任天堂に訴えられたNintendo SwitchエミュレーターのYuzuが損害賠償金支払いに同意し、公開も即座に終了

任天堂に訴えられたNintendo SwitchエミュレーターのYuzuが損害賠償金支払いに同意し、公開も即座に終了 - 画像


著作権侵害で任天堂のアメリカ法人「Nintendo of America」に訴えられているNintendo Switchのエミュレーター「Yuzu」の開発元であるTropic Hazeが、任天堂に対する損害賠償240万ドル(約3億6000万円)の支払いに合意し、Yuzuのサポートを停止したことを発表しました。
Tropic Haze Joint Mot for Entry of Consent Judgment 4854-3482-0266 v.2
(PDFファイル)https://s3.documentcloud.org/documents/24455382/tropic-haze-joint-mot-consent-judgment.pdf
Exhibit A - Tropic Haze Judgment and Permanent Injunction
(PDFファイル)https://s3.documentcloud.org/documents/24455376/tropic-haze-judgment.pdf
Nintendo Switch emulator Yuzu will utterly fold and pay $2.4M to settle its lawsuit - The Verge
https://www.theverge.com/2024/3/4/24090357/nintendo-yuzu-emulator-lawsuit-settlement

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オープンソースでの開発が進められるNintendo Switchのエミュレーター「Yuzu」は、オンラインチャットツールのDiscord上で開発コミュニティとのやり取りが行われるだけでなく、開発のほとんどがGitHub上で行われていることが特徴でした。
Nintendo SwitchのゲームをPCで遊べてしまうエミュレーター「yuzu」「Ryujinx」の比較ムービーが公開中 - GIGAZINE

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そんなYuzuに対し、2024年2月27日に任天堂は「デジタルミレニアム著作権法(DMCA)の迂回(うかい)禁止規定に違反している」と主張しYuzuに対する訴訟を提起しました。また、任天堂はYuzuに対し「ユーザーによるソフトウェアの暗号化を回避して違法にゲームをプレイすることを可能にしており、海賊版の横行を助長している」と批判しています。
任天堂がNintendo Switchのエミュレーター「Yuzu」を提訴 - GIGAZINE

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Yuzuの開発元であるTropic Hazeは訴訟提起直後、「弁護士事務所に依頼して、書類提出日から60日以内に任天堂からの申し立てに応じることを約束する」との声明を発表していました。
任天堂に訴えられたNintendo Switchのエミュレーター「Yuzu」の開発元・Tropic Hazeが訴訟の申し立てに応じることを発表 - GIGAZINE

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任天堂との法廷論争を繰り広げる姿勢を見せていたTropic Hazeでしたが、2024年3月4日にTropic Hazeは突如「任天堂に対し240万ドルを支払うことに同意した」と発表。同時にYuzuの開発やホスティング、コードまたは機能の配布、Yuzuを宣伝するウェブサイトおよびソーシャルメディアのホスト、任天堂の著作権保護を回避するその他の行為を永久的に停止することに合意しました。
また、Tropic Hazeはyuzuのドメイン名「yuzu-emu.org」を任天堂に譲渡しただけでなく、TegraRcmGUIやHekate、Atmosphère、Lockpick_RCMなど、Yuzuの開発または使用に利用される全ての著作権保護迂回ツールを削除し、物理的な迂回デバイスと改造された任天堂のハードウェアを任天堂に引き渡すことに同意しています。加えて、Tropic Hazeは任天堂の知的財産権を侵害するその他の証拠の削除を行わないことも約束しました。

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今回の決定を受けて、Yuzuの開発者であるBunnei氏は「Nintendo Switchのエミュレーター『Yuzu』とNintendo 3DSのエミュレーター『Citra』のサポートが中止され、ただちにサービスが停止されることをお知らせします」と報告しています。
Bunnei氏は「Yuzuとその開発チームは、常に海賊版に対して反対の姿勢を示しており、任天堂に対する情熱から、誠意を持ってプロジェクトを開始し、決して任天堂に対して害を及ぼすつもりはありませんでした。しかし、YuzuとCitraは結果として大規模な海賊版の横行につながってしまい、正当な購入者やファンの体験を台無しにしたことに深く失望しています」「我々は『このままではいけない』との判断に至り、本日よりYuzuとCitraのコードリポジトリをオフラインにしたうえで、PatreonアカウントとDiscordサーバーを廃止し、まもなくウェブサイトを閉鎖します。私たちの行動が、全てのクリエイターの作品の海賊版を終わらせるための小さな一歩になることを願っています」と述べています。
pic.twitter.com/158RRUi4Un— yuzu (@yuzuemu) March 4, 2024

同様の文章はYuzuの開発者向けDiscordに掲示されたほか、かつてYuzuのダウンロードが可能だったYuzuの公式ページは、サポート停止に関する文章が表示されるだけになっています。また、GitHubからもYuzuやCitraのソースコードが削除されています。
弁護士のリチャード・ホーグ氏は海外メディアのThe Vergeに対し「任天堂がTropic Hazeの負うべき責任に上限を設けたため、Tropic Hazeは今回の合意に応じたのではないでしょうか」と推測。さらに「おそらくTropic Hazeは弁護士から『このまま訴訟を続けても費用がかさむだけで、勝訴できる見込みが少ない』とのアドバイスを受けた上での決定でしょう」と語っています。

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