「修理する権利」を認める法案がアメリカ・オレゴン州で可決、サードパーティー部品の利用を認める広範な内容でAppleなどのメーカー側は「セキュリティ上のリスクを伴う」と危惧

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アメリカのオレゴン州で、「修理する権利」を認める法案が同州の下院で可決されました。これにより、ニューヨーク州・カリフォルニア州・マサチューセッツ州・コロラド州・メイン州・ミネソタ州に次いで「修理する権利に関する法案」が可決された7つ目の州となります。
Oregon passes expansive right-to-repair law, defying tech industry concerns - oregonlive.com
https://www.oregonlive.com/silicon-forest/2024/03/oregon-passes-expansive-right-to-repair-law-defying-tech-industry-concerns.html


Oregon Passes Right To Repair Law Apple Lobbied To Kill | Techdirt
https://www.techdirt.com/2024/03/13/oregon-passes-right-to-repair-law-apple-lobbied-to-kill/


2024年3月11日(月)、オレゴン州で消費者が自分で家電製品を修理することができるように法的権利を与えるための修理権法案(SB1596)が可決されました。この法案は、電子機器の修理に必要な工具・部品・説明書などへのアクセスを、メーカー側に義務付けるためのものです。
オレゴン州の修理権法案は2024年2月に同州の上院を25対5の賛成多数で通過。さらに、3月11日には下院でも42対13の賛成多数で可決されました。記事作成時点では、修理権法案はオレゴン州のティナ・コテック知事の署名を待っている状況です。なお、コテック知事は修理権法案を支持するか否かを明らかにしていませんが、知事が法案通過前に自身の意図を表明しないのはよくあることだそうです。

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修理権法案には以下の内容が含まれます。
・消費者や第三者の修理者が「公正かつ妥当な条件」で入手できる部品・工具・修理マニュアルを、家電メーカーが提供するという要件。
・企業がメーカー部品の「機能以外の代替品」となるサードパーティー製部品をブロックすることを禁止する要件。また、メーカーは消費者がサードパーティー製部品を取り付けた際に、性能を阻害したり「誤解を招く警告や通知」を送信したりしてはいけないという要件もあります。
・2027年7月1日以降、違反者には1日あたり最大1000ドル(約14万8000円)の罰金が科せられます。この法案は、2015年7月1日以降に製造された家庭用電子機器、または2021年7月1日以降に製造された携帯電話に適用されます。
オレゴン州の修理権法案は、サードパーティー製部品に関する規定が他の州の法案よりも厳格なものとなっています。これは、修理権法案の中でメーカーが「パーツペアリング」を使用できる方法を明確に制限しているためです。なお、「パーツペアリング」はソフトウェアを使用して認証されたコンポーネントを識別することを指します。
修理会社や消費者擁護団体は、オレゴン州の修理権法案について「修理する権利に関する法律の新たな指標になる」と称賛しています。権利擁護団体の公益を調査するネイサン・プロクター氏は、オレゴン州での法案可決について「これにより修理する権利の普及が広がると確信しています。オレゴン州の法案は、アメリカで最も強力な修理権法案のひとつとなるでしょう」と語りました。


オレゴン州の修理権法案に対して、Appleを筆頭としたテクノロジー企業からは反対の声が上がっていました。具体的には、スマートフォン業界や業界団体、電子機器関連団体などから反対の声が上がっており、生体認証センサー(顔認証や指紋認証に利用されるセンサー類)やバッテリーで問題が起きる可能性があると危惧しています。
Appleの主任セキュア・リペア・アーキテクトを務めるジョン・ペリー氏は、オレゴン州の修理権法案に関する公聴会に出席した際に、「この法案に盛り込まれた広範な部品の組み合わせ制限により、消費者が受けるリスクを依然として懸念しています」と語りました。
Appleは消費者の修理する権利を支持していますが、オレゴン州の修理権法案は「あまりにも範囲が広すぎる」と指摘しています。ペリー氏は生体認証セキュリティとバッテリーの安全性に脆弱(ぜいじゃく)性をもたらす可能性があり、端末の盗難が増加する可能性も危惧しました。
Appleはオレゴン州での修理権法案議会通過に際して、「iPhoneには財務情報・健康情報・位置情報などの所有者に関する重要な個人情報が含まれています。オレゴン州の修理権法案により、Appleは未知の安全ではないサードパーティー製のFace IDまたはTouch IDモジュールによる個人情報のロック解除を許可することが義務付けられる可能性があります」「我々は修理する権利を支持し続けますが、オレゴン州の法案は州民が受けるべき消費者保護をないがしろにするものであると強く信じています」という声明を発表しています。


3月11日に行われた議場討論の場で、共和党選出のバグ―ル・オズボーン下院議員は修理権法案による潜在的な安全保障上のリスクを非難し、この法案が訴訟を引き起こすだろうと発言しました。オズボーン下院議員はオレゴン州の修理権法案について、カリフォルニア州の修理する権利を認める法律のような、より範囲の狭い法案に修正すべきであると訴えています。
これに対して修理する権利の推進派は、「ハイテク業界が法案に対して不当な懸念を示している」と述べ、テクノロジー企業側の姿勢を批判しています。オレゴン州で修理権法案の施行に向けた取り組みを主導してきた民主党選出のジャニーン・ソルマン上院議員は、法案を紹介するフォーラムに出席した際に、「我々は製造業者に何か新しい物を作るようにもとめているわけではありません」「我々がやりたいことは、オレゴン州の人々に、どこで修理してもらうか、あるいは修理してもらうかどうかを選択できる機会を提供することです」と発言しています。
なお、Appleは修理する権利を支持するために「セルフサービス修理プログラム」を2022年からスタートしています。同サービスは徐々に内容がアップデートされており、2023年6月には「修理後のAppleへの連絡」が不要になりました。
iPhoneやMacBookを自分で修理できるApple公式サービスが更新され「修理後のAppleへの連絡」が不要に - GIGAZINE


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