日本は半導体サプライチェーンをどのように支えているのか?
1980年代に「半導体製造大国」だった日本は、その後、台湾や韓国に追い抜かれる状態となっていて、2024年2月に完成したTSMC熊本工場には並々ならぬ期待が寄せられています。しかし、半導体サプライチェーンで日本の影響力が失われたわけではなく、むしろ、半導体製造に用いられる素材の生産においては存在感を見せています。
How Japanese Companies Are Benefiting From the Chips Battle - WSJ
https://www.wsj.com/tech/japan-chip-supply-chain-toppan-fujifilm-d5fff25b
2nm半導体などの最先端半導体のファブ事業に着目すると、TSMCが連日ニュースで取り上げられるなど圧倒的な存在感を放っています。しかし、半導体製造はファブ企業だけで成り立つものではなく、「半導体を設計する企業」「半導体の材料を生産する企業」「半導体製造装置を製造する企業」など多様な分野の企業が絡み合って半導体サプライチェーンは成り立っています。
例えば、高性能な半導体を製造するにあたって必須のEUV露光技術は、オランダの半導体露光装置メーカー・ASMLの独占状態にあります。ASMLがどれだけ圧倒的なのかは、EUV露光装置内がどのようになっているのかという動画をYouTubeで見ることができる、つまり見せても問題がないと考えているところからもうかがえます。
The full EUV optical light path - Inside the TWINSCAN NXE:3400 EUV lithography machine | ASML - YouTube
一方で、「ロジック半導体」製造の分野においては、台湾のファウンドリ・TSMCが圧倒的なシェアを占めていて、「メモリ」分野はSamsungやSKハイニックスを擁する韓国が5割近いシェアを占めるなど、分野ごとに国や地域に集約される傾向があります。
半導体産業で世界に10年は遅れていると言われる日本も、半導体の製造過程で必要となる原版にあたるフォトマスクの市場シェアの5割近くを、TOPPANホールディングスと大日本印刷で占めています。
また、半導体の表面を研磨するスラリーは、富士フイルムが大きなシェアを持っています。
CMPスラリー | 富士フイルム [日本]
https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/semiconductor-materials/cmp
さらに、半導体露光時に必須となる「フォトレジスト(感光剤)」も、富士フイルムやJSRなどで市場シェアの9割を占めています。
半導体の製造に欠かせない「フォトレジスト」とは/Reading keywords|Future CLIP/富士フイルム
https://sp-jp.fujifilm.com/future-clip/reading_keywords/vol58.html
日本政府も半導体産業に対しては積極的に取り組んでおり、たとえば前述のJSRに対しては産業革新投資機構(JIC)による株式の公開買い付けを行って、業界再編を促す構えです。
JSRへのTOB成立 官製ファンドのJIC、9千億円で全株取得へ:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASS4K1TF7S4KULFA014M.html
また、2nm世代半導体を含むチップレットパッケージの設計・製造技術の開発に取り組むRapidusに最大5900億円の支援を行うことが採択されています。Rapidusは2022年度・2023年度に合わせて最大3300億円の支援を受けており、合計額は最大で9200億円に上ることになります。
Rapidus社への追加支援の決定
(PDFファイル)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/post5g/pdf/240402_theme_01.pdf
06/10 20:15
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