企業のトップであるCEOをAIと置き換えるのは簡単だという主張


AIの急速な発展により、これまで人間の領域だと考えられていた多くの職種がAIに置き換えられる可能性が現実のものとなりつつあります。そんな中、CEOのような高級管理職がAIによって代替される可能性が高いと、The New York Timesが主張しています。
If A.I. Can Do Your Job, Maybe It Can Also Replace Your C.E.O. - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/05/28/technology/ai-chief-executives.html
AIは膨大なデータを瞬時に処理することに長けています。そのため、市場分析やトレンド予測、意思決定など、CEOの業務の多くを効率的かつ正確に行うことが可能だとThe New York Timesは主張しています。さらに、感情に左右されず、合理的な判断を下すことができるので、AIは人間のCEOよりも適切な意思決定を行えるとThe New York Timesは指摘。加えて、高額な報酬を得ているCEOをAIに置き換えることで、企業は大幅なコスト削減を実現できるとしています。


実際に、一部の企業ではAIに企業のリーダーを務めさせる試みを行っているとのこと。中国のオンラインゲーム会社であるNetDragon Websoftは5000人の従業員を持つ企業でありながら、「Tang Yu」というAIにCEO業務の一部を任命しています。また、ポーランドの高級ラムメーカーであるDictadorは「Mika」というAIベースのCEOを発表しています。MikaはCEO就任に際して「個人的な偏見がなく、組織の最善の利益を優先した偏りのない戦略的な選択を保証する」と宣言しました。
調査企業のedXによる調べでは、CEOの47%がCEO職の大部分または全てをAIに置き換えるべきだと考えていることが明らかになりました。さらに、マサチューセッツ工科大学(MIT)コンピュータサイエンス・人工知能研究所の元ディレクターであるアナン・アガルワル氏は「CEOの業務の80%はAIに置き換え可能です」と述べています。また、「AIの発展により、数を扱うスキルだけでなく読み書き能力の格差も解消され、誰もがCEOになれる可能性がある」という意見もあります。


新型コロナウイルスのパンデミックを経て、多くの従業員がリモートワークに慣れ、人間の上司を必要としなくなっていることもAIによるCEO代替を後押しする要因となっています。エセックス大学ビジネススクールのフィービー・V・ムーア教授は、「一部の人は人間の上司との社会的な付き合いを好みますが、多くの人はコロナ後、上司なしでも問題ないと感じています」と指摘しています。
The New York Timesは「2020年から多くのオフィスワーカーが在宅勤務をし、今でも週に数日は自宅で仕事をする人がかなりいます。同僚や役員とのコミュニケーションは機械を通じて行われます。向こう側に人間がいない機械とコミュニケーションを取るというのは、今とほんの少ししか違いがありません」と述べました。
しかし、AIがCEOを務めることには課題も指摘されています。まず、AIが間違いを犯した場合に誰が責任を取るのかという問題があります。現行の大規模言語モデルをベースとしたAIは数学的推論が比較的苦手とされており、数字を多く扱うCEO業務ではミスが発生しやすい可能性があります。
CEO業務ではありませんが、エアカナダは顧客担当のチャットボットAIが誤った情報を提供したとして客が訴訟を起こす事態に発展しました。エアカナダはチャットボットを含む代理人や使用人、代表者が提供した情報に責任を負わないと主張しましたが、裁判では敗訴しています。
「チャットボットの誤回答に責任はない」と弁解していたエア・カナダに裁判所が損害賠償支払いを命令 - GIGAZINE


また、AIではなく人間によるリーダーシップの必要性も指摘されています。経営コンサルタントのヴィネイ・メノン氏は、「私たちは常に努力をアウトソーシングしてきました。そして今、知性をアウトソーシングしています。しかし、リーダーの数は減らせても、やはりリーダーシップは必要です」と警告しています。

ジャンルで探す