+ PC対応のデバイスを発売するなどにわかに活気づいたように見えたAI PC市場ですが、調査会社の調べでは、このCopilot+ PCに対応するPCは2024年中に出荷されるPCのうちわずか3%に過ぎないとのことです。
AI PCs: Qualcomm (QCOM), Microsoft (MSFT) Turn to AI to Revive PC Market - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-07-08/qualcomm-microsoft-lean-on-ai-hype-to-spur-pc-market-revival
Microsoftが発表したCopilot+ PCの最小システム要件は、「40TOPS以上のNPUを持つ組み込みプロセッサあるいはSoC(記事作成時点ではSnapdragon Xシリーズのみ)」「RAM 16GB DDR5/LPDDR5」「256GB SSD/UFS以上のストレージデバイス」の3点です。
MicrosoftがWindows搭載AI PCの最小システム要件を正式発表 - GIGAZINE


調査会社IDCの予測では、上記の要件を満たすPCは2024年出荷分のうちわずか3%で、2028年にようやく年間出荷台数の40%に達する見込みとのこと。
MicrosoftはCopilot+ PCを「パーソナル・アシスタントやタスクの自動化機能など、AI機能を高速化するように調整された追加プロセッサを搭載したPC」と紹介しており、これまでにないPC体験ができると宣伝していました。
ところが、登場からまだ間もないためか、肝心のAI機能があまり使い勝手の良いものではないことが多数指摘されています。
例えば、Microsoftが記事作成時点で提供しているAI機能は、「ビデオ会議中に視線をそらしても常にカメラを見ているように見せかける機能」や「ペイントで画像を生成する機能」といったものにとどまり、PC体験を劇的に変えるような機能は何もありません。
「落書きからイラスト生成」「常にカメラ目線に補正」といったMicrosoft純正AI機能をSnapdragon X Eliteを搭載したCopilot+ PCで使ってみた - GIGAZINE

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また、Microsoft以外のソフトウェア企業はCopilot+ PCを通じたAI機能の提供に乗り気ではありません。伝えられるところによると、AdobeやSalesforceといったソフトウェア企業は、PCメーカー各社から「AIツールを新型PCで直接利用できるように調整してほしい」との要請を受けたものの、断っていたとのことです。
ソフトウェアメーカー・SentinelOneは「今後の開発において自社製品をAI PC向けに最適化することを検討していますが、これらのデバイスが十分に市場へ行き渡るには数年かかるでしょう」とコメントし、早々に対応する見込みはないと示唆しました。一方で、Blackmagic DesignやAlgoriddimなどアプリのAI PCへの最適化を進めている企業もあります。

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このほか、SnapdragonがアーキテクチャにARMを採用していることによる問題も多数報告されています。直近ではCopilot+ PCの登場までほとんどのPCに搭載されているCPUがアーキテクチャにx86を採用していたため、既存の多くのソフトウェアがx86に最適化されたものばかりであり、ARMベースのCopilot+ PCでは一部使用できないものがあります。
多くの問題が見られるCopilot+ PCですが、メーカー各社はAI PCの台頭に期待を寄せています。DellのCEOであるマイケル・デル氏は「将来やりたくなるであろうAI機能を使えないPCを買いたいですか?私はそうは思いません」とコメントし売上増加を予測。市場調査会社Circanaは「一般消費者はまだ少し混乱しているでしょうが、コンテンツ制作者のような技術に精通した消費者は、新しいマシンをいち早く採用しています」と述べました。性能面でも、Qualcommによるとバッテリー駆動時間が長い利点があるとのことです。
Qualcommは、自社ブランドの普及に向けた取り組みを強化し、PCメーカーを広告で支援する必要があるとコメントしています。

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