Airbnbでは利用規約で禁止されている「裁定取引」を利用した詐欺が横行しているという指摘

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宿泊予約サービスのAirbnbでは、利用規約やコミュニティポリシーで、第三者がホテルや宿泊施設を予約し、料金を上乗せした上で掲載する「裁定取引」を禁止しています。にもかかわらず、Airbnbでは裁定取引が横行しており、それに伴う詐欺が発生していることが指摘されています。
Investors in Airbnb arbitrage business allege they were defrauded
https://www.cnbc.com/2024/02/11/investors-in-airbnb-arbitrage-business-allege-they-were-defrauded.html

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アンソニー・アギーマン氏が代表を務める「Hands-Free Automation(HFA)」という企業では、ホテルの予約サイトや住宅の短期レンタルサイトからリストを作成し、Airbnbにより高い価格で再掲載して、その差額で利益を得る「裁定取引」と呼ばれるビジネスを行っていました。
HFAはビジネスを行うための資金を消費者から募っており、その額は2万ドル(約300万円)から3万ドル(約450万円)でした。HFAは出資者に対し、「数千人の不動産所有者と5年間の独占契約を結んでおり、所有者の物件をより高い値段でAirbnbに再掲載する許可を得ている」「投資後3カ月から6カ月で資本金のリターンが保証され、その後は純粋に利益を得ることができる」と主張していました。
ニューヨーク在住のダリン・カー氏は、HFAの営業担当者からの勧めで2020年に亡くなった母親の遺産を活用してHFAへの投資を行いました。その額は合計1万9497ドル(約293万円)に上りました。しかし、カー氏にHFAからのリターンが届くことはありませんでした。

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カー氏は同様にHFAに投資を行った11人とともに、HFAに対する訴訟を提起しました。カー氏ら原告側は「HFAは物件の所有者と契約を結んでいると偽っているだけでなく、そもそもHFAのサービスはAirbnbの利用規約に違反している」と主張しました。
また、カー氏は「HFAに投資された多額の資金はアギーマン氏の生活費に当てられたのではないか」と指摘。一方でアギーマン氏とHFAの弁護士であるトーマス・ハンカー氏は「顧客からの資金は会社の利益追及のために使用された」と述べ、顧客の金がビジネス以外に使われた可能性を否定しています。

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原告側はアギーマン氏らに対し、原告側が投資した総額62万4000ドル(約9300万円)の損害賠償を求めています。一方、アギーマン氏らは「Wealthway」という新たな会社を設立し、同様のビジネスを行っています。Wealthwayの元営業社員であるウェッセル・ボテス氏は海外メディアのCNBCに対し「Wealthwayでは月間売上350万ドル(約5億2600万円)以上を生み出すことを目指しています」と報告しています。
HFAをめぐっては、「正しく予約が行われていない」「裁定取引の発覚を防ぐため、物件の掲載リストにその物件がホテルであることや、ホテル名を明記しないことを義務付けていた」ことなどが明らかになっています。
また、所有者やオーナーに無断で宿泊施設の写真をAirbnbに投稿していたことも指摘されています。加えて、Airbnbによる「物件の所有者であることを確かめるチェック」に対応するために、請求書や文書の偽造を行っていた可能性も示唆されています。以下は、許可なくAirbnbに掲載されているダラスのホステルの部屋の写真です。

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HFAによる虚偽の申告は、Airbnbが緊急事態や安全チームの関与を必要とする状況での対応を困難にする可能性があるため、極めて重大な問題です。AirbnbはCNBCに対し、早ければ2024年中にアメリカなどで強固な認証プロセスを導入する予定であることを明かしました。
また、Airbnbは「Airbnbとアギーマン氏との間にビジネス上の関係はありません。Aribnbでは、アギーマン氏とHFAに関連する複数のアカウントを停止処分とし、アギーマン氏らの事業を縮小する措置を取りました」と述べました。

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Airbnbは年次報告書の中で、「詐欺の加害者がプラットフォーム上で複雑で絶えず進化する戦術を使用して、偽のゲストアカウントやホストアカウントを作成して詐欺行為を行っています」と報告しています。
Airbnbなどのマーケットプレイスを保有するテクノロジー企業は、AIなどを活用することで、ベンダーや顧客による詐欺やその他の不正行為が行われていないかを監視しています。しかし、全ての不正行為に対応することは困難であることが、Amazonの(PDFファイル)決算報告書などによって示されています。
アメリカ連邦取引委員会(FTC)とアメリカ司法省(DOJ)は共同で、利益と成功を約束したにもかかわらず、実際にはリターンが行われないHFAに類似する企業の取り締まりを強めています。

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