インターネットアーカイブが出版社勝訴の影響で50万冊の書籍を貸出リストから削除


インターネットアーカイブが2020年3月にオープンした140万冊のデジタル書籍が読める「National Emergency Library(全国緊急図書館)」に対して、出版社が著作権侵害の訴えを起こしていた件で、出版社側が勝訴したため図書館の貸出リストから50万冊の書籍が削除されました。インターネットアーカイブは「他の図書館と同じように、収蔵している本を読んでもらいたいだけ」と、訴えを取り下げるように出版社に求めています。
Let Readers Read | Internet Archive Blogs
https://blog.archive.org/2024/06/17/let-readers-read/
Why are so many books listed as “Borrow Unavailable” at the Internet Archive – Internet Archive Help Center
https://help.archive.org/help/why-are-so-many-books-listed-as-borrow-unavailable-at-the-internet-archive/
Internet Archive forced to remove 500,000 books after publishers’ court win | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2024/06/internet-archive-forced-to-remove-500000-books-after-publishers-court-win/
「全国緊急図書館」は、2020年に新型コロナウイルスのパンデミックで在宅時間が増えたのに合わせて、インターネットアーカイブが公開したサービスです。もともとインターネットアーカイブはオープンライブラリーで書籍のデジタル貸出を行っていましたが、同時に借りられる数は限られており、人気書籍は待機リストが設けられ「返却待ち」が発生していました。「全国緊急図書館」は待機リストを廃止し、1度に最大10冊まで自由に本を借りられる仕組みとなっていました。
無料で読める140万冊の本をインターネットアーカイブが公開 - GIGAZINE


「全国緊急図書館」について、インターネットアーカイブは「フェアユースである」という見解でしたが、出版社は著作権侵害であるとして提訴。2023年3月、第一審のニューヨーク地方裁判所は、出版社の主張を認める判決を下しました。
インターネットアーカイブは「管理されたデジタル貸し出しはフェアユースであると判断を覆すべき」と主張し、第2巡回区控訴裁判所へ控訴しました。
Internet Archiveが「全国緊急図書館」への著作権侵害判決を取り消してフェアユースと認めるよう書面を提出 - GIGAZINE


しかし、出版社側はアメリカ出版社協会や、訴訟に参加していない出版社と協力し、図書館から本を削除するよう要求。結果として、50万冊以上が貸出対象から除外されました。
インターネットアーカイブのクリス・フリーランド氏は「業界標準技術を用いて、書籍がダウンロードされて再配布するのを防止します。これは出版社が使っているのと同じ技術です。しかし、我々の図書館を訴えている出版社は、我々が本を貸し出すべきではないと主張しています。彼らは、我々に図書館から50万冊以上を削除するよう強要しました。その部分こそ、我々が魅力的である理由です」と言及。
加えて「我々の立場は簡単です。他の図書館と同様に、図書館に来る人々に所有する本を読んでもらいたいだけです。我々は、著作者が自身の作品から利益を得る権利を信じています。そして我々は、図書館が、物理的なものであろうとデジタルであろうと、知識へのアクセスを提供する使命を果たさねばならないと信じています。そうすることで、知識は、どこに住んでいるか、どこで学んでいるかにかかわらず、誰もが平等かつ公平にアクセスできるべきであるという原則が守られるのです」と述べました。

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