Uber Eatsの配達員が報酬の過少支払いを危惧して開発したアプリ「UberCheats」とは?日本を含むUber配達の17%が過少支払いだったというデータも


フードデリバリーサービスのUber Eatsの配達員は、配達員専用のアプリ「Uber Driver」を使用して配送ルートの確認や賃金の計算を行っています。しかし、「Uber Driverアプリにはエラーが多く、賃金が正しく支払われていない」と主張するUber Eatsの配達員が、実際の移動距離を計算するアプリ「UberCheats」を開発しました。
UberCheats
https://radicaldata.org/projects/ubercheats/
The delivery rider who took on his faceless boss
https://www.ft.com/content/5c72d938-5d17-4600-a2e4-1cc20d3f9de1


UberCheatsが開発された2020年当時、Uberは個人情報保護の観点から配達員に対し正確な配達場所を隠すことが一般的で、配達を終えた配達員には移動したマイル数と支払われた金額だけがUber Driverアプリに記載されていました。そのため、アプリのエラーによって移動距離に間違いがあっても、配達員にはそれを確認するための手段がありませんでした。
元エンジニアのアルミン・サミイ氏は、「Uber Driverアプリにはアルゴリズムのエラーが多く、賃金が過少支払いされることが多い」と主張し、アルゴリズム監査ツールの「UberCheats」を開発。UberCheatsは、領収書からGPS座標を抽出し、Uber Driverアプリに記載された移動距離と比較して、自身が実際にどの程度の距離を移動したのかを計算することが可能です。もしも両アプリの移動距離に大きなズレがある場合、UberCheatsは配達員に警告を発し、不足する賃金を請求するための情報を提供してくれます。


サミイ氏は日本やブラジル、オーストラリア、インド、台湾など世界中のUber Eats配達員に聞き取り調査を行い、合計で約6000件の配達がUberCheatsで記録され、そのうちの17%が過少支払いだったことが判明しました。また、UberCheatsに記録されたデータを分析した結果、1回の配達当たり平均1.35マイル(約2.17キロメートル)短く計算されていたとのこと。
サミイ氏に対してある配達員は「あなたが開発したUberCheatsを使用したところ、私の配達の約8.31%が過少支払いの影響を受けていることが明らかになりました。Uberに対して集団訴訟を起こすのに十分なデータを集めていただければ、私は喜んでその訴訟に参加します」と述べています。
サミイ氏がUberCheatsアプリを開発するきっかけとなったのは、配達の際にUber Driverアプリが「目的地まで6分」と指定した場所に90分を要したことです。
サミイ氏は「これはアルゴリズムのバグではないか」と考え、Uberに対し賃金の過少支払いに関する十数通のメッセージを送信。しかしUberは「ログアウトをお試しください」「アプリの再起動をお試しください」など、自動化された提案を送信。それでも粘り強くメッセージを送信し続けると、対応が可能な人物につながりました。サミイ氏は「ようやくGoogleマップを引っ張り出して『これは不具合です』と認めてくれる立場の担当者につながりました。そして、私に4.25ドル(約633円)を支払ってくれました」と報告。


このことが契機となってサミイ氏は「受け取った領収書から位置を把握し、自分でGoogleマップを参照して、Uber Driverアプリが正しいかどうかを確認できる手法がないか」と考えるようになったとのこと。
しかし、Uberは2021年2月に「実際のUber製品と混同させる可能性がある」と主張し、Google PlayでのUberCheatsの配信を停止するようGoogleに要求しました。その後、サミイ氏がGoogleにUberCheatsの有用性を示す電子メールを送信した結果、配信停止は免れました。
なお、サミイ氏は「技術的な維持管理が大きな負担になっている」と述べ、2022年2月にUberCheatsの配信を停止しています。サミイ氏によると、Uberが定期的にコードを変更するたびに、保守作業として数時間を要していたとのこと。サミイ氏は「UberCheatsのデータを基に集団訴訟を起こすための資金も余裕もありませんでした」と語っています。
Uberの広報担当者は「Uber Driverアプリはリアルタイムの情報を確認して、地域の配達員に対して最適な価格を提示しつつ、顧客の待ち時間を最小限に抑えることに役立ちます。Uberのマッチングツールは、時間や距離などさまざまな要素のバランスをとるプロセスに従って、アプリを使用する全ての人に可能な限り最高の体験を提供しています」と述べ、Uber Driverアプリに技術的なバグがあり、配達員の低賃金につながったという指摘を否定しました。

ジャンルで探す